はじめに
Google Cloud の AI 関連サービスは、2026年7月下旬も新モデルの提供と製品整理が続きました。今回は Gemini Enterprise の新モデル追加や Canvas の一般提供(GA)、Gemini Enterprise Agent Platform の新モデル GA と旧モデルの非推奨化、Vertex AI Search の料金設定改善、コンタクトセンター(CCaaS)の 5.0 リリースなどが中心となりました。
本記事では、2026年7月20日〜7月26日に発表された Google Cloud AI カテゴリの主要トピックを、リリース日順に解説します。Agent Studio のセキュリティ修正、Gemini モデルの追加・削除・GA・非推奨化、認証なし MCP サーバー対応、Vertex AI Search の従量課金しきい値、Claude Opus 5 の提供、CCaaS 5.0 の機能追加と多数の不具合修正まで取り上げます。
経営層の方は「AI 活用の選択肢が広がりつつ、モデルの整理も進んでいる」という視点で、IT 担当者の方は「どのモデルが GA になり、どのエンドポイントが非推奨化され、何を確認すべきか」という視点で読み進めると、導入・運用判断に役立つはずです。
| 対象期間 |
2026年7月20日〜2026年7月26日 |
| 対象製品 |
Google Cloud |
| 対象カテゴリ |
AI |
| アップデート件数 |
10件(主要トピック) |
今回のアップデート一覧
アップデート詳細
1. Gemini Enterprise Agent Platform — Agent Studio の SSRF 脆弱性を修正
Gemini Enterprise Agent Platform(ML/生成 AI の統合プラットフォーム)の Agent Studio で、SSRF(サーバーサイド・リクエスト・フォージェリ)の脆弱性を修正するアップデートが公開されました(2026年7月20日)。SSRF とは、サーバーを踏み台にして意図しない宛先へリクエストを送らせてしまう攻撃手法です。
✨ 使えるようになる機能
- 本トピックはセキュリティ修正であり、公式にハイライトされた新機能はありません。修正後のバックエンドコードには、宛先ホスト名を Google Cloud の許可ドメイン(例: *-aiplatform.clients6.google.com)に限定する厳格なドメイン許可リスト検証が追加されています
⚠️ 使えなくなる機能 / 変更点
- 対象: 2026年7月1日より前に Agent Studio で作成した Web アプリの、自動生成される /api-proxy バックエンドエンドポイントに SSRF 脆弱性が存在していたと告知されています
- 推奨対応: 2026年7月1日より前に Agent Studio から Web アプリのコードをダウンロード・生成・デプロイした場合は、Agent Studio でアプリを再生成し、新しいバージョンをデプロイし直すことが案内されています
🤔 判断観点
- 影響範囲: 2026年7月1日より前に Agent Studio で Web アプリを作成・デプロイした組織が確認対象です。それ以降に作成した場合は対象外とされています
- 検証推奨事項: 該当する Web アプリの有無を棚卸しし、再生成・再デプロイの要否と適用時期を、公式ドキュメントの手順と照らして検討する運用が考えられます
📚 公式ソース
2. Gemini Enterprise — Gemini 3.6 Flash の追加と Gemini 3.5 Flash の削除予告
Gemini Enterprise(企業向け AI アシスタント・エージェントプラットフォーム)で、グローバルリージョンに新しいモデル Gemini 3.6 Flash が追加されました。あわせて、既存の Gemini 3.5 Flash がグローバルリージョンから削除されることが予告されています
✨ 使えるようになる機能
- Gemini 3.6 Flash がグローバルリージョンで利用可能: Gemini Enterprise アプリで利用者に提供するには、管理者が「Gemini 3.6 Flash」の機能トグルをオンにする必要があります
- Agent Designer のワークフローエージェントでも利用可能: ワークフローエージェントへの反映には最大1日かかります
⚠️ 使えなくなる機能 / 変更点
- Gemini 3.5 Flash の削除: Gemini Enterprise アプリのグローバルリージョンから、2026年8月4日に Gemini 3.5 Flash がモデルとして削除されると告知されています
🤔 判断観点
- 影響範囲: グローバルリージョンで Gemini 3.5 Flash を利用しているユーザー・管理者が対象です
- 検証推奨事項: 削除予定日(2026年8月4日)までに Gemini 3.6 Flash への切り替えを検討し、機能トグルの有効化や社内周知のタイミングを整理する運用が考えられます
- データレジデンシー: リージョンやデータの保管場所に関する要件がある場合は、公式のデータレジデンシー情報を確認することが検討対象となります
📚 公式ソース
