コラム

AppSheetで実現する小売の業務効率化:在庫管理・店舗運営など活用例を紹介

作成者: XIMIX Google Workspace チーム|Apr 24, 2025 4:44:04 AM

はじめに

人手不足の深刻化、原材料費や物流コストの高騰、顧客ニーズの多様化、そしてECサイトとの競争激化――。今日の小売業は、かつてないほど複雑で厳しい経営環境に直面しています。このような状況下で持続的な成長を遂げるためには、デジタルトランスフォーメーション(DX)による業務プロセスの抜本的な見直しと効率化が急務となっています。

しかし、多くの小売企業、特に店舗を多数展開する中堅・大企業においては、「現場のITスキル不足」「システム開発にかかる高額なコストと時間」「既存システムとの連携の難しさ」といった壁がDX推進を阻んでいるケースも少なくありません。

こうした課題に対する有力な解決策として、ノーコード開発プラットフォーム「AppSheet」が注目を集めています。本記事では、AppSheetが小売業の業務効率化、ひいてはDX推進にどのように貢献できるのか、具体的な活用事例や導入成功のポイントを交えながら、応用・高度レベルの視点で詳しく解説します。

 

AppSheetとは? なぜ小売業のDX推進に有効なのか

AppSheetの概要:現場から使えるノーコード開発

AppSheetは、プログラミングの知識がなくても、ビジネスアプリケーションを迅速に開発できるノーコード/ローコードプラットフォームです。

  • データソース連携: Google スプレッドシート™、Excel、Cloud SQL™、Salesforceなど、様々なデータソースに接続してアプリを作成できます。既存のデータを活用できるため、導入のハードルが低いのが特徴です。
  • 豊富な機能: データ入力フォーム、バーコード/QRコードスキャン、GPS位置情報取得、写真/署名キャプチャ、ワークフロー自動化、レポート生成など、ビジネスに必要な機能が豊富に用意されています。
  • マルチデバイス対応: 作成したアプリは、スマートフォン、タブレット、PCなど、様々なデバイスで利用可能です。店舗スタッフやバックオフィス担当者など、利用シーンに合わせて最適なデバイスでアクセスできます。
  • Google Workspace との連携: Gmail™、Google カレンダー™、Google ドライブ™ など、多くの企業で利用されているGoogle Workspace とシームレスに連携し、業務プロセス全体の効率化を図ることができます。

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小売業におけるAppSheetの強み:現場主導のDX

AppSheetが特に小売業のDX推進に有効な理由は、その「現場主導」を可能にする特性にあります。

  • 現場の課題を迅速に解決: 店舗スタッフなど、現場の担当者が日々の業務で感じている課題や改善アイデアを、自らアプリという形にして解決できます。
  • 低コスト・短期間での導入: 外部の開発会社に依頼する場合と比較して、開発コストと時間を大幅に削減できます。小規模な業務改善からスモールスタートし、効果を見ながら展開していくことが可能です。
  • 既存資産の有効活用: すでに存在するスプレッドシートなどのデータを活用してアプリを作成できるため、新たなデータベース構築の手間やコストがかかりません。
  • IT人材不足への対応: プログラミングスキルが不要なため、専門的なIT人材が不足している企業でも、現場主導でDXを推進できます。

【小売業向け】AppSheet活用による業務効率化 具体例

AppSheetは、小売業における様々な業務シーンで活用できます。ここでは代表的な具体例をご紹介します。

①在庫管理・棚卸業務

  • リアルタイム在庫管理: スマートフォンのカメラで商品バーコードをスキャンし、入出庫情報をその場で記録。在庫データがリアルタイムで更新され、店舗間や本部との正確な情報共有を実現します。過剰在庫や欠品リスクを低減できます。
  • 効率的な棚卸: 棚卸アプリを使えば、紙のリストへの記入や後からのデータ入力作業が不要に。バーコードスキャンで迅速かつ正確に棚卸を行い、作業時間を大幅に短縮します。
  • 発注点管理: 在庫数が設定した発注点を下回った際に、自動で担当者に通知を送るといったワークフローを構築し、発注漏れを防ぎます。

