はじめに
クラウドのセキュリティ運用は、ネットワーク防御・脅威検知・鍵管理・自動対応など幅広い領域にまたがります。2026年7月20日〜7月26日の期間は、Cloud NGFW の WildFire によるマルウェア防御、Google SecOps の旧 SIEM API 非推奨化、Binary Authorization の耐量子暗号(PQC)鍵対応、SecOps の調査・ケース管理エクスペリエンス刷新など、運用に直結するアップデートが発表されました。
本記事では、この期間に発表された Google Cloud セキュリティカテゴリの主要アップデートを11トピックに整理し、リリース日の昇順で解説します。ネットワークセキュリティ、ソフトウェアサプライチェーン、機密データ保護、セキュリティオペレーション(Google SecOps)まで、セキュリティ担当者・IT 部門が把握しておきたい内容を取り上げています。
特に Google SecOps の旧 SIEM API 非推奨化、Binary Authorization の耐量子暗号(PQC)鍵対応、SecOps の調査・ケース管理エクスペリエンスの刷新 は、自社環境への影響や適用方針を検討したい内容です。経営層はリスク低減と将来への備えの観点から、IT 担当者は適用判断の観点から読み進めていただくと役立ちます。
| 対象期間 |
2026年7月20日〜2026年7月26日 |
| 対象製品 |
Google Cloud |
| 対象カテゴリ |
セキュリティ |
| アップデート件数 |
11件(主要トピック) |
今回のアップデート一覧
アップデート詳細
1. Cloud NGFW — WildFire による未知のマルウェア防御が Preview 提供
Cloud NGFW(Cloud Next Generation Firewall。次世代ファイアウォール)で、WildFire サービスを使ってネットワークを未知の新種マルウェアやファイルベースの脅威から保護できるようになりました(2026年7月20日)。WildFire は Cloud Firewall Enterprise ティアで利用できます。
🔍 何が変わったのか
- WildFire が、高度なマルウェアのサンドボックス解析とリアルタイムの機械学習(ML)を組み合わせて、ネットワーク経由のファイル転送を詳細に検査します
- ゼロデイマルウェア(未知の脆弱性を突く、まだ対策が知られていないマルウェア)が、ワークロードに到達する前にブロックされます
- 本機能は Preview(プレビュー)で提供され、Cloud Firewall Enterprise ティアで利用できます
💼 こんな場面で活用できます(ユースケース)
ネットワークセキュリティを担う IT 部門・セキュリティ担当者が対象です。既存のシグネチャ(既知の脅威パターン)では検知しにくい未知のマルウェアや、ファイル転送を介した攻撃への防御を、ファイアウォールのレイヤーで強化したい場面に役立ちます。
✨ 導入メリット
- サンドボックス解析と機械学習により、未知の脅威をワークロード到達前にブロックできます
- ネットワークのファイアウォール層で防御を強化でき、多層防御の一環として活用できます
- マネージドサービスとして提供されるため、独自のサンドボックス基盤を構築・運用する負荷を抑えられます
📚 公式ソース
2. Google SecOps / SIEM — 旧 SIEM API(Backstory・Ingestion API)の非推奨化を告知
セキュリティオペレーション基盤 Google SecOps が、旧 SIEM API(Backstory API、Customer Management API を含む/および Ingestion API)を非推奨化し、モダンな Chronicle API への移行を進めると告知しました(2026年7月20日)。SIEM は、セキュリティ情報・イベント管理の仕組みです。
✨ 使えるようになる機能
- モダンな Chronicle API への統一が推奨されます。旧 API から Chronicle API のエンドポイントへ置き換えることで、今後の機能提供へ追随できます
⚠️ 使えなくなる機能 / 変更点
- 2026年10月26日: この日以降に新規プロビジョニングされる Google SecOps インスタンスでは、旧 API 呼び出しがサポートされなくなります
- 2027年7月20日: この日以降、既存すべてのインスタンスで旧 API が完全に停止され、旧エンドポイントへのすべてのリクエストが失敗します
- 影響を受けるのは、旧 Backstory API または Ingestion API のエンドポイントを呼び出すカスタムスクリプト・連携・SOAR コネクタ・取り込みフィードのみです。SecOps の UI に関わる変更は対応済みで、利用者側の対応は不要とされています
🤔 判断観点
- 影響範囲: 旧 Backstory API / Ingestion API を呼び出すカスタムスクリプト・連携・SOAR コネクタ・取り込みフィードを運用しているチームが対象です。まず API 利用状況を棚卸しする観点があります
- 検証推奨事項: 影響を受けるコンポーネントを Chronicle API エンドポイントへ置き換えたうえで、更新後の動作が正しく機能するか検証・テストする観点があります
