「全社的な情報共有を目指し、Googleサイトで社内ポータルを立ち上げたものの、期待ほど活用されていない…」
「最初のうちはアクセスもあったが、情報が更新されなくなり、今ではほとんど見られていないようだ…」
中堅~大企業において、このようなお悩みを抱えるDX推進担当者様、経営企画室の方々は少なくありません。
社内ポータルが「使われない状態=形骸化」することは、単に「ツールが活用されていない」という問題に留まりません。それは、情報伝達の遅延による機会損失、DX推進の停滞、そして何より投資対効果の著しい低下という、経営に直結する課題です。
特に、Google Workspaceを導入済みの企業にとって、Googleサイトは手軽に高機能な社内ポータルを構築できる強力な選択肢です。しかし、その手軽さゆえに戦略的な設計や運用体制が疎かになり、結果として「作っただけ」の“負債”と化してしまうケースも散見されます。
本記事では、Googleサイトで構築した社内ポータルが形骸化する根本原因を深掘りし、その具体的な兆候を自己診断できるチェックリストを提示します。
その上で、形骸化を防ぎ、既に形骸化しつつあるポータルを再活性化させるための「計画・準備」「コンテンツ企画」「運用・浸透」という3つの戦略的ステップを、多くの企業のDX推進を支援してきたXIMIXの専門家の視点から、具体的に解説します。
この記事が、貴社の社内ポータルを単なる情報置き場から、真に価値ある「情報活用とコラボレーションの基盤」へと進化させる一助となれば幸いです。
社内ポータルが活用されなくなる背景には、いくつかの共通した原因が存在します。しかし、対策を講じる前に、まずは自社のポータルがどの段階にあるのかを客観的に把握することが重要です。
以下の項目に当てはまるものが多いほど、形骸化が進行しているサインです。
【情報鮮度の低下】 トップページのお知らせが1ヶ月以上更新されていない。
【コンテンツの陳腐化】 古い組織図や社内規定がそのまま掲載されている。
【利用者の無関心】 ポータルの更新について、社員から何の反応もなくなった。
【特定部署の私物化】 一部の部署の情報ばかりが更新され、全社的な情報がない。
【目的の曖昧化】 「このポータルで何をしたいのか」を誰も説明できない。
【アクセスの手間】 ポータルにたどり着くまでのクリック数が多い、URLが周知されていない。
【検索性の欠如】 サイト内検索をしても、欲しい情報が見つからない。
【管理者不在・不明確】 誰が管理しているのか、更新を誰に依頼すれば良いのか分からない。
これらの兆候は、これから解説する「形骸化の根本原因」によって引き起こされます。自社の状況と照らし合わせ、どの原因が最も影響しているかを考えてみましょう。
「何のために運営するのか」「誰に、どんな価値を提供したいのか」が不明確では、コンテンツの方向性がブレ、利用者にとって魅力のない場所になります。「情報共有のため」という漠然とした目的だけでは、社員がポータルを開く動機付けにはなりません。
社員にとって「見る価値」がなければ、アクセスは途絶えます。業務に必要な最新情報(例:社内規定の改訂、新ツールの使い方)がすぐに見つからない、あるいは興味を引くコンテンツがない状態では、ポータルは忘れ去られてしまいます。
ナビゲーションが複雑、情報が整理されていないなど、UI/UXが悪い場合も利用意欲を削ぎます。Googleサイトは手軽ですが、情報設計を疎かにすると、かえって使いにくいポータルになります。
どんなに優れたポータルも、その存在や利便性が伝わらなければ使われません。導入時のアナウンスだけでなく、定期的な情報発信や「使ってみたくなる仕掛け」が不可欠です。
「誰が、いつ、どのように更新するのか」という運用体制が不明確、あるいは特定個人の善意に依存していると、継続的な情報更新は困難です。これがコンテンツの陳腐化に直結します。
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形骸化の原因を理解したら、次はいよいよ具体的な対策です。ここでは、「計画・準備」「コンテンツ企画」「運用・浸透」という3つのステップに分けて、継続的に活用されるポータルを育てるための戦略を解説します。
場当たり的な改善は失敗のもとです。まずは戦略の根幹となる土台を固めましょう。
「誰の、どんな課題を解決するのか?」を具体的に再定義します。例えば、「全社員への重要情報の伝達を迅速化し、周知徹底を図る」「部門間のナレッジ共有を促進し、業務の属人化を防ぐ」「新入社員のオンボーディングを効率化し、早期戦力化を支援する」など、具体的であるほど施策が明確になります。
目的が定まったら、その達成度を測るKPIを設定し、定期的に観測します。
| 目的の例 | KPIの例 |
| 情報伝達の迅速化 | 全社アナウンスの閲覧率、閲覧までにかかる平均時間 |
