多くの企業で導入されているGoogle Workspace。その中でも「Googleフォーム」は、アンケート作成ツールとして広く知られています。しかし、「名前は知っているが、どう業務に活かせばいいのか」「アンケート以外に使い道はあるのか?」と感じている方も多いのではないでしょうか。
特に、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する中堅〜大企業の担当者様にとって、身近なツールをいかに効果的に活用し、業務改善に繋げるかは重要な経営課題です。
本記事では、Googleフォームの基本的な使い方から、企業の生産性を飛躍させる応用的な活用術、そして企業利用で欠かせないセキュリティのポイントまで、SIerとしての知見を交えて網羅的に解説します。この記事を読めば、Googleフォームが持つ真のポテンシャルを理解し、貴社のDX推進を加速させる具体的なヒントを得られるはずです。
Googleフォームは、Googleが提供するオンラインフォーム作成ツールです。特別なITスキルがなくても、直感的な操作でアンケートや申し込みフォームなどを簡単に作成・公開・集計できます。まずは、その基本機能とビジネスにおけるメリット・デメリットを再確認しましょう。
多様な質問形式: 記述式、選択式(ラジオボタン、チェックボックス)、プルダウン、段階評価(スケール)、マトリックスなど、10種類以上の豊富な質問タイプを使い分けられます。
直感的な作成画面: プログラミング知識は不要。ドラッグ&ドロップで質問を追加・編集でき、リアルタイムでプレビューを確認しながら作成できます。
デザインのカスタマイズ: ヘッダー画像のアップロードやテーマカラーの変更ができ、企業のブランドイメージに合わせたデザインが可能です。
リアルタイムの自動集計: 回答は即座にグラフ形式で自動集計されます。また、ワンクリックでGoogleスプレッドシートにデータを出力し、より高度な分析も行えます。
柔軟な共有設定: メール、リンク、Webサイトへの埋め込みなど、多様な方法でフォームを配布できます。回答者を組織内のユーザーに限定することも可能です。
圧倒的なコストパフォーマンス: Googleアカウントがあれば利用開始でき、Google WorkspaceのBusinessライセンス以上を利用していれば、より高度な機能を追加費用なしで活用できます。紙のアンケートで発生していた印刷・配布・集計コストを劇的に削減します。
業務効率の大幅な向上: フォーム作成からデータ集計まで、プロセス全体をデジタル化することで、担当者の作業時間を大幅に短縮。特に、手作業だった集計業務の自動化は絶大な効果を発揮します。
データドリブンな意思決定の促進: 回答データは自動でデジタル化・一元管理されるため、分析やレポート作成が容易になります。顧客の声や従業員の意見をデータとして可視化し、客観的な根拠に基づいた意思決定を支援します。
ペーパーレス化の推進: 紙媒体を削減することで、環境負荷の低減はもちろん、書類の保管や管理にかかるコスト・スペースの削減にも貢献します。
場所を選ばないアクセシビリティ: PC、スマートフォン、タブレットなど、あらゆるデバイスから回答できるため、外勤の多い従業員や遠隔地の顧客からもスムーズに情報を収集できます。
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多くのメリットがある一方、利用シーンによってはデメリットとなり得る点も存在します。
複雑な条件分岐の限界: 特定の回答に応じて後続の質問を変化させる「条件分岐」は可能ですが、非常に複雑なロジックを組むのには向いていません。高度なワークフローには専用ツールや後述するGASでのカスタマイズが推奨されます。
デザインの自由度は限定的: カスタマイズは可能ですが、WebサイトのようにHTML/CSSで細部まで作り込むことはできません。デザイン性を極度に重視する場合には、他のフォーム作成サービスが選択肢となります。
オフラインでの利用不可: オンラインでの利用が前提となるため、インターネット環境がない場所ではフォームの作成も回答もできません。
ここでは、初めての方でも迷わないよう、アンケート作成の基本的な流れを6つのステップで解説します。
Googleドライブを開き、画面左上の「新規」ボタンから「Googleフォーム」を選択します。「空白のフォーム」から始めるか、用途に応じた「テンプレート」を利用することも可能です。
