企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進やクラウドサービスの導入を検討する中で、「仮想マシン」や「VM」といった言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。「聞いたことはあるけれど、具体的にどのようなものなのかよくわからない」「従来の物理的なサーバーと何が違うの?」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
特に、中堅〜大企業においてITインフラの最適化やクラウド移行は重要な経営課題です。その基盤技術の一つとして、仮想マシンへの理解は欠かせません。
この記事では、ITインフラの知識にこれから触れる方や、改めて基本を確認したいと考えている方に向けて、以下の点をわかりやすく解説します。
この記事を通じて、仮想マシンの基礎知識を深め、今後のIT戦略やクラウドサービス活用の検討にお役立ていただければ幸いです。
仮想マシン(Virtual Machine、略してVM)とは、簡単に言えば「1台の物理的なコンピュータ(サーバーなど)の中に、ソフトウェアによって仮想的に作り出されたコンピュータ」のことです。
想像してみてください。大きな一軒家(物理サーバー)があるとします。この家の中に、壁やドアで完全に仕切られた独立した部屋(仮想マシン)を複数作るようなイメージです。それぞれの部屋は、あたかも独立した家のように機能し、異なる住人(OSやアプリケーション)がそれぞれの生活(処理)を送ることができます。
これを実現するのが「仮想化技術」です。仮想化技術を用いることで、1台の物理サーバーが持つCPU、メモリ、ストレージといったリソースを分割し、複数の仮想マシンに割り当てることができます。それぞれの仮想マシンは、独立したOS(例えば、Windows ServerやLinuxなど)やアプリケーションを、他の仮想マシンの影響を受けることなく実行できます。
この仮想化技術は、特にデータセンターやクラウドサービスの基盤として広く利用されています。Google Cloud のような主要なクラウドサービスでも、中核的な機能として提供されており、ユーザーは物理的なハードウェアを意識することなく、必要な時に必要なだけ仮想マシンを利用できます。
ご参考:【基本編】Google Cloudとは? DX推進の基盤となる基本をわかりやすく解説
仮想マシンと従来の物理サーバーは具体的に何が違うのでしょうか?主な違いをポイントごとに見ていきましょう。
最大の違いは、物理的な実体の有無です。物理サーバーは目に見える「箱」(ハードウェア)ですが、仮想マシンはその「箱」の中で動く「ソフトウェア」です。 これにより、リソースの利用方法が根本的に異なります。物理サーバーは1台のリソースを基本的に専有しますが、仮想マシンは1台の物理サーバーのリソースを分割・共有して、複数の独立した環境を作り出すことができます。
ソフトウェアである仮想マシンは、物理的な制約を受けにくいため、柔軟性と拡張性に優れています。必要に応じてスペックの変更(CPU、メモリ増減など)や台数の増減を、物理的な作業なしに迅速に行えます。 これはコスト面にも影響します。物理サーバーは初期投資や維持費がかかりますが、仮想マシン(特にクラウド)は初期投資を抑え、利用した分だけ支払う従量課金モデルが主流であり、コスト効率を高めることが可能です。
管理面では、仮想マシンはソフトウェア的な管理が中心となり、物理的な設置や配線、故障対応といった物理サーバー特有の管理負担が軽減されます。 また、新しいサーバー環境が必要になった際の導入スピードも大きな違いです。物理サーバーは調達や設定に時間がかかりますが、仮想マシンであれば、特にクラウドサービス上では数分~数時間という短時間で構築が完了します。
仮想マシンはどのようにして動いているのでしょうか?その仕組みを支える主要な要素を見ていきましょう。
まず、土台となる物理的なサーバーが存在します。これが仮想マシンを動かすための基盤となり、「ホストマシン」と呼ばれます。ホストマシン上では、ホストOSが稼働している場合もあります。 そして、仮想マシン上で動作するOSのことを「ゲストOS」と呼びます。ゲストOSは、あたかも自分が専用のハードウェア上で動いているかのように振る舞います。
