コラム

【入門】データ分析の主な種類とは? 4つのレベルの違いを分かりやすく解説

作成者: XIMIX Google Cloud チーム|Apr 21, 2025 1:42:07 PM

はじめに

「データ分析を始めようと思うけれど、『分析』にも色々な種類があるみたいで…」 「記述的分析? 予測的分析? それぞれ何が違うのか、簡単に知りたい」 「自分の会社の目的に合った分析はどれなんだろう?」

これまでの記事でデータ分析の重要性やメリット、注意点について触れてきました (※)。しかし、「データ分析」と一口に言っても、その目的やアプローチ方法は一つではありません。どのような問いに答えたいかによって、用いるべき分析の種類(レベル)は異なります。

今回の記事では、データ分析の世界に足を踏み入れたばかりの方に向けて、代表的なデータ分析の種類(レベル)とその違いについて、具体例を交えながら分かりやすく解説します。

この記事を読むことで、データ分析の全体像をより深く理解し、自社の目的に合った分析アプローチを選択するためのヒントを得ていただければ幸いです。

データ分析の種類を理解する意味:なぜ使い分けが必要?

なぜデータ分析の種類を知ることが重要なのでしょうか? それは、「何を知りたいか(目的)」によって、適した分析アプローチが異なるからです。

例えば、

  • 単に「先月の売上はどうだったか?」を知りたい場合と、
  • 「なぜ先月の売上が下がったのか?」の原因を探りたい場合、
  • さらに「来月の売上はどうなりそうか?」を予測したい場合、
  • そして「売上を上げるためには何をすべきか?」を知りたい場合、

それぞれ必要となるデータの見方や分析手法は変わってきます。目的に合わない分析を行っても、期待した答えは得られません。

データ分析の種類を理解することは、効率的かつ効果的にデータから価値を引き出すための第一歩なのです。

代表的なデータ分析の4つのレベル

データ分析は、一般的にその目的や高度さに応じて、以下の4つのレベル(段階)に分類されます。これらは段階的に高度になり、後のレベルほどビジネスへの貢献度も高まる傾向にあります。

レベル1:記述的分析 (Descriptive Analytics) - 「何が起こったか?」を知る

  • 目的: 過去や現在のデータに基づいて、「実際に何が起こったのか」「現状はどうなっているのか」を客観的に把握し、要約すること。

  • 特徴:
    • データ分析の最も基本的なレベル。
    • データを集計し、グラフや表などを使って可視化することが中心。
    • 多くのBI(ビジネスインテリジェンス)ツールが得意とする領域。

  • 答える問いの例:
    • 先月の全体の売上高はいくらだったか?
    • どの商品が最も売れているか?
    • Webサイトへのアクセス数はどれくらいか?
    • 地域別の顧客数は?

  • ビジネスでの活用例:
    • 月次売上レポートの作成
    • Webサイトのアクセス状況モニタリングダッシュボード
    • KPI(重要業績評価指標)の進捗確認

記述的分析は、現状を正確に把握するための基礎となります。

レベル2:診断的分析 (Diagnostic Analytics) - 「なぜ起こったか?」を探る

  • 目的: 記述的分析で明らかになった事象(例: 売上減少、アクセス数急増など)に対して、その原因や要因を探ること

  • 特徴:
    • 「記述的分析」の結果から一歩踏み込み、「なぜ?」を問う。
    • ドリルダウン(データを掘り下げる)、クロス集計、相関分析などの手法が用いられることがある。
    • 原因を特定するための仮説検証が行われることも多い。

  • 答える問いの例:
    • なぜ先月の売上は目標に届かなかったのか?(キャンペーンの影響? 競合の動き? 季節要因?)
    • なぜ特定の地域の顧客満足度が低いのか?
    • なぜWebサイトの特定のページからの離脱率が高いのか?

  • ビジネスでの活用例:
    • 売上不振の原因分析
    • 顧客離反要因の特定
    • Webサイト改善のためのボトルネック分析

診断的分析により、問題の根本原因に迫り、具体的な対策を検討するためのヒントが得られます。

レベル3:予測的分析 (Predictive Analytics) - 「次に何が起こるか?」を見通す

  • 目的: 過去のデータパターンや傾向に基づき、将来の結果や確率を予測すること

  • 特徴:
    • 過去のデータから未来を推測する。
    • 統計的なモデルや機械学習(AI)の技術が活用されることが多い。
    • 「もし~ならば(What-if)」のシミュレーションが行われることもある。

  • 答える問いの例:
    • 来月の売上高はどれくらいになりそうか?
    • どの顧客が将来的に優良顧客になりそうか?(または離反しそうか?)
    • この新商品を発売した場合、初年度の売上はどれくらい見込めるか?
    • 特定のキャンペーンを実施した場合、どれくらいの効果が期待できるか?