②店舗運営・報告業務

  • 日報・巡回報告のデジタル化: 店舗の売上、客数、特記事項などを定型フォーマットで簡単に入力。写真や位置情報も添付でき、状況を正確に本部へ報告できます。紙やメールでの報告作業を効率化します。
  • 各種チェックリスト: 開店・閉店作業、衛生管理、売場メンテナンスなどのチェックリストをアプリ化。実施状況を記録し、抜け漏れを防ぎます。管理者は全店舗の実施状況を一覧で確認できます。
  • 設備・什器点検: 店舗内の設備や什器の定期点検をアプリで管理。点検履歴を残し、故障や不具合発生時の迅速な対応を支援します。

③従業員管理・タスク連携

  • シフト管理・共有: スタッフの希望シフト収集からシフト表作成、共有までをアプリで完結。急な変更にも対応しやすくなります。
  • 作業指示・進捗管理: 本部から各店舗へ、あるいは店長からスタッフへの作業指示をアプリで配信。担当者はアプリ上で進捗状況を報告でき、タスク管理を効率化します。
  • 経費精算の効率化: 小口経費や交通費の申請・承認プロセスをアプリ化。ペーパーレス化を進め、バックオフィス業務の負担を軽減します。

④顧客情報管理・販促活動

  • 簡易CRM: 顧客情報や来店履歴、購買履歴などを記録・管理。顧客に合わせた接客やアプローチに活用できます。
  • アンケート・フィードバック収集: 店頭での顧客アンケートをタブレットで実施し、結果をリアルタイムで集計・分析。顧客満足度向上に繋げます。
  • カーブサイドピックアップ支援: オンラインで注文した商品の店頭受け取り(カーブサイドピックアップ)プロセスをアプリで管理。顧客への通知や受け渡し状況の管理を効率化します。

AppSheet導入によるメリットと成功のポイント

小売業が得られる主なメリット

AppSheetを導入することで、小売業は以下のような多くのメリットを享受できます。

  • 現場業務の効率化と時間創出: 在庫管理、報告業務などのルーチンワークを効率化し、スタッフが接客などコア業務に集中できる時間を創出します。
  • 人的ミスの削減とデータ精度の向上: 手作業による入力ミスや転記ミスを削減し、在庫データや報告内容の正確性を向上させます。
  • リアルタイムな情報共有と意思決定: 店舗と本部、あるいはスタッフ間で常に最新の情報が共有され、状況に応じた迅速な意思決定が可能になります。
  • コスト削減: ペーパーレス化、開発コストの抑制、業務効率化による人件費の最適化など、様々な側面からコスト削減に貢献します。
  • 従業員のITスキル向上とDXマインド醸成: 現場スタッフが自らアプリ開発・改善に関わることで、ITスキルやDXに対する意識が向上します。

導入成功のためのポイント

AppSheet導入の効果を最大化するためには、以下の点に留意することが重要です。

  • 目的の明確化: 「何を解決したいのか」「どの業務を効率化したいのか」という導入目的を明確にし、関係者間で共有します。
  • スモールスタートと効果検証: 最初から大規模なアプリを開発するのではなく、特定の業務や部門に絞って小さく始め、効果を測定しながら改善・展開していくことが推奨されます。
  • 現場担当者の巻き込みと教育: アプリを実際に利用する現場の担当者を開発の初期段階から巻き込み、意見を反映させることが重要です。また、使い方に関する十分なトレーニングを提供します。
  • データソースの整備: アプリの基盤となるデータソース(スプレッドシートなど)の構成を事前に整理し、適切に管理・運用する体制を整えます。
  • セキュリティと権限管理: 誰がどのデータにアクセスし、どのような操作を行えるか、適切な権限設定とセキュリティポリシーの適用が不可欠です。
  • 継続的な改善: アプリは作って終わりではありません。利用状況や現場からのフィードバックを基に、継続的に改善していく姿勢が求められます。