- ロールアウト戦略: 2つの停止日付(2026年10月26日/2027年7月20日)を踏まえ、移行の期限と優先順位を計画する観点があります
📚 公式ソース
3. Virtual Private Cloud — BYOIP の静的外部 IPv6 アドレス予約が Preview 提供
Virtual Private Cloud(VPC。Google Cloud 上の仮想ネットワーク)で、BYOIP(Bring Your Own IP。自社保有 IP アドレスの持ち込み)のサブプレフィックスから、静的な外部 IPv6 アドレスを予約できるようになりました(2026年7月20日、Preview)。
🔍 何が変わったのか
- EXTERNAL_IPV6_FORWARDING_RULE_CREATION モードの BYOIP サブプレフィックスから、静的外部 IPv6 アドレスを予約できます
- 予約したアドレスは、外部パススルー ネットワークロードバランサーや外部プロトコル転送の転送ルールに割り当てられます
- 外部転送ルールで使われている一時的な IPv6 BYOIP アドレスを、予約済みの静的 IP アドレスへ昇格させることもできます
💼 こんな場面で活用できます(ユースケース)
自社保有の IP アドレスを Google Cloud に持ち込んで運用するネットワーク担当者が対象です。外部公開するロードバランサーなどに、固定の IPv6 アドレスを割り当てて安定運用したい場面に役立ちます。
✨ 導入メリット
- 静的な外部 IPv6 アドレスを予約でき、アドレスの安定運用がしやすくなります
- 一時アドレスを静的アドレスへ昇格でき、既存構成からの移行を柔軟に進められます
- 自社保有 IP を活かしたアドレス設計を IPv6 環境でも実現できます
📚 公式ソース
4. Binary Authorization — 耐量子暗号(PQC)鍵に対応
Binary Authorization(デプロイ時にコンテナイメージの署名を検証し、信頼できるイメージのみをデプロイさせる仕組み)が、耐量子暗号(PQC=Post-Quantum Cryptography)アルゴリズムを使う鍵に対応しました(2026年7月21日)。PQC は、将来の量子コンピュータによる攻撃にも耐えうるように標準化された暗号方式です。
🔍 何が変わったのか
- Binary Authorization が、PQC アルゴリズムを使う鍵をサポートするようになりました
- 対応アルゴリズムには ML-DSA-65(Dilithium3)が含まれます。これらは古典コンピュータと量子コンピュータ双方からの攻撃に耐えられるよう標準化されています
- PQC 鍵ペアの生成方法とアテスター(署名を検証する主体)の作成手順が公式ドキュメントで案内されています
💼 こんな場面で活用できます(ユースケース)
ソフトウェアサプライチェーンのセキュリティを担う開発・プラットフォーム担当者が対象です。コンテナイメージの署名検証で、将来の量子コンピューティングを見据えた署名アルゴリズムを採用したい場面に役立ちます。
✨ 導入メリット
- デプロイの署名検証に耐量子暗号を採用でき、長期的なセキュリティに備えられます
- ML-DSA-65 など標準化されたアルゴリズムを利用でき、将来への移行を計画的に進められます
- 信頼できるイメージのみをデプロイする統制を、暗号面でも強化できます
📚 公式ソース
5. Managed Cloud Service Mesh — Envoy Lua フィルタ(Preview)と Compressor フィルタ(GA)
Managed Cloud Service Mesh(サービス間の通信を管理・保護するマネージドサービスメッシュ)で、Envoy の拡張フィルタ2種が安定リリースチャネルで提供されました(2026年7月21日・7月24日)。Envoy は、サービスメッシュのデータプレーンで使われるプロキシです。
✨ 使えるようになる機能
- Envoy Lua フィルタ: 安定リリースチャネルで Preview(プレビュー)機能として利用可能になりました(2026年7月21日)。Lua スクリプトによる柔軟なリクエスト・レスポンス処理を実現できます
- Envoy Compressor フィルタ: 安定リリースチャネルで GA(一般提供)になりました(2026年7月24日)。レスポンスの圧縮処理をデータプレーンで扱えます
💼 こんな場面で活用できます(ユースケース)
サービスメッシュを運用するプラットフォームチームが対象です。Lua フィルタでリクエスト処理をカスタマイズしたい場面や、Compressor フィルタでレスポンスの圧縮を通信レイヤーで扱いたい場面に役立ちます。
✨ 導入メリット
- Lua フィルタにより、アプリケーションを改修せずに通信処理をカスタマイズできます
- Compressor フィルタが GA になり、本番用途での圧縮処理の採用を検討できます
- 安定リリースチャネル上で拡張機能を利用でき、運用の見通しを立てやすくなります
📚 公式ソース
6. Virtual Private Cloud — VPC Flow Logs に App Hub ラベルを付与