まず、フォームの目的が一目でわかるタイトル(例:「社内システム満足度アンケート」)を入力します。説明欄には、回答者への依頼事項や回答時間の目安、匿名性の担保などを明記すると親切です。
右側のメニューにある「+」ボタンをクリックして質問を追加します。質問文を入力し、回答形式をプルダウンから選択します。
記述式: 自由な意見や感想を求める場合に最適です。
ラジオボタン: 複数の選択肢から1つだけ選んでほしい場合(例:「はい/いいえ」)に使います。
チェックボックス: 複数の選択肢から当てはまるものを全て選んでほしい場合に使います。
均等目盛(スケール): 満足度などを「1(不満)〜5(満足)」のように段階で評価してもらう場合に便利です。
各質問は、右下の「必須」トグルをオンにすることで回答を必須にできます。
画面上部のパレットアイコンから、テーマカラーや背景色、フォントスタイルを変更できます。ヘッダーに企業のロゴや関連画像をアップロードすると、より公式な印象を与えられます。
画面右上の「送信」ボタンをクリックすると、共有方法の選択画面が表示されます。
メール: 特定の相手に直接メールで送信します。
リンク: 生成されたURLをコピーし、チャットや社内ポータルで共有します。
埋め込みHTML: Webサイトやブログにフォームを埋め込むためのコードを取得します。
フォーム編集画面の上部にある「回答」タブをクリックすると、集計結果をリアルタイムで確認できます。「概要」では円グラフなどで可視化されたサマリーを、「個別」では各回答者の詳細を見ることができます。
緑色のスプレッドシートアイコンをクリックすると、全ての回答データが格納されたGoogleスプレッドシートが自動で作成・連携され、より詳細な分析が可能になります。
Googleフォームはアンケートだけでなく、日常業務の様々なシーンでその真価を発揮します。
備品購入申請、休暇申請、経費精算、ITサポート依頼など、これまで紙や口頭で行っていた申請業務をデジタル化。フォーマットが統一され入力漏れを防ぎ、誰がいつ申請したかの履歴管理も容易になります。
新規事業のアイデア、社内制度改善に関する意見、イベント企画案などを匿名で募集。従業員が心理的なハードルを感じることなく本音を伝えやすくなり、組織の活性化とイノベーションを促進します。
社内研修や懇親会、ウェビナーの出欠確認や参加申し込みを一元管理。参加状況をリアルタイムで把握でき、リマインダーメールの送信などと組み合わせることで、運営を効率化します。
コンプライアンス研修後の理解度テストや、新入社員向けの業務ルール確認クイズなどに活用。自動採点機能を使えば、即座に結果をフィードバックでき、教育効果の測定とフォローアップに役立ちます。
Webサイトに「お問い合わせフォーム」を設置。収集した問い合わせはスプレッドシートに自動で蓄積され、対応状況のステータス管理や担当者の割り振りなどに活用できます。
採用サイトにエントリーフォームとして埋め込み、応募者情報を一元管理。履歴書や職務経歴書などのファイルアップロード機能も利用でき、採用プロセスの初期段階を大幅に効率化します。
働きがいや職場環境に関するES調査を実施。匿名設定で正直な意見を収集し、組織の状態を定量的に可視化します。定点観測することで、人事施策の効果測定や組織課題の早期発見に繋がります。
手軽で便利なGoogleフォームですが、企業で利用する際はセキュリティへの配慮が不可欠です。決裁者として必ず押さえておくべきポイントを解説します。
フォームの作成・編集ができるユーザーを適切に管理することが重要です。共有設定で特定のユーザーやグループのみに編集権限を付与し、意図しない改変を防ぎましょう。
フォームの設定画面で、回答者を自社ドメイン内のユーザー(例: @niandc.co.jp)のみに限定できます。これにより、部外者からの不正な回答や情報送信を防ぎ、機密性の高い情報の収集も安全に行えます。
顧客の個人情報や社内の機密情報を扱う場合は、フォームの目的、情報の利用範囲、管理責任者を明記するなど、プライバシーポリシーに準拠した運用が必須です。ファイルアップロード機能を利用する場合は、アップロードされるファイルの内容についても管理体制を明確にしておく必要があります。
「リンクを知っている全員」が回答できる設定は手軽ですが、意図せずリンクが外部に流出した場合、誰でも回答できてしまいます。社内向けのフォームは、原則として組織内ユーザー限定に設定することを徹底しましょう。
