コラム

データ分析の「チェリーピッキング」を防ぐには?経営判断を誤らせないガバナンスの仕組み

作成者: XIMIX Google Cloud チーム|2026,02,18

はじめに:その「右肩上がり」のグラフは、真実ですか?

「今月のマーケティング施策は成功しました。ご覧の通り、CVR(コンバージョン率)は前月比120%です」

経営会議で報告される、美しい右肩上がりのグラフ。しかし、その裏で「都合の悪い数日間」がデータから除外されていたとしたらどうでしょうか?あるいは、「CVR」の定義が、報告者の目標達成に有利なように密かに変更されていたとしたら?

データ分析において、自分の仮説や利益に有利なデータだけを選び出す行為を「チェリーピッキング(Cherry Picking)」と呼びます。

これは単なる担当者の「見栄」や「不正」の問題ではありません。組織全体が、誤ったデータに基づいて巨額の投資決定を行い、取り返しのつかない損失を被る「経営リスク」そのものです。

本記事では、多くの企業が陥るこの罠を、精神論ではなく「システムと仕組み」で解決するための具体的なアプローチを解説します。なぜ、Google Cloudのような最新のデータ基盤が、透明性の高い意思決定に不可欠なのか。その理由を紐解いていきましょう。

なぜ組織で「都合の良いデータ」が作られてしまうのか

チェリーピッキングが発生するのは、特定の個人が悪意を持っているからだけではありません。多くの場合、組織の構造や利用しているツールそのものが、無意識のうちにバイアスを助長しています。

➀「ローカルExcel」が生むデータの密室

最も一般的な原因は、データ分析が個人のPC上のExcelやスプレッドシートで行われていることです。元データから一部をコピーし、手元で加工・集計するプロセスは「ブラックボックス」です。

「外れ値だから除外した」「集計期間を少しずらした」といった操作の履歴は残りません。結果として、会議室に出てくるのは「加工済みのきれいな数字」だけとなり、誰もその正当性を検証できなくなります。

②部門ごとの「定義」の不一致(サイロ化)

「売上」という言葉一つとっても、経理部門は「請求ベース」、営業部門は「受注ベース」で語っていることがあります。各部門が自分たちのシステム(SFA、MA、会計ソフト)だけでデータを管理していると、全社で統一された指標が存在しない状態(サイロ化)に陥ります。

この曖昧さが、「今回はこちらの定義を使ったほうが数字が良く見える」というチェリーピッキングの余地を生んでしまうのです。

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③確証バイアスという心理的罠

人間には、自分の仮説を支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視する「確証バイアス」という心理的傾向があります。「この新商品は売れるはずだ」と信じている担当者は、無意識のうちに好意的なアンケート結果だけをピックアップし、ネガティブな声を「ノイズ」として処理してしまいます。

これは悪意がない分、より根深く厄介な問題です。

誤ったデータがもたらす「見えない損失」とリスク

チェリーピッキングされたデータに基づく意思決定は、企業に深刻なダメージを与えます。ここではROI(投資対効果)の観点からリスクを整理します。

➀投資判断の誤りによるキャッシュアウト

例えば、特定の期間だけ切り取って「広告効果が高い」と見せかけたデータを信じ、広告予算を倍増させたとします。しかし、実態としての費用対効果(ROAS)が低ければ、その追加投資はすべて無駄金(ドブに捨てたコスト)となります。

②「予兆」の見逃しと対応の遅れ

製造業における品質管理や、サブスクリプションサービスの解約率分析において、不都合なデータを「誤差」として切り捨ててしまうことは致命的です。

本来であれば検知できたはずの「故障の予兆」や「顧客離反のサイン」を見逃し、大規模なリコールや大量解約が発生した後で気づくことになります。

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③組織内の信頼崩壊

一度でも「あの部門のデータは信用できない」という疑念が生まれると、経営層はデータではなく「勘と経験」あるいは「声の大きい人の意見」で意思決定を行うようになります。

これでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の目的である「データドリブン経営」は完全に瓦解します。

解決策:Google Cloud で実現する「改ざん不可能な」分析基盤

精神論で「客観的になれ」と説いても、チェリーピッキングはなくなりません。必要なのは、「恣意的な操作が不可能なシステム」です。ここで、Google Cloud のデータウェアハウス「BigQuery」と、BIプラットフォーム「Looker」を組み合わせた解決策が有効になります。