Virtual Private Cloud の VPC Flow Logs(ネットワークトラフィックのフローを記録するログ)で、App Hub のワークロードやサービスとして登録された Google Cloud リソースについて、レコードにアプリケーション固有のラベルが含まれるようになりました(2026年7月21日)。App Hub は、アプリケーション単位でリソースを整理・管理する仕組みです。
🔍 何が変わったのか
- App Hub ワークロード/サービスとして登録されたリソースの VPC Flow Logs レコードに、アプリケーション固有のラベルが記録されるようになりました
💼 こんな場面で活用できます(ユースケース)
ネットワーク監査やセキュリティ分析を担う担当者が対象です。トラフィックのログをアプリケーション単位で紐づけて分析したい場面に役立ちます。どのアプリケーションに関わる通信かを、ログ上で判別しやすくなります。
✨ 導入メリット
- フローログをアプリケーション単位で読み解けるため、分析の粒度が高まります
- アプリケーション固有ラベルにより、監査やトラブルシューティングの手がかりが増えます
- App Hub を活用した運用管理と、ネットワークログ分析を紐づけやすくなります
📚 公式ソース
7. Google SecOps Marketplace — 7つの統合が更新(新規統合・機能追加・改善)
セキュリティオペレーション基盤 Google SecOps の Marketplace で、7つの統合が更新されました(2026年7月22日)。SecOps Marketplace は、SecOps とサードパーティ製品を連携させる統合を提供する仕組みです。今回は新規統合の追加、アクション追加、コネクタの改善が含まれます。
✨ 使えるようになる機能 / 変更点
- Wiz バージョン 14.0: Get Blue Agent Analysis アクションを追加しました
- SentinelOne Singularity Operations Center バージョン 1.0: 新規統合として追加されました
- Proofpoint Email Protection バージョン 10.0: Download Quarantined Email アクションを追加しました
- QRadar バージョン 69.0: Qradar Offenses Connector で、変更追跡のタイムスタンプフィルタリングに last_persisted_time を使うよう更新しました(非破壊的変更)
- Jira バージョン 60.0: List Issues アクションで、Created Before 日付フィルタと Custom JQL クエリパラメータをサポートしました(非破壊的変更)
- Google Chronicle バージョン 90.0: Chronicle Alerts Connector で、Wiz Defend 検出の扱いとオントロジーマッピングを更新しました(非破壊的変更)
- Azure Monitor バージョン 5.0: 統合設定内のドキュメントリンクを更新しました(非破壊的変更)
💼 こんな場面で活用できます(ユースケース)
SecOps の Playbook(自動対応手順)で外部製品との連携を組み込んでいる SOC(セキュリティ監視)チームが対象です。クラウドセキュリティ(Wiz)、エンドポイント(SentinelOne)、メールセキュリティ(Proofpoint)、SIEM・チケット連携(QRadar・Jira)などの統合機能が拡充・改善されます。
🤔 判断観点
- 影響範囲: 上記7つの統合を利用しているチームが対象です。使用中の統合が含まれるか確認する観点があります
- 検証推奨事項: 更新対象のアクションやコネクタ(Get Blue Agent Analysis・Download Quarantined Email・Qradar Offenses Connector 等)を利用中の場合、Playbook の動作に影響がないか確認する観点があります
📚 公式ソース
8. reCAPTCHA — Fraud Defense の Policy Engine・Universal keys・チャレンジポリシーが Preview 提供
reCAPTCHA の Google Cloud Fraud Defense(不正防止機能)で、Policy Engine、Universal keys、チャレンジポリシーが Preview(プレビュー)で提供開始されました(2026年7月24日)。reCAPTCHA は、Bot(自動プログラム)による不正アクセスを検知・防御する仕組みです。
🔍 何が変わったのか
- Policy Engine: AutoExecute によるフロントエンド JavaScript 連携と、リスクスコア・IP アドレス・ユーザーエージェント・ASN・検証済み Bot 識別などに基づいてチャレンジを選択的に発動するカスタムルールを設定できます
- QR コードチャレンジ: AI に耐性を持つ新しい QR コードチャレンジが利用可能になりました
- Universal keys とチャレンジポリシーもあわせて Preview で提供されます
💼 こんな場面で活用できます(ユースケース)