中堅・大企業における導入の考慮点

特に店舗数や従業員数が多い中堅・大企業においては、上記に加えて以下の点を考慮する必要があります。

  • 部門間の連携: 複数の部門が関わる業務プロセスをアプリ化する場合、部門間のスムーズな連携体制を構築します。
  • 全社的なガバナンス: アプリの乱立を防ぎ、品質やセキュリティレベルを維持するための全社的な開発・運用ルールやガイドラインを策定します。
  • 基幹システムとの連携: 必要に応じて、AppSheetアプリと既存の基幹システム(販売管理、在庫管理システムなど)とのデータ連携(API連携など)を検討します。
  • 内製化支援体制: 現場主導でのアプリ開発を推進・支援するための専門部署や担当者を設置し、教育や技術サポートを提供します。

XIMIXによるAppSheet導入・活用支援

AppSheet活用の次のステップ

AppSheetの活用が進むと、さらに高度な業務効率化やデータ活用へのニーズが高まります。

  • 複数アプリ連携とワークフロー自動化: 複数のAppSheetアプリを連携させたり、Google Workspace の他のツール(Gmail、カレンダー、Chat™ など)と組み合わせたりすることで、より複雑な業務プロセス全体の自動化を実現します。
  • データ分析基盤との連携: AppSheetで収集した現場データをBigQuery™ に集約し、Looker Studio™ などで可視化・分析することで、データに基づいた経営判断や店舗運営の最適化を支援します。
  • 基幹システム連携: APIなどを活用し、AppSheetアプリと基幹システムを連携させることで、データの二重入力をなくし、よりシームレスな業務フローを実現します。

XIMIXの提供価値

私たちXIMIXサービス、Google CloudおよびGoogle Workspaceのプレミアパートナーとして、AppSheetの導入・活用を強力に支援します。

  • コンサルティング: 貴社の業務内容や課題を深く理解し、最適なAppSheet活用方法をご提案します。
  • PoC(概念実証)支援: スモールスタートを支援し、導入効果を具体的に検証するPoCの計画・実行をサポートします。
  • アプリ開発・改修支援: 要件定義からアプリ開発、既存アプリの改修まで、お客様のニーズに合わせて柔軟に対応します。
  • 内製化支援トレーニング: AppSheetの開発スキルを習得するためのトレーニングプログラムを提供し、お客様自身でのアプリ開発・運用(内製化)を支援します。
  • Google Workspace 全体最適化: AppSheetだけでなく、Google Workspace全体の活用を見据え、セキュリティ設定や他のツールとの連携も含めたトータルな最適化をご提案します。

NI+Cは、これまで多くの小売業のお客様のDXをご支援してきた豊富な実績とノウハウを有しています。

AppSheetの導入や活用、小売業の業務効率化に関してお困りのことがございましたら、ぜひXIMIXにご相談ください。



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まとめ

AppSheetは、プログラミング知識がなくても現場の課題を解決するビジネスアプリを迅速に開発できる、小売業のDX推進において非常に強力なツールです。在庫管理、店舗運営、報告業務など、多岐にわたる業務を効率化し、コスト削減、生産性向上、データ活用促進に大きく貢献します。

重要なのは、AppSheetを単なるツールとして導入するのではなく、「現場の課題を、現場自身の手で解決していく」という文化を醸成するきっかけとすることです。スモールスタートで成功体験を積み重ね、現場を巻き込みながら継続的に改善していくことが、AppSheet導入を成功させ、真の業務変革を実現する鍵となります。

XIMIXは、AppSheetの導入から活用、そしてその先のデータ活用高度化まで、お客様の状況に合わせて伴走し、小売業のDX推進を全力でサポートいたします。