Googleフォームは、他のGoogle Workspaceツールと連携させることで、単なるフォームツールを超えた業務自動化プラットフォームへと進化します。
回答データが自動で集計されるスプレッドシート上で、関数やピボットテーブルを使えば、部署別・役職別といったクロス集計も簡単です。グラフを作成してレポートに貼り付けるなど、データ分析と資料作成を効率化します。
フォームに新しい回答があった際に、GmailやGoogle Chatの指定したスペースに自動で通知を送ることができます。これにより、問い合わせへの迅速な一次対応や、申請の即時確認が可能になります。
プログラミング言語であるGoogle Apps Script (GAS) を使えば、定型業務の多くを自動化できます。
承認フローの自動化: 休暇申請フォームが送信されたら、申請者の上長のメールアドレスに承認依頼メールを自動送信する。
条件付き通知: アンケートで「緊急のサポートが必要」と回答された場合にのみ、ITサポートチームのチャットにアラートを通知する。
帳票の自動作成: 備品購入申請の内容を、Googleドキュメントのテンプレートに転記し、正式な申請書を自動で生成する。
こうした自動化は、業務プロセス全体を効率化し、従業員がより付加価値の高い仕事に集中できる環境を生み出します。
Googleフォームは、DX推進の入り口として非常に強力なツールです。しかし、その効果を最大化し、全社的な業務改革に繋げるには、専門的な知見が必要となる場面も少なくありません。
「フォームでのデータ収集は始めたが、どう分析・活用すればいいか分からない」 「GASで業務自動化をしたいが、開発リソースやノウハウがない」 「Google Workspaceを全社的にもっと活用し、本格的なDXを推進したい」
このような課題に対し、私たちXIMIXはGoogle CloudおよびGoogle Workspaceの導入・活用支援における豊富な実績と専門知識を活かし、お客様を強力にサポートします。
業務プロセス改善コンサルティング: 現状の業務フローを可視化・分析し、Googleフォームや他のツールを組み合わせた最適なデジタル化・自動化のプロセスを設計・提案します。
Google Apps Script (GAS)開発・内製化支援: お客様の要件に応じた高度な自動化ツールを開発。また、お客様自身がGASを使いこなせるようになるための技術支援やトレーニングも提供します。
全社的なデータ活用基盤の構築: Googleフォームで収集したデータを、Google CloudのBigQueryやLooker Studioと連携させ、経営判断に資するデータ分析環境を構築します。
個別のツール活用支援から、全社的なDX戦略の策定・実行まで、お客様のフェーズに合わせた伴走支援が私たちの強みです。
XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。
A1: はい、個人のGoogleアカウント(@gmail.com)があれば、基本的な機能はすべて無料で利用できます。Google Workspaceの有料プランを契約している企業は、回答者を組織内に限定する機能や、より高度なセキュリティ管理機能などを利用できます。
A2: はい、可能です。フォームの設定で「メールアドレスを収集する」のチェックを外せば、回答者がGoogleアカウントにログインしていても、そのメールアドレスは記録されません。ただし、その旨をフォームの説明欄に明記し、回答者に安心感を与えることが重要です。
A3: はい、できます。Googleフォームはレスポンシブデザインに対応しているため、PC、スマートフォン、タブレットなど、どのデバイスでも画面サイズが最適化され、快適に操作・回答が可能です。
本記事では、Googleフォームの基本的な使い方から、ビジネスの生産性を高める応用例、企業利用におけるセキュリティの要点まで、幅広く解説しました。
Googleフォームは、特別な知識がなくても直感的に使え、コスト削減、業務効率化、データに基づいた意思決定の促進など、計り知れないメリットをもたらすツールです。まずは、身近な申請業務のデジタル化や、チーム内の簡単な意見収集から、その力を体感してみてください。
そして、Googleフォームの活用をきっかけに、Google Workspace全体の可能性をさらに引き出し、貴社のDXを次のステージへと加速させたいとお考えの際には、ぜひ私たちXIMIXにご相談ください。専門知識と豊富な実績に基づき、貴社の課題解決と目標達成を力強くサポートいたします。