| ナレッジ共有の促進 | 特定マニュアルのPV数、FAQページの閲覧数、問い合わせ件数の削減率 |
| 利用の定着 | ポータル全体のMAU(月間アクティブユーザー)数、1人あたりの平均セッション時間 |
| 社員の満足度 | 定期的な利用者アンケートによる満足度スコア、NPS(ネットプロモータースコア) |
【XIMIX の視点】
KPIは多すぎても管理が煩雑になります。最初は最も重要な目的を表す2〜3個のKPIに絞り、PDCAサイクルを回すことが成功の鍵です。
また、Googleサイトのアクセス解析には、Google アナリティクス(GA4)の連携が必須です。さらに踏み込み、Looker Studio(旧Googleデータポータル)と連携させれば、「どの部署がどのページをよく見ているか」「どの時間帯にアクセスが集中しているか」といった詳細な利用実態をダッシュボードで可視化できます。このデータに基づいた改善こそが、ポータルを「育てる」運用に繋がります。
継続的な運用には、しっかりとした体制が不可欠です。特に組織規模が大きくなるほど、部門間の連携が鍵となります。
推進責任者/チーム: ポータル全体の戦略立案、企画、効果測定、改善を担う中心的な役割を明確にします。各部署との連携ハブとなります。
部門担当者: 各部署に情報連絡員やコンテンツ作成担当者を任命します。現場のリアルな情報をスムーズに収集・更新できる仕組みを作り、推進チームの負担を軽減しながら、コンテンツの網羅性と鮮度を高めます。
運用ルールの策定: コンテンツの掲載基準、更新フロー、承認プロセス、情報セキュリティに関するルールなどを明文化し、関係者で共有します。
ポータルの価値はコンテンツで決まります。社員が自らアクセスしたくなる、魅力的で価値のあるコンテンツを企画しましょう。
これらは社員が業務で必要とする情報であり、ポータルの基本価値となります。情報が常に最新であることが重要です。
社内規定・各種フォーマット: 就業規則、各種申請書(Googleフォームで作成・集約)、経費精算マニュアルなど。
ITツール・システム関連: 操作マニュアル、FAQ、トラブルシューティング集。
ナレッジベース: 過去のプロジェクト報告書、成功・失敗事例、顧客からのよくある質問と回答集など。
業務情報だけでは、ポータルは無味乾燥なものになります。人と組織の「顔」が見えるコンテンツで、風通しの良い組織文化を育みます。
社員・組織紹介: 新入社員紹介、活躍する社員へのインタビュー、部署紹介リレー。
社内イベント: イベントの告知・参加レポート、サークル活動の紹介。
経営メッセージ: 経営層からのビジョンや方針共有。GoogleサイトならYouTube動画の埋め込みも容易です。
社員を単なる閲覧者から「参加者」へと変えることで、ポータルへのエンゲージメントは飛躍的に高まります。
意見交換・アイデア募集: Googleフォームを活用した業務改善提案、新規事業アイデアコンテスト。
社内アンケート: 経営課題や福利厚生に関する意識調査など。
称賛・感謝の共有: 「サンクスカード」のような仕組みをオンラインで実現。
【よくある落とし穴】
最初から完璧なコンテンツを揃えようとすると、担当者が疲弊してしまいます。まずは「業務直結型」の情報を確実に整備することから始め、徐々に他のコンテンツを充実させていくアプローチが現実的です。
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優れたポータルも、使われなければ意味がありません。社員への浸透と利用を促進する継続的な働きかけが重要です。
経営層から社内ポータルの重要性や活用への期待を定期的に発信してもらうことで、社員の意識は大きく変わります。「会社が本気で取り組んでいる」というメッセージが、利用の動機付けになります。
ポータルを見ることで「業務が効率化する」「会社の動きが分かる」といった具体的なメリットを、社内メールや会議の場で繰り返し伝えましょう。Google Chatのスペース(旧チャットルーム)に更新情報を自動通知する仕組みなども有効です。
時にはゲーム感覚で楽しめる企画も有効です。
クイズ企画: ポータル内に掲載された情報(例:新しい社内規定や経営メッセージ)から答えを探すクイズ大会。
コンテンツ投稿コンテスト: 部署紹介や業務ハックなど、テーマを決めてコンテンツを募集し、優れた投稿を表彰する。
部署対抗アクセスランキング: (Looker Studioなどで可視化し)利用率を部署ごとに集計し、ランキング形式で発表する。
定期的なアンケート(Googleフォーム)や意見箱で、ポータルへの要望を収集します。収集した意見を真摯に受け止め、改善に活かす姿勢を見せることが、社員の信頼と「自分たちのポータルだ」という意識を育みます。
