コラム

社内向けDXワークショップガイド:目的から計画、成功のポイント、注意点・対策まで解説

作成者: XIMIX Google Cloud チーム|2025,06,05

はじめに

デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進は、現代企業にとって競争優位性を確立し、持続的な成長を遂げるための最重要課題の一つです。しかし、「何から手をつければ良いのかわからない」「社内のDXに対する意識や温度感にばらつきがある」「具体的なアイデアが出てこない」といった課題を抱える企業は少なくありません。そのような課題を解決し、DX推進の第一歩を踏み出すための強力な手法が社内で実施する「DXワークショップ」です。

本記事は、社内向けDXワークショップを成功させるためのガイドとして、その基本的な概念から、具体的な目的、期待される効果、計画の立て方、実践的な進め方、そして成功に導くための重要なポイントや注意点、さらにはその対策に至るまで、網羅的に解説します。この記事を読むことで、DXワークショップの全体像を理解し、自社で効果的なワークショップを企画・実行するためのヒントを得られるでしょう。

DXワークショップとは何か?

DXワークショップとは、企業がDXを推進するにあたり、関係者が集い、DXに関する知識の習得、意識の醸成、課題の共有、アイデアの創出、具体的なアクションプランの策定などを目的として行う参加型のプログラムです。単なる座学の研修とは異なり、参加者自身が主体的に考え、議論し、手を動かすことで、より深い理解と共感を促し、組織全体のDX推進力を高めることを目指します。

2025年現在においても、多くの企業がDXの必要性を認識しつつも、その推進方法に苦慮している状況が見受けられます。このような背景から、社内の様々な部門のメンバーが共通の理解を持ち、一体となってDXに取り組むための有効な手段として、DXワークショップの重要性がますます高まっています。

DXワークショップの主な目的と期待される効果

DXワークショップを実施することで、企業は以下のような多岐にわたる目的を達成し、具体的な効果を期待できます。

①社内のDX意識改革・機運醸成

DXの重要性や自社におけるDXの方向性について、参加者全員で共通認識を持つことができます。これにより、他人事ではなく「自分ごと」としてDXを捉える意識が芽生え、組織全体のDX推進に向けた機運が高まります。

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②共通認識の形成とビジョン共有

「自社にとってDXとは何か」「DXを通じて何を実現したいのか」といった、DXの定義や目指すべきビジョンを共有します。部門間の壁を超えたコミュニケーションが促進され、全社一丸となって同じ目標に向かうための土壌が育まれます。

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③アイデア創出と課題発見

現状の業務プロセスにおける課題や、デジタル技術を活用した新たなビジネスモデル、サービスに関するアイデアを、多様な視点から自由に創出する場となります。参加者同士の化学反応により、個々では思いつかなかった革新的な着想が生まれることもあります。

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④DX推進リーダー・人材の育成

ワークショップを通じて、DXに関する知識やスキル、マインドセットを習得することで、社内のDX推進を牽引するリーダーや中核人材の育成に繋がります。特に、社内DX人材育成は、持続的なDX推進体制を構築する上で不可欠な要素です。

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⑤具体的なアクションプランへの落とし込み

ワークショップで出たアイデアや課題解決策を、具体的な行動計画に落とし込み、ネクストステップを明確にします。これにより、ワークショップが一過性のイベントで終わることなく、実際のDX推進活動へと繋がっていきます。

これらのDXワークショップの効果を最大化するためには、明確な目的設定と入念な準備が不可欠です。

DXワークショップを計画する

効果的なDXワークショップを実現するためには、事前の計画が極めて重要です。以下のステップで計画を進めましょう。

①目的・ゴールの明確化

まず、「このワークショップを通じて何を得たいのか」「どのような状態を目指すのか」というDXワークショップの目的とゴールを具体的に設定します。例えば、「DX推進の方向性について全社的な合意形成を図る」「新規事業のアイデアを3つ創出する」「特定の業務課題に対するDXを活用した解決策を立案する」など、具体的であるほど、ワークショップの内容や参加者の選定が明確になります。