3. Gemini Enterprise Agent Platform — Gemini 3.6 Flash と 3.5 Flash-Lite が GA
Gemini Enterprise Agent Platform で、Gemini 3.6 Flash と Gemini 3.5 Flash-Lite が一般提供(GA)となり、本番環境での利用が可能になりました(2026年7月21日)。これらのモデルは、前世代からトークン使用効率と文書理解能力の改善を目指したものと説明されています。
✨ 使えるようになる機能
- Gemini 3.6 Flash / 3.5 Flash-Lite が GA: 本番利用が可能になりました。トークン使用効率の向上と文書理解能力の改善が図られています
⚠️ 使えなくなる機能 / 変更点
- サンプリングパラメータ: temperature・top-K・top-P のカスタム値はサポートされず、設定しても無視されます
- ペナルティパラメータ: frequency penalty・presence penalty のカスタム値はサポートされず、設定すると API エラーになります
- API のターン構造: 入力の最後のターンのロールが Model のリクエストはサポートされなくなり、エラーを返します。Interactions API では入力配列の最後のオブジェクトが「type: model_output」の場合、GenerateContent API では contents 配列の最後のオブジェクトが「role: model」の場合に失敗します
🤔 判断観点
- 影響範囲: これらの新モデルを API 経由で利用する開発者・アプリケーションが対象です。破壊的変更を含むため、既存実装の見直しが検討対象となります
- 検証推奨事項: サンプリング・ペナルティのカスタム値を設定している箇所や、末尾ターンが Model ロールになるリクエスト構造がないかを事前に確認する運用が考えられます
📚 公式ソース
4. Gemini Enterprise Agent Platform — オープンモデルエンドポイントの非推奨化
Gemini Enterprise Agent Platform で、複数のオープンモデルエンドポイントが非推奨となり、2026年10月21日に廃止される予定であることが告知されました。オープンモデルは、Google 以外が開発した公開モデルを指します。
✨ 使えるようになる機能
- 本トピックはモデルエンドポイントの非推奨化に関する告知であり、公式にハイライトされた新機能はありません
⚠️ 使えなくなる機能 / 変更点
- 廃止予定日: 2026年10月21日に、以下を含むオープンモデルエンドポイントが廃止されると告知されています
- DeepSeek 系(deepseek-ocr-maas / deepseek-r1-0528-maas / deepseek-v3.2-maas / deepseek-v3.1-maas)、GLM 系(glm-5-maas / glm-4.7-maas)、gpt-oss-20b-maas、kimi-k2-thinking-maas、llama-3.3-70b-instruct-maas、minimax-m2-maas、multilingual-e5 系(-large-instruct-maas / -small-maas)、Qwen3 系(qwen3-235b-a22b-instruct-2507-maas / qwen3-coder-480b-a35b-instruct-maas / qwen3-next-80b-a3b-instruct-maas / qwen3-next-80b-a3b-thinking-maas)
🤔 判断観点
- 影響範囲: 上記のオープンモデルエンドポイントを利用しているアプリケーション・開発者が対象です
- 検証推奨事項: 廃止予定日(2026年10月21日)までに、利用中のエンドポイントの有無を棚卸しし、代替モデルへの移行方針を公式の非推奨情報と照らして検討する運用が考えられます
📚 公式ソース
5. Gemini Enterprise — 認証なしのカスタム MCP サーバーデータストアに対応(Preview)
Gemini Enterprise で、カスタム MCP サーバーのデータストアを設定する際に「認証なし(No authentication)」を選べるようになりました(2026年7月22日、パブリックプレビュー)。MCP(Model Context Protocol)は、AI アプリケーションが外部データやツールと連携するための共通プロトコルです。
🔍 何が変わったのか
- 認証なしオプションの追加: MCP サーバーが認証を必要としない場合、データストア設定時に「No authentication」を選択できます
- カスタム MCP サーバーデータストアの作成機能自体はパブリックプレビューの段階です
💼 こんな場面で活用できます(ユースケース)
社内で認証を必要としない MCP サーバーを運用しており、そのデータを Gemini Enterprise の検索・回答に取り込みたい IT 担当者・開発者が対象です。認証設定が不要なサーバーを、より少ない設定手順で接続できます。
✨ 導入メリット