  • ビジネスでの活用例:
    • 需要予測に基づく在庫管理や生産計画の最適化
    • 顧客の解約(チャーン)予測と防止策の実施
    • 与信審査における貸し倒れリスクの予測
    • 設備の故障時期予測による予防保全

予測的分析は、将来に備えた計画的なアクションを可能にします。

レベル4:処方的分析 (Prescriptive Analytics) - 「何をすべきか?」を示す

  • 目的: 予測された将来の結果を踏まえ、特定の目標(例: 利益最大化、コスト最小化)を達成するために、どのような行動を取るべきか(最適な打ち手)を提示すること

  • 特徴:
    • データ分析の中で最も高度なレベル。
    • 予測結果に加えて、ビジネス上の制約条件や目標を考慮に入れる。
    • AI、最適化アルゴリズム、シミュレーションなどの高度な技術が活用される。

  • 答える問いの例:
    • 利益を最大化するためには、各商品にどのような価格を設定すべきか?
    • 限られた広告予算内で、最も効果的なチャネル配分はどうすべきか?
    • サプライチェーン全体のコストを最小化するための最適な配送ルートは?
    • 特定の顧客セグメントに対して、最も効果的なアプローチ(キャンペーン内容、タイミングなど)は何か?

  • ビジネスでの活用例:
    • ダイナミックプライシング(需給に応じた価格変動)
    • マーケティング予算の最適配分
    • サプライチェーンの最適化
    • パーソナライズされたレコメンデーション

処方的分析は、データに基づいて具体的なアクションプランを導き出し、ビジネス成果を最大化することを目指します。

4つの分析レベルの関係性と使い分け

これら4つのレベルは、完全に独立しているわけではなく、段階的に高度化し、相互に関連しています。

  • 「記述的分析」で現状を把握し、
  • 「診断的分析」で原因を探り、
  • 「予測的分析」で未来を見通し、
  • 「処方的分析」で最適な行動を決める

という流れで活用されることが一般的です。

ビジネスにおいては、まず自社の課題や目的を明確にし、それに合わせて「どのレベルの分析が必要なのか」を見極めることが重要です。必ずしも最初から高度な処方的分析を目指す必要はなく、まずは現状把握(記述的分析)から始め、段階的に分析レベルを高めていくアプローチが現実的でしょう。

Google Cloudで各レベルの分析をどう実現するか?

Google Cloudは、これら4つのレベルのデータ分析をシームレスに実現するための強力なツール群を提供しています。

  • 記述的分析・診断的分析: LookerLooker Studio といったBIツールでデータを可視化し、ドリルダウンすることで、現状把握や原因の掘り下げが容易になります。データソースとしてはBigQueryなどが活用されます。
  • 予測的分析: BigQuery ML(BigQuery内で機械学習モデルを構築・実行できる機能)や、Vertex AI(包括的なAIプラットフォーム)を活用することで、専門家でなくても比較的容易に予測モデルを構築・利用できます。
  • 処方的分析: Vertex AIの高度なAI機能や最適化ツール、あるいはカスタムのアルゴリズムをBigQueryや他のコンピューティングリソースと組み合わせて実装することが考えられます。

これらのサービスを組み合わせることで、企業は自社のデータ活用レベルに合わせて、段階的に高度な分析へとステップアップしていくことが可能です。

XIMIXが貴社の分析レベル向上を支援します

データ分析には様々なレベルがあることをご理解いただけたかと思います。しかし、「自社は今どのレベルの分析ができているのだろうか?」 「次のレベルに進むためには、何から手をつければ良いのか?」 「高度な予測分析や処方的分析を実現するには、専門家のサポートが必要だ」といった新たな疑問や課題も出てくるかもしれません。

XIMIXは、お客様の現在のデータ活用状況とビジネス目標に合わせて、最適な分析レベルの実現を段階的にご支援します。

XIMIXの段階的データ分析支援

  • 現状アセスメントとロードマップ策定: お客様のデータ環境と分析状況を評価し、目指すべき分析レベルとそこに至るまでの具体的なステップ(ロードマップ)を策定します。
  • 記述的・診断的分析環境の構築・活用支援: Looker/Looker StudioやBigQueryを導入し、まずは社内のデータを「見える化」し、現状把握や基本的な原因分析を行える環境構築と活用を支援します。
  • 予測的分析の導入支援: BigQuery MLやVertex AIを活用した予測モデルの構築・導入を、PoC(概念実証)からサポートし、ビジネス成果に繋がる予測分析の実現をお手伝いします。
  • 処方的分析・高度AI活用コンサルティング: 最適化や高度なAI技術を活用し、ビジネス成果を最大化するための処方的分析の導入・実装を、経験豊富なデータサイエンティストやコンサルタントが支援します。

XIMIXは、お客様が無理なくデータ活用のレベルを高め、それぞれの段階で着実にビジネス成果を上げていけるよう、技術力とビジネス理解に基づいた伴走支援を提供いたします。

XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのデータ分析サービスについてはこちらをご覧ください。
XIMIXのデータ可視化サービスについてはこちらをご覧ください。

※Google Cloud については、こちらのコラム記事もご参照ください。 
 【基本編】Google Cloudとは? DX推進の基盤となる基本をわかりやすく解説
 【基本編】Google Cloud導入のメリット・注意点とは? 初心者向けにわかりやすく解説

まとめ

本記事では、データ分析の代表的な4つの種類(レベル)である「記述的分析」「診断的分析」「予測的分析」「処方的分析」について、それぞれの目的、特徴、具体例を解説しました。

データ分析は、目的によって適切なアプローチが異なります。これらの種類と違いを理解することで、自社の課題解決や目標達成に向けて、より効果的なデータ活用を進めることができます。

まずは自社の現状把握(記述的分析)から始め、必要に応じて段階的に分析レベルを高めていくことが、データ分析を成功させるための現実的なアプローチと言えるでしょう。

XIMIXは、お客様のデータ分析ジャーニーにおけるあらゆる段階をサポートします。データ活用のことでお悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。