②参加者の選定

ワークショップの目的に合わせて、適切な参加者を選定します。経営層から現場の担当者まで、DXに関わる様々な部門・階層のメンバーをバランス良く集めることが理想的です。多様な視点や意見を取り入れることで、より質の高い議論やアイデア創出が期待できます。特に、意思決定に関わる決裁者層の参加は、その後のアクションプラン実行の推進力を高める上で重要です。

③テーマ設定とアジェンダ作成

設定した目的・ゴールに基づき、ワークショップの具体的なテーマとアジェンダ(進行プログラム)を作成します。参加者の興味を引き出し、主体的な参加を促すような、具体的で実践的な内容にすることがポイントです。時間配分も考慮し、無理のないスケジュールを組みましょう。

④ファシリテーターの役割と選任

ファシリテーターは、ワークショップの進行をスムーズにし、参加者の意見を引き出し、議論を活性化させる重要な役割を担います。中立的な立場で議論を導き、時間管理を行うスキルが求められます。社内の人材を起用することも可能ですが、客観性や専門的な進行スキルが求められる場合は、外部の専門家に依頼することも有効な選択肢です。

⑤必要な準備物

ワークショップに必要な資料(事前課題、参考情報など)、ツール(ホワイトボード、付箋、プロジェクター、オンラインの場合はWeb会議ツールやオンラインホワイトボードなど)を事前に準備します。参加者がスムーズにワークに取り組める環境を整えましょう。

⑥開催形式の検討

参加者の状況や目的に応じて、オフライン(対面)、オンライン、あるいはその両方を組み合わせたハイブリッド形式での開催を検討します。それぞれの形式にメリット・デメリットがあるため、最適な方法を選択します。

DXワークショップの具体的な進め方

ここでは、一般的なDXワークショップの進め方の一例をステップ形式でご紹介します。

ステップ1: 事前準備 (ワークショップ開催前)

  • 参加者への事前アナウンス(目的、日時、場所、アジェンダ、期待される役割など)
  • 事前課題やアンケートの実施(参加者のDXに関する知識レベルや課題意識の把握)
  • 関連資料の共有

ステップ2: オープニング・アイスブレイク (ワークショップ当日)

  • ワークショップの目的、ゴール、進め方の再確認
  • 参加者同士の緊張をほぐし、発言しやすい雰囲気を作るためのアイスブレイク

ステップ3: 現状分析・課題共有

  • 自社の現状(強み・弱み、機会・脅威など)や、DXに関する課題意識を共有
  • 業界トレンドや競合の動向に関する情報インプット
  • 参加者間で問題意識を共通化する

ステップ4: アイデアソン・ブレインストーミング

  • 設定されたテーマに基づき、自由な発想でアイデアを出す
  • 質より量を重視し、批判的な意見は避けて、多様な意見を歓迎する
  • KJ法やマインドマップなどの手法も有効

ステップ5: グループワーク・ディスカッション

  • 出されたアイデアをグループごとに深掘りし、具体的な解決策やアクションプランを検討
  • 異なる視点を持つメンバーでグループを構成することで、議論の活性化を促す

ステップ6: 発表・共有

  • 各グループで検討した内容を発表し、全体で共有
  • 質疑応答を通じて、さらにアイデアをブラッシュアップする

ステップ7: アクションプラン策定・ネクストステップ

  • ワークショップで得られた成果(アイデア、解決策など)を具体的な行動計画に落とし込む
  • 担当者、期限、KPIなどを明確にし、誰が何をいつまでに行うかを決定する
  • ワークショップ後のフォローアップ体制についても確認する