- 認証不要の MCP サーバーを、認証情報の設定なしで接続でき、連携の準備がシンプルになります
- カスタム MCP サーバー経由で社内データを取り込む選択肢が広がり、AI 活用の対象範囲を拡張できます
📚 公式ソース
6. Google Cloud MCP servers — Cursor のデスクトップ接続の不具合が解消
Google Cloud MCP servers について、Cursor(AI コーディング支援ツール)のデスクトップ版リダイレクト URI に関する不具合が Cursor 側で修正され、Google および Google Cloud の MCP サーバーと組み合わせて利用できるようになりました(2026年7月22日)。
🔍 何が変わったのか
- Cursor のデスクトップ接続不具合が解消: デスクトップ版リダイレクト URI の問題が修正され、Google Cloud の MCP サーバーを Cursor から利用できるようになりました
💼 こんな場面で活用できます(ユースケース)
Cursor を使って開発を行い、Google Cloud の MCP サーバー経由で公式ドキュメントやクラウドリソースへアクセスしたい開発者が対象です。これまで接続できなかったデスクトップ環境からも、MCP サーバーを設定して利用できます。
✨ 導入メリット
- Cursor のデスクトップ環境から Google Cloud MCP サーバーを利用でき、開発ツールと AI 連携の選択肢が広がります
- クライアント固有の設定ガイドが用意されており、接続手順を確認しながら導入できます
📚 公式ソース
7. Vertex AI Search — 従量課金しきい値を引き下げ可能に(GA)
Vertex AI Search(エンタープライズ向け AI 検索)の Agent Search で、従量課金(configurable pricing)のストレージサイズと 1 分あたりのクエリ数(QPM)のサブスクリプションしきい値を引き下げられるようになりました(2026年7月23日、GA)。従来はこれらのしきい値を引き上げることしかできませんでした。
🔍 何が変わったのか
- しきい値の引き下げに対応: ストレージサイズと QPM のサブスクリプションしきい値を引き下げられるようになりました
- 引き下げたしきい値は、次の請求サイクルの開始時に反映されます
💼 こんな場面で活用できます(ユースケース)
AI 検索の利用規模を見直したい IT 担当者・コスト管理担当者が対象です。一時的に増やしたしきい値を、需要の落ち着きに合わせて引き下げるといった調整ができます。
✨ 導入メリット
- 利用実態に合わせてしきい値を引き下げられ、コスト最適化の柔軟性が高まります
- 次の請求サイクルからの反映となるため、変更のタイミングを見通しながら運用できます
📚 公式ソース
8. Gemini Enterprise — Canvas が GA、Gemini 3.6 Flash が US マルチリージョンで利用可能に
Gemini Enterprise で、ドキュメントやスライドを対話的に作成・編集できる Canvas が一般提供(GA)になりました。あわせて、割り当てリスト(allowlist)に登録されたプロジェクト向けに、Gemini 3.6 Flash を米国マルチリージョンで利用できるようになりました(いずれも2026年7月24日)。
🔍 何が変わったのか
- Canvas が GA: Gemini Enterprise の Web アプリ内で、AI が生成したドキュメントやプレゼンテーションをチャットから直接作成・編集できる専用の対話ツールです。作成物は Google Workspace 形式、Microsoft Office 形式、PDF にエクスポートできます。利用には管理者が「Enable canvas」トグルをオンにする必要があります
- Gemini 3.6 Flash の US マルチリージョン対応: allowlist に登録されたプロジェクトで、保存時データレジデンシー(DRZ)と機械学習処理(MLP)を伴う US マルチリージョンでの利用が可能になりました。利用には Google のアカウントチームへの申請が必要です
💼 こんな場面で活用できます(ユースケース)
チャットで下書きを作りながら、そのまま資料として仕上げたい業務担当者が対象です。企画書やプレゼン資料のたたき台を Canvas で作成し、Google Workspace や Office 形式に書き出して共有する、といった使い方ができます。データの保管地域に要件がある組織では、US マルチリージョンでの Gemini 3.6 Flash 利用が選択肢になります。
✨ 導入メリット
- チャットから資料作成までを 1 つのツール内で完結でき、ドキュメント・スライド作成の手間を減らせます
- 複数のファイル形式にエクスポートでき、既存の業務フローへ取り込みやすくなります
- US マルチリージョン対応により、データレジデンシー要件に配慮しながら最新モデルを活用できます
📚 公式ソース
9. Gemini Enterprise Agent Platform — Claude Opus 5 が Model Garden で利用可能に
