「先月実施した施策は、本当に売上に効いたのか」——多くの企業が抱えるこの問いに、データウェアハウスの機能だけで迫れる選択肢が広がりつつあります。2026年9月7日〜9月13日の期間は、時系列データに対する施策の影響度を数値化する BigQuery の AI.CAUSAL_EFFECT(Preview) や、保存済みモデルを用意せずに予測精度を測れる ML.METRICS(Preview)、さらに Looker の VS Code 拡張機能の一般提供(GA)など、データ活用の裾野を広げるアップデートが発表されました。
本記事では、この期間に発表された Google Cloud のデータ分析カテゴリのアップデート9件を、業務担当者・IT 部門・経営層の方々に向けてわかりやすく解説します。それぞれ「何が変わったのか」「どんな業務シーンで使えるのか」「どんなメリットがあるのか」を整理し、公式ドキュメントへのリンクを添えています。
今回は BigQuery の分析系 AI 関数の拡充が中心テーマです。加えて、データガバナンスに関わる Knowledge Catalog のデータドメイン(Preview)、ストリーミング基盤の Managed Service for Apache Kafka のパブリッククラスタ対応、そして自社の対応時期を検討しておきたい Looker Mobile (Legacy) の廃止延期の告知も含まれています。
| 対象期間 | 2026年9月7日〜2026年9月13日 |
| 対象製品 | Google Cloud |
| 対象カテゴリ | データ分析 |
| アップデート件数 | 9件 |
Knowledge Catalog(Google Cloud のデータカタログ・ガバナンスサービス)に、データドメイン(data domains)が追加されました。企業内のリソースを論理的に整理することで、大規模な環境でもデータの発見とキュレーション(整理・選別)を進められるようにする機能です。本機能は Preview(プレビュー)段階での提供です。
全社のデータ基盤を管理するデータガバナンス担当者が、「どの部門が、どのデータを、どの目的で保有しているのか」を整理したい場面で活用できます。データセットやテーブルが部門ごとに増え続け、全体像を把握しきれなくなっている組織では、リソースを業務領域(ドメイン)の単位でまとめ直すことで、利用者が目的のデータへたどり着きやすくなります。
BigQuery(Google Cloud のクラウド型データウェアハウス)の会話型分析(conversational analytics。自然言語でデータに問いかけられる機能)が、AI.PREDICT 関数を用いた予測モデリングに関する質問をサポートしました。本機能は Preview(プレビュー)段階です。
営業企画やマーケティングの担当者が、BigQuery に蓄積された顧客データや売上データに対して「今後の傾向はどうなりそうか」を確かめたい場面で活用できます。これまでは予測を試すために SQL を書くか、データ分析の担当者に依頼する必要がありましたが、会話型分析の画面から自然言語で問いかけられるようになりました。
BigQuery の生成 AI 関数(SQL から大規模言語モデルを呼び出す関数群)が、新たに 3 つの Gemini モデルをサポートしました。
問い合わせ履歴やアンケートの自由記述など、BigQuery に蓄積された非構造化テキストを扱うデータ分析担当者が、要約や分類を SQL から実行する場面で活用できます。選択できるモデルが増えることで、処理速度・コスト・出力品質のバランスを、用途に応じて選び分けやすくなります。
Looker(Google Cloud の BI・データ可視化プラットフォーム)の Looker Mobile (Legacy) アプリケーションについて、提供終了(廃止)の期日が 2027年1月31日 へ延期されることが告知されました。本項目は非推奨・廃止に関する告知であり、読者が「自社の対応をいつ、どう進めるか」を判断する必要があるため、以下の 3 つの観点で整理します。
自組織の利用状況に照らして、以下の観点をご確認いただくとよいでしょう。XIMIX として一律の対応を推奨するものではなく、状況に応じたご判断の材料としてご参照ください。
BigQuery の AI.CAUSAL_EFFECT 関数を使って、時系列データに対する特定の介入(intervention)の影響を定量化できるようになりました。介入とは、キャンペーンの実施や価格の変更など、意図的に加えた変化のことです。本機能は Preview(プレビュー)段階です。
マーケティング担当者や事業企画担当者が、「実施した販促キャンペーンは、売上にどれだけ寄与したのか」を確かめたい場面で活用できます。時系列の売上データに対して、キャンペーン開始という介入の影響を数値として取り出せるため、施策の前後で数字が動いた要因を、勘や経験だけに頼らず評価しやすくなります。価格改定やサービス仕様の変更といった、時期を特定できる施策の効果検証にも適用できます。
BigQuery の ML.METRICS 関数を使って、機械学習の分類(カテゴリの判定)や回帰(数値の予測)に関する評価指標を算出できるようになりました。実測値と予