このDXワークショップの進め方はあくまで一例です。目的や参加者、時間に応じて柔軟にカスタマイズすることが重要です。

DXワークショップを成功させるためのポイント

DXワークショップを単なるイベントで終わらせず、真にDX推進に貢献するものにするためには、以下のポイントを押さえることが不可欠です。

  • 経営層のコミットメントと積極的な関与: 経営層がDXの重要性を理解し、ワークショップの目的や成果に強い関心を示すことで、参加者のモチベーション向上や、ワークショップ後のアクションプラン実行の推進力となります。
  • 参加者の主体性を引き出す工夫: 一方的な情報提供ではなく、参加者自身が考え、発言し、行動する機会を多く設けることが重要です。ゲーム要素を取り入れたり、身近な課題をテーマにしたりするなど、楽しみながら主体的に参加できるような工夫を凝らしましょう。
  • 心理的安全性の確保: 参加者が役職や立場にとらわれず、自由に意見やアイデアを発言できる「心理的安全性」の高い場を作ることが極めて重要です。ファシリテーターは、建設的なフィードバックを促し、否定的な意見が出にくい雰囲気づくりを心がけます。
  • 多様な視点を取り入れる: 特定の部門や意見に偏らず、社内外の多様な視点や知識を取り入れることで、より創造的で実効性の高いアウトプットが期待できます。
  • 実践的で具体的な成果を意識する: 抽象的な議論に終始せず、ワークショップを通じて具体的な課題解決策やアクションプランを生み出すことを常に意識します。
  • ワークショップ後のフォローアップ体制: ワークショップで決定したアクションプランが着実に実行されるよう、定期的な進捗確認やフォローアップの仕組みを設けることが重要です。成果を可視化し、次のステップへと繋げていくサイクルを確立しましょう。

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DXワークショップ実施における注意点と対策

DXワークショップは効果的な手法である一方、いくつかの注意点も存在します。事前にこれらを認識し、対策を講じることで、失敗のリスクを低減できます。

  • 目的が曖昧なまま実施してしまう:
    • 対策: 前述の通り、ワークショップの目的とゴールを明確に定義し、参加者全員で共有します。

  • 参加者のモチベーションが低い:
    • 対策: ワークショップの意義やメリットを事前に丁寧に説明し、参加への期待感を醸成します。また、ワークショップの内容自体を魅力的で参加者にとって有益なものにする工夫も必要です。

  • 議論が発散するだけで終わってしまう:
    • 対策: 経験豊富なファシリテーターを起用し、議論を適切に誘導・収束させます。また、明確な時間配分とアジェンダを設定し、時間内に結論を出すことを意識します。

  • 一時的なイベントで終わらせないための仕組みづくり:
    • 対策: ワークショップで生まれたアイデアやアクションプランを実行に移し、その進捗を継続的にフォローアップする体制を構築します。DXは継続的な取り組みであることを認識し、ワークショップをそのプロセスの一部として位置づけます。

XIMIXによる支援

ここまで社内向けDXワークショップの重要性や進め方、注意点・対策について解説してきましたが、「自社だけで企画・運営するのは難しい」「より専門的な知見を取り入れたい」「ファシリテーションを任せたい」とお考えの企業様もいらっしゃるのではないでしょうか。

DXワークショップを成功に導き、その後の具体的なDX戦略策定やソリューション導入までをスムーズに進めるためには、外部の専門家の支援も有効な選択肢です。

XIMIX  では、長年にわたり多くの企業様のDX推進をご支援してきた豊富な実績と、Google Cloud や Google Workspace をはじめとする先進技術に関する深い知見を活かし、お客様の状況や目的に最適化されたDX支援をトータルでサポートいたします。

私たちの強みは、Google Cloud を活用したシステム開発・導入、Google Workspace による業務効率化など、具体的なソリューションの実行までを一気通貫でご支援できる点にあります。

XIMIXが、お客様の課題に寄り添い、貴社のDX推進を強力にバックアップいたします。

XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
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まとめ

本記事では、DX推進の鍵となる「社内向けDXワークショップ」について、その目的、効果、計画、進め方、成功のポイント、そして注意点と対策を包括的に解説しました。

DXワークショップは、社内のDXに対する意識統一を図り、具体的なアクションを生み出すための非常に有効な手段です。しかし、その効果を最大限に引き出すためには、明確な目的設定、周到な準備、そして参加者の主体性を促す運営が不可欠です。

DXワークショップは、決してゴールではありません。むしろ、本格的なDX推進に向けた「号砲」であり、組織変革の「エンジン」を始動させるための重要なステップです。このガイドが、貴社の社内向けDXワークショップの企画・実行、そしてDX推進の一助となれば幸いです。

自社でのDX推進に行き詰まりを感じている、あるいはこれから本格的にDXに取り組みたいとお考えの企業様は、ぜひ一度XIMIXにご相談ください。経験豊富な専門家が、貴社の状況に最適なDX推進の道のりを共に考え、伴走いたします。