Web サービスの不正対策を担う開発・セキュリティ担当者が対象です。リスクに応じてチャレンジ(追加認証)を出し分けたい場面や、AI による自動突破への耐性を高めたい場面に役立ちます。
✨ 導入メリット
- リスクスコアや IP などの条件でチャレンジを出し分けでき、正規ユーザーの体験と防御を両立しやすくなります
- AI 耐性のある QR コードチャレンジにより、自動化された突破への防御を強化できます
- Policy Engine のカスタムルールで、状況に応じた柔軟な不正対策を構成できます
📚 公式ソース
9. Google SecOps — マルチイベントルールにカスタマイズ可能なスケジュールを追加(Public Preview)
セキュリティオペレーション基盤 Google SecOps で、マルチイベントルール(複数のイベントを組み合わせて評価する検出ルール)に、カスタマイズ可能なスケジュール機能が追加されました(2026年7月26日、Public Preview)。
🔍 何が変わったのか
- ルールの Rule schedule タブで、初回実行の遅延オフセットを指定できます。これにより、データ取り込みの遅延を考慮してルールを実行できます
- 遅れて到着したログを取り込むための自動 true-up 実行が、バックグラウンドで行われます
- スケジュールの変更には、IAM 権限の更新が必要です
💼 こんな場面で活用できます(ユースケース)
検出ルールを設計・運用するセキュリティエンジニアが対象です。ログの取り込みに遅延が生じる環境で、遅れて届いたデータも取りこぼさずに検出したい場面に役立ちます。
✨ 導入メリット
- 初回実行の遅延オフセットにより、取り込み遅延を考慮した検出ができます
- 自動 true-up 実行により、遅れて到着したログも検出対象に取り込めます
- 検出の網羅性を高め、遅延データによる検知漏れのリスクを抑えられます
📚 公式ソース
10. Google SecOps — 調査・ケース管理エクスペリエンスを刷新(Public Preview)
セキュリティオペレーション基盤 Google SecOps で、調査・ケース管理エクスペリエンスが刷新されました(2026年7月26日、Public Preview)。アラートに加えて、生の UDM イベントや検出も追跡できるようになります。UDM は、SecOps が扱う統一データモデルです。
🔍 何が変わったのか
- アラートに加え、生の UDM イベントと検出をケース内で追跡できるようになりました
- SIEM の検索結果をケースに添付できます(1ケースあたり最大 500 検出・5,000 UDM イベント)
- 対話的な Events Viewer や、デフォルトビューの設定が利用できます
- 現状はシングル SIEM 構成のみ対応です
💼 こんな場面で活用できます(ユースケース)
インシデント調査を担う SOC アナリストが対象です。1つのケースの中でアラート・検出・生イベントをまとめて追跡し、調査の経緯を一元的に管理したい場面に役立ちます。SIEM 検索の結果をケースに添付して、証跡として残せます。
✨ 導入メリット
- アラート・検出・生 UDM イベントを1つのケースで追跡でき、調査の全体像を把握しやすくなります
- SIEM 検索結果をケースへ添付でき、調査の証跡を整理しやすくなります
- 対話的な Events Viewer により、調査作業の効率を高められます
📚 公式ソース
その他のアップデート
上記の主要トピック以外にも、この期間には運用に関するアップデートが発表されています。自組織の利用状況に応じてご確認ください。
- Google SecOps SOAR — リリース 6.3.94 / 6.3.95: 6.3.94 が全リージョンで利用可能に(2026年7月25日)、6.3.95 が初期リージョンへロールアウト開始(2026年7月26日、内部・顧客のバグ修正を含む)。詳細は Google SecOps SOAR release notes をご確認ください。
まとめ
2026年7月20日〜7月26日のセキュリティカテゴリは、ネットワーク防御・ソフトウェアサプライチェーン・機密データ保護・セキュリティオペレーションの各領域で強化が進みました。とりわけ Cloud NGFW の WildFire(Preview)と Binary Authorization の耐量子暗号(PQC)鍵対応は、未知の脅威への防御と将来を見据えた暗号基盤の両面で注目されるアップデートです。
セキュリティオペレーションでは、Google SecOps の旧 SIEM API 非推奨化(2026年10月26日・2027年7月20日の停止日程あり)、調査・ケース管理エクスペリエンスの刷新(Public Preview)、マルチイベントルールのスケジュール機能、Marketplace の7統合更新、SOAR のリリース提供が発表されています。旧 SIEM API を利用したカスタム連携がある場合は、Chronicle API への移行計画を早めに検討する観点があります。自社の構成や利用状況を踏まえ、公式ドキュメントをもとに適用・対応方針を見極めることをご検討ください。
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