1. BigQueryによる「生データ」の一元管理 (SSOT)

まず、社内のあらゆるデータ(販売、ログ、顧客情報)を加工せずにそのまま BigQuery に集約します。

Excelと異なり、データウェアハウス上のデータは、個人の担当者が勝手に行を削除したり書き換えたりすることはできません。常に「加工前の真実(Raw Data)」がそこにあり、誰でも同じソースにアクセスできる状態を作ります。これを SSOT(Single Source of Truth:信頼できる唯一の情報源) と呼びます。

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2. Lookerによる「指標定義」のコード管理 (Governance)

一般的なBIツールでは、グラフを作る際にユーザーが個別に「集計フィルター」を設定できてしまいます。これがチェリーピッキングの温床です。対して、Google Cloudの Looker は、「LookML」 という独自言語を用いて、KPIの定義(何をもって売上とするか、粗利とするか)をコードとして中央管理します。

  • ユーザーの自由: 軸を変える(地域別、製品別など)ことは自由にできる。
  • ガバナンスの強制: 「売上」の計算式や「集計対象」のロジックは、ユーザーが勝手に変更できない。

これにより、「Aさんは税込で計算」「Bさんは特定店舗を除外して計算」といったバラつきを物理的に防ぎます。経営者が見るダッシュボードも、現場が見るレポートも、すべて同じ定義の数字が表示されるようになります。

3. データリネージによる透明性の確保

「この数字はどこから来たのか?」という疑問に対し、データの発生源から最終的なレポートに至るまでの経路(リネージ)を追跡できるようにします。

加工プロセスがプログラムとして可視化されているため、「なぜこのデータが除外されたのか(例:テストデータだから除外、といった正当な理由)」が第三者にも検証可能になります。

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成功の鍵:システム導入とセットで進める「データリテラシー教育」

堅牢なシステムを導入しても、それを使う人間にリテラシーがなければ形骸化します。システム構築と並行して、以下の文化醸成が必要です。

➀「悪い数字」こそ歓迎する文化

「目標未達のデータを報告すると怒られる」という組織文化がある限り、担当者はデータを歪めようとします。

DX先進企業では、悪いデータが出た際に「なぜそうなったか(Diagnostic Analytics)」をデータから深掘りできたことを評価します。失敗を隠すのではなく、データから次の改善策(Action)を導き出す姿勢を評価制度に組み込むことが重要です。

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②統計リテラシーの底上げ

「平均値」だけでなく「中央値」や「分布」を見る、「n数(サンプルサイズ)」を確認するといった基本的な統計知識を現場リーダー層が持つことで、意図しないチェリーピッキング(誤った解釈)を防ぐことができます。

データガバナンスの確立は、XIMIXにお任せください

チェリーピッキングのない、透明性の高いデータ分析基盤を構築するには、単にツールを導入するだけでなく、「データガバナンスの設計」と「既存業務プロセスの見直し」が不可欠です。

私たち XIMIX(サイミクス) は、Google Cloud のプレミアパートナーとして、数多くの中堅・大企業のデータ基盤構築を支援してきました。

  • 基盤構築: BigQuery と Looker を活用し、SSOT(唯一の信頼できる情報源)となるモダンなデータウェアハウスを構築します。
  • ガバナンス策定: LookML を用いた指標の標準化や、権限管理の設計を行い、属人化を排除します。
  • 内製化支援: お客様自身が正しいデータを活用できるよう、トレーニングや伴走支援を行います。

「経営会議の数字が信用できない」「部門ごとに数字が合わない」とお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。正しいデータだけが、正しい未来を指し示します。

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まとめ

  • データ分析におけるチェリーピッキングは、経営判断を誤らせる重大なビジネスリスクです。
  • その原因は、個人の倫理観だけでなく、「ローカルExcel」や「定義の不一致」といった構造的な問題にあります。
  • 解決策は、BigQueryによる「生データの集中管理」と、Lookerによる「指標定義のコード化(ガバナンス)」です。
  • XIMIXは、Google Cloud を活用した「信頼できるデータ基盤」の構築と、データドリブンな組織文化への変革を一気通貫で支援します。

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