Gemini Enterprise Agent Platform の Model Garden で、Anthropic 社の Claude Opus 5 が利用できるようになりました(2026年7月24日)。Model Garden は、さまざまな基盤モデルを一元的に選択・利用できるカタログです。
🔍 何が変わったのか
- Claude Opus 5 が Model Garden で利用可能: Anthropic 社の Claude Opus 5 が Model Garden から選択できるようになりました
💼 こんな場面で活用できます(ユースケース)
用途に応じて複数の基盤モデルを比較・選択したい開発者・AI 活用推進担当者が対象です。Model Garden 上で Claude Opus 5 を選び、既存のアプリケーションやエージェントの構築に組み込めます。
✨ 導入メリット
- 選択できる基盤モデルの選択肢が広がり、用途に合わせたモデルの使い分けがしやすくなります
- Model Garden 上で一元的に扱えるため、モデル選定・切り替えの検討を進めやすくなります
📚 公式ソース
10. Google Cloud CCaaS — バージョン 5.0 リリース、チャット向け DAP・処理タイミング設定・多数の不具合修正
Google Cloud Contact Center as a Service(CCaaS)で、バージョン 5.0 がリリースされました。あわせて、チャットを外部 API 起点でルーティングする Direct Access Point(DAP)、通話後処理を後から割り当てられる Disposition timing(処理タイミング)の追加と、多数の不具合修正が行われました(2026年7月24日)。
✨ 使えるようになる機能
- チャット向け Direct Access Point(DAP): 設定した外部 API のレスポンスに基づき、着信チャットを特定のキューへ自動的にルーティングできます。エンドユーザーがキューメニューから選ぶ手間がなくなります。既定では無効で、有効化には Google Cloud サポートへの連絡が必要です
- Disposition timing(処理タイミング): エージェントが、過去の対応に対して通話後処理(wrap-up)時間・処理コード・メモを後から割り当てられるように設定できます。完了済みセッションの処理コードやメモの修正も許可できます。設定すると、エージェントの操作画面に「Previous Sessions」の一覧が表示されます。管理者は「Settings > Operation Management > Wrap-up」に新設された「Manual Wrap-up」セクションから設定します
- CCaaS 5.0 のリリース: インスタンスへの適用タイミングは、選択しているデプロイスケジュールにより異なります
⚠️ 使えなくなる機能 / 変更点
- 多数の不具合修正: キュー間移動時にメールが「Transferring」状態のまま止まる問題、キューに入った通話・チャットが待機中のエージェントへ提供されない問題、通話終了後に処理パネルが表示されない問題、CSV 一括インポート時のチーム・スキルの誤割り当て、Salesforce 連携での同時リクエストによる情報欠落、Zendesk への通話録音リンク重複、wrap-up 時間の集計誤りなど、多数の問題を修正しました
- デフォルト動作の破壊的変更や機能廃止は、今回の公開情報には含まれていません
🤔 判断観点
- 影響範囲: CCaaS でチャットチャネル、通話後処理、Salesforce・Zendesk 連携を利用しているコンタクトセンターが主な確認対象です
- ロールアウト戦略: バージョン 5.0 の適用時期は選択中のデプロイスケジュールに依存するため、公式のデプロイスケジュール情報を確認する運用が考えられます
- 検証推奨事項: DAP を導入する場合は API レスポンスに基づくキュー振り分けが想定どおり動作するか、処理タイミング設定を有効化した際の運用手順が現場に合うかを確認することが検討対象となります
📚 公式ソース
まとめ
2026年7月20日〜7月26日の AI カテゴリでは、Gemini Enterprise の Canvas GA や Gemini 3.6 Flash の追加・US マルチリージョン対応、Gemini Enterprise Agent Platform の新モデル GA など、AI 活用の選択肢を広げるアップデートが充実しました。あわせて Vertex AI Search の料金設定改善や CCaaS 5.0 の機能追加も進み、業務現場での活用の幅が広がっています。
IT 担当者の視点では、Gemini 3.5 Flash の削除予告(8月4日)や オープンモデルエンドポイントの非推奨化(10月21日廃止予定)、新モデル GA に伴う API の破壊的変更、Agent Studio の SSRF 修正が、社内周知や設定・実装の確認ポイントです。経営の視点では、Canvas やモデル拡充が AI 活用の裾野を広げる材料となります。自組織の AI 活用方針・利用中の機能・データガバナンス要件に照らし、これらの評価や対応の検討を進めていただくとよいでしょう。
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