物理サーバーのリソース(CPU、メモリ、ストレージなど)を管理し、各仮想マシン(ゲストOS)に適切に分配・割り当てるのが「ハイパーバイザー」と呼ばれるソフトウェアです。ハイパーバイザーが仮想的なハードウェア環境を作り出し、その上で各仮想マシンが独立して動作できるように制御します。オーケストラの指揮者のように、物理リソースと仮想マシン間の調整役を担っています。
仮想マシンの利用には多くのメリットがありますが、導入や運用にあたっては注意点も理解しておく必要があります。
仮想マシンはその特性を活かし、多岐にわたるシーンで活躍しています。
新しいソフトウェアの開発・テスト環境として、本番とは隔離された安全な環境を素早く構築・破棄できる点は大きな利点です。もちろん、Webサーバーやアプリケーションサーバー、データベースサーバーなどの本番環境としても広く利用されており、アクセス数に応じた柔軟なスケール変更が可能です。社内のファイルサーバーなどを集約する用途にも適しています。
一時的な高負荷処理(キャンペーンサイト、バッチ処理など)のために期間限定で利用したり、サポート切れが近いレガシーシステムを仮想環境に移行して延命したりするケースもあります。 また、オンプレミスの物理サーバーを、まずはクラウド上の仮想マシンに移行する「リフト&シフト」は、多くの企業がクラウド活用を始める第一歩として採用する方法です。
仮想マシンの基本は理解できても、実際の導入・運用には様々な課題が伴います。
例えば、Google Cloudの仮想マシンサービスであるCompute Engineは非常に高機能ですが、そのポテンシャルを最大限に引き出し、コスト効率とパフォーマンスを両立させるには、「どのインスタンスタイプを選ぶべきか」「セキュリティ設定は万全か」「ネットワーク構成はどうするか」「運用監視やコスト管理はどう最適化するか」といった専門的な知識と判断が必要になります。
私たちXIMIXは、Google Cloud プレミアパートナーとして、これまで多くの中堅〜大企業様のクラウド導入、システムインテグレーション、DX推進をご支援してまいりました。
その豊富な実績とGoogle Cloudに関する深い知見を活かし、お客様のビジネス課題やITインフラの状況を丁寧にヒアリングした上で、現状分析から戦略策定、Google Cloud (Compute Engine等) を活用した環境の設計・構築、オンプレミスからの移行、導入後の運用保守、最適化サポートまで、ワンストップで支援いたします。
仮想マシンの導入に留まらず、データ分析基盤構築やアプリケーション開発といった、その先のDX推進まで見据えたご提案が可能です。
Google Cloud活用に関するお悩み、DX推進に関するご相談がございましたら、ぜひお気軽にXIMIXまでお問い合わせください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。
※Google Cloud については、こちらのコラム記事もご参照ください。
【基本編】Google Cloudとは? DX推進の基盤となる基本をわかりやすく解説
【基本編】Google Cloud導入のメリット・注意点とは? 初心者向けにわかりやすく解説
今回は、仮想マシン(VM)の基本的な概念、物理サーバーとの違い、仕組み、メリット・デメリット、そして活用シーンについて解説しました。
仮想マシンとは、物理サーバーのリソースをソフトウェアによって分割・共有し、複数の独立したコンピュータ環境を作り出す技術であり、リソースの有効活用、コスト削減、柔軟性・拡張性の向上、迅速な環境構築といったメリットをもたらします。クラウド時代のITインフラを支える重要な基盤技術です。
その仕組みとメリットを正しく理解することは、より効率的で柔軟なシステム構築、そしてビジネス変革への第一歩となります。 もし、自社での仮想マシン活用やGoogle Cloudをはじめとするクラウドサービスの導入にご関心をお持ちでしたら、専門家の知見を活用することも有効な手段です。ぜひ、本記事の内容を参考に、貴社のIT戦略やDX推進にお役立てください。