コラム

脱PPAP / Google Workspaceで実現する、安全で高効率なファイル共有の新常識

作成者: XIMIX Google Workspace チーム|2025,07,25

はじめに

長年、多くの企業で当たり前のように使われてきたファイル共有手法「PPAP」。しかし、近年その危険性が広く認知され、政府機関をはじめとして「脱PPAP」の動きが加速しています。本記事は、「PPAPのリスクは認識しているが、具体的な代替策や移行の進め方が分からない」とお考えの中堅・大企業の経営者やDX推進責任者の皆様に向けて執筆しています。

この記事を読むことで、以下のことがわかります。

  • なぜ今「脱PPAP」が単なるセキュリティ対策ではなく、取り組むべき経営課題なのか

  • 数ある代替策の中で、なぜGoogle Workspaceが最適解となり得るのか

  • 導入プロジェクトを成功に導き、投資対効果(ROI)を最大化するための実践的なポイント

表面的な機能紹介に留まらず、企業の競争力強化に繋がるファイル共有の新しい常識と、その実現に向けた具体的なステップを、経験豊富な専門家の視点から解説します。

PPAPが抱えるリスク

「脱PPAP」が叫ばれる背景には、単に「セキュリティ的に弱い」という一言では片付けられない、ビジネスの根幹を揺るがしかねない複数の問題が存在します。

PPAPの仕組みと形骸化したセキュリティ

PPAPとは、以下の手順の頭文字を取った造語です。

  1. Password付きZIPファイルを送る

  2. Passwordを後から別メールで送る

  3. Angoka (暗号化)

  4. Protocol (プロトコル)

一見すると安全そうに見えますが、この手法には致命的な欠陥があります。メールの経路が同じであれば、たとえ2通に分けても、攻撃者から見れば両方とも盗聴されるリスクは変わりません。これは、家の鍵をかけた金庫を送り、そのすぐ後に同じ配送業者で鍵を送るようなもので、セキュリティ対策として意味をなしていないのです。

政府も警鐘を鳴らす「脱PPAP」という大きな潮流

この問題は、個社レベルの話に留まりません。2020年に内閣府および内閣官房でPPAPを廃止する方針が発表されて以降、多くの省庁や公的機関が追随しています。 事実、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発表する「情報セキュリティ10大脅威」では、標的型攻撃による機密情報の窃取が常に上位にランクインしており、PPAPはその攻撃の起点となりうる手法です。もはやPPAPを継続することは、企業のセキュリティ意識の低さを示すことになりかねず、サプライチェーン全体における信頼性低下にも繋がるコンプライアンス上のリスクと言えるでしょう。

主要な「PPAP代替策」を徹底比較

では、PPAPに代わる手段にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは代表的な代替策を比較し、なぜクラウドストレージが最適なのかを解説します。

代表的な代替策とそのメリット・デメリット

それぞれの方法に一長一短がありますが、特に中堅・大企業が全社的に展開する上では、セキュリティの統制、運用のしやすさ、コスト効率のバランスが重要になります。

代替策 メリット デメリット
ファイル転送サービス ・手軽に大容量ファイルを送信できる
・送信先ごとにパスワード設定が可能
・サービスごとにセキュリティレベルが不均一
・送信履歴の管理が煩雑になりがち
・従業員個人の判断に依存しやすく統制が困難(シャドーIT化)
ビジネスチャット ・迅速なコミュニケーションが可能
・ファイル共有もシームレス
・大容量ファイルの共有には不向きな場合がある
・過去のファイルの検索・管理が煩雑になりがち
クラウドストレージ 一元的な情報管理と高度なセキュリティ統制が可能
アクセス権限を柔軟に設定できる
大容量ファイルに対応し、バージョン管理も容易
・導入・運用ルールの策定が必要
・初期設定や既存データからの移行に計画性が必要
 

なぜ「クラウドストレージ」が現実的な最適解なのか?

ファイル転送サービスやビジネスチャットは、特定の場面では有効ですが、全社的なファイル共有基盤としては統制面で課題が残ります。一方、クラウドストレージは、ファイルを「送る」のではなく、安全な場所に保管し、必要な相手に適切な権限で「アクセスしてもらう」という発想に転換します。 これにより、以下のようなビジネス価値が生まれます。

  • セキュリティガバナンスの強化: 全社のファイル共有を単一のプラットフォームで管理し、誰が・いつ・どのファイルにアクセスしたかを追跡可能にします。

  • 生産性の向上: 「あのファイルどこだっけ?」という無駄な時間を削減。常に最新版のファイルに誰もがアクセスでき、共同編集もスムーズに行えます。

  • コストの最適化: 複数のファイル転送サービスやファイルサーバーを一本化することで、ライセンス費用や運用管理コストの削減に繋がります。

この思想を高度なレベルで実現するのが、Google Workspaceに搭載されている「Googleドライブ」なのです。

Google Workspaceで実現する、次世代のセキュア・ファイル共有

Google Workspaceは、単なるPPAP代替ツールではありません。企業の情報を守り、生産性を最大化するための統合的なプラットフォームです。その中核となるGoogleドライブの主要な機能をご紹介します。

①リンク共有と高度な権限設定:「誰が」「何を」できるかを自在に制御

Googleドライブでは、ファイルやフォルダを特定のユーザーやグループと「リンク」で共有します。この際、単に閲覧可能にするだけでなく、「閲覧者」「閲覧者(コメント可)」「編集者」といった権限を細かく設定できます。 さらに、共有リンクに有効期限を設定したり、社外ユーザーとの共有を完全に禁止したりすることも可能です。これにより、「送ってしまったら終わり」のPPAPとは異なり、共有後も継続的にアクセスをコントロールできます。