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Googleサイトの強みは、何と言ってもGoogle Workspaceとのシームレスな連携にあります。この特性を最大限に活かし、利便性の高いポータルを実現しましょう。
Googleカレンダー: 全社共通のスケジュールや、各プロジェクトの予定表を埋め込み、全員の予定を可視化。
Googleドライブ: ドライブ内の資料(ドキュメント、スプレッドシート、スライド)へのリンクを整理・掲載。常に最新版へのアクセスを保証。
Googleスライド/ドキュメント: 研修資料や報告書をページに直接埋め込むことで、ダウンロードの手間なく閲覧可能に。
YouTube: 社長メッセージや研修動画などを埋め込み、視覚的に分かりやすく情報を伝達。
情報設計: グローバルナビゲーションやサイドメニューを論理的に整理し、利用者が迷わない構造を設計します。
検索性の向上: Googleサイトの検索機能は強力です。ページタイトルや本文に利用者が検索しそうなキーワードを適切に含めることで、検索精度がさらに高まります。
レスポンシブ対応: スマートフォンやタブレットからも快適に閲覧できるかを確認しましょう。Googleサイトは標準で対応していますが、レイアウトの確認は重要です。
サイト全体やページ単位で閲覧・編集権限を細かく設定できます。全社公開情報、部署限定情報、プロジェクトメンバー限定情報など、内容に応じてアクセス権を管理し、セキュリティと利便性を両立させましょう。
【XIMIX の視点:一歩進んだ活用法】
Googleサイトの活用は、情報の「埋め込み」だけではありません。
AppSheetとの連携: Googleサイトをフロントエンドに、AppSheetで作成した簡易的な業務アプリ(例:備品申請、日報提出など)を連携させ、ポータルを「業務の入り口」として機能させることが可能です。
Google Chatとの連携: ポータルの更新情報をWebhook経由で特定のGoogle Chatスペースに通知し、情報のプッシュ配信を自動化できます。
このようなWorkspace全体を連携させた設計こそが、Googleサイト製ポータルの真価を発揮させます。
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組織規模が大きくなるほど、社内ポータルは単なる情報掲示板ではなく、企業の成長を支える戦略的な役割を担います。
多くの大企業が抱える「部門のサイロ化」。ポータルを、各部門の取り組みや成功事例、専門知識を共有する場として機能させることで、部門間の壁を越えた協業を促進します。
経営理念や行動指針(バリュー)を、ストーリーや社員の活動事例を通じて発信し続けることで、企業文化の醸成と浸透を支援し、社員エンゲージメントを高めます。
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全社的なDX戦略、各部門のDX事例、新ツールの導入情報などを集約・発信する中心的な場所と位置づけることで、DX推進を加速させます。
本記事では、Googleサイトで作った社内ポータルが形骸化する原因と、それを乗り越え「活用される」ものにするための具体的な運用戦略を解説しました。
社内ポータルの成功は、明確な目的、魅力的なコンテンツ、利用者目線のUI/UX、積極的な利用促進、そしてそれを支える運用体制という5つの要素の掛け算で決まります。これらは一度構築して終わりではなく、利用状況をデータ(GA4やLooker Studio)で分析し、社員の声に耳を傾けながら、継続的に改善を続ける「育てる」視点が不可欠です。
まずは、本記事のチェックリストで自社の現状を把握し、できるところから改善に着手してみてはいかがでしょうか。小さな成功体験の積み重ねが、社員のエンゲージメントを高め、ポータル活性化の原動力となります。
適切に育てられた社内ポータルは、情報共有の効率化に留まらず、組織の一体感を醸成し、DXを力強く後押しする、まさに「企業の成長エンジン」となり得る存在です。
ここまで、社内ポータル活性化のノウハウをご紹介しましたが、
「既存ポータルの課題を客観的に診断し、改善策を提案してほしい」
「運用体制の構築やコンテンツ企画を軌道に乗せるまで、伴走支援してほしい」
といった課題をお持ちの企業様も多いのではないでしょうか。
私たちXIMIXは、Google CloudおよびGoogle Workspaceの導入・活用支援における豊富な実績と専門知識を有しています。多くの企業様の情報共有基盤の構築をご支援してきた経験に基づき、貴社の社内ポータルが真に「活用される」ものとなるよう、データ分析に基づいた課題抽出から、戦略的設計、構築、そして運用定着化まで、専門家の視点からトータルでサポートいたします。
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