②共有ドライブ:部署やプロジェクト単位でのセキュアな情報基盤

個人が所有する「マイドライブ」とは別に、チームでファイルを所有する「共有ドライブ」は、中堅・大企業のファイル管理において特に強力な機能です。共有ドライブ内のファイルはチームの資産となるため、担当者が異動や退職をしてもファイルが失われることはありません。 部署単位やプロジェクト単位で共有ドライブを作成し、メンバーのアクセスレベルを厳格に管理することで、セキュアで永続的な情報基盤を構築できます。

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③監査ログとセキュリティレポート:「いつ」「誰が」「何をしたか」を可視化

管理者は、ドライブ内のファイルに対する操作(閲覧、編集、ダウンロード、共有設定の変更など)を詳細なログで確認できます。これにより、万が一の情報漏洩インシデント発生時にも、迅速な原因究明と影響範囲の特定が可能です。不審な操作を検知した際にアラートを出す設定もでき、プロアクティブなセキュリティ対策を実現します。

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④データ損失防止(DLP):機密情報の意図しない共有を自動でブロック

Google WorkspaceのDLP機能を使えば、「マイナンバー」「クレジットカード番号」「社外秘」といった機密情報を含むファイルが、意図せず外部に共有されることを自動で防ぐことができます。事前に定義したルールに基づき、システムが内容をスキャンし、ポリシー違反の共有を検知・ブロックすることで、人為的なミスによる情報漏洩リスクを大幅に低減します。

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【XIMIXの視点】脱PPAPプロジェクトを成功に導くための3つの要諦

ツールの導入はスタートラインに過ぎません。多くの企業をご支援してきた経験から、脱PPAPプロジェクトを形骸化させず、真の成果に繋げるためには、技術的な問題以上に組織的な課題を乗り越える必要があります。

要諦1:部分最適に陥らない。全社的なルール策定と合意形成

最も陥りやすい失敗が、情報システム部門だけでルールを策定し、現場にトップダウンで押し付けてしまうことです。これでは、現場の業務実態に合わず、結局「抜け道」として安全でないファイル共有が横行する原因になります。 プロジェクトの初期段階で、各事業部門の代表者を巻き込み、ファイル共有に関する現状の課題をヒアリングすることが不可欠です。その上で、利便性とセキュリティのバランスが取れた全社共通のルールを策定し、経営層からの明確なメッセージと共に展開することで、全社的な合意形成を図ります。

要諦2:利便性を損なわない。従業員と取引先双方に配慮した移行計画

新しいやり方を導入する際は、一時的にせよ従業員の負担が増えることを想定しなければなりません。丁寧なマニュアルの整備や研修会の実施はもちろんのこと、「なぜ変える必要があるのか」という目的を粘り強く伝え、従業員の理解と協力を得ることが成功の鍵です。 また、取引先とのファイル共有方法についても事前に検討が必要です。一方的に「今日からGoogleドライブで」と通告するのではなく、事前に案内状を送付したり、問い合わせ窓口を設置したりするなど、丁寧なコミュニケーションを心がけることで、スムーズな移行が可能になります。

要諦3:導入して終わりではない。定期的な利用状況の監査と改善サイクル

ルールは作って終わりではありません。監査ログなどを活用し、従業員の利用状況や共有設定が適切に行われているかを定期的にモニタリングする仕組みが重要です。形骸化したルールはないか、より効率的な使い方はできないかを継続的に評価し、改善していくPDCAサイクルを回すことで、セキュリティレベルと生産性の両方を高い水準で維持することができます。

パートナーと共に描く、成功へのロードマップ

「脱PPAP」は、単なるツール刷新ではなく、企業の働き方や情報管理のあり方を変革するプロジェクトです。ご紹介したような成功の要諦を自社だけで実践するには、多くのリソースと専門的な知見が求められます。

私たち『XIMIX』は、Google Cloud / Google Workspaceの正規パートナーとして、数多くの中堅・大企業のDXをご支援してまいりました。私たちの強みは、単にライセンスを販売したり、ツールの使い方を説明したりすることではありません。

お客様の企業文化や業務の実態を深く理解した上で、

  • 現状分析と実現したい姿の具体化(構想策定支援)

  • セキュリティと利便性を両立する運用ルールの設計

  • スムーズな移行を実現するためのデータ移行・技術支援

  • 従業員への浸透と活用を促進する定着化支援

といった、構想から運用、そして成果の創出までを一気通貫で伴走支援できる点にあります。もし、貴社のファイル共有環境の刷新や、Google Workspaceの導入・活用に課題をお持ちでしたら、ぜひ一度、私たちにご相談ください。貴社のビジネスを加速させるための、最適なロードマップを共に描きます。

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まとめ

本記事では、PPAPが抱える本質的なリスクと、その代替策としてGoogle Workspaceがいかに優れているか、そして導入を成功させるための実践的なポイントを解説しました。

  • PPAPのリスク: セキュリティ対策として形骸化しており、企業の信頼性を損なう経営リスクである。

  • 代替策の最適解: セキュリティ、生産性、コストの観点から、クラウドストレージ(特にGoogle Workspace)が有効。

  • Google Workspaceの価値: 高度な権限設定、共有ドライブによる情報基盤構築、監査機能などにより、安全で効率的なファイル共有を実現する。

  • 成功の鍵: ツール導入に留まらず、全社的なルール策定、丁寧な移行計画、継続的な改善サイクルが不可欠。

「脱PPAP」は、守りのセキュリティ投資であると同時に、攻めの生産性向上投資でもあります。この記事が、貴社のファイル共有環境を見直し、より安全でスマートな働き方へシフトする一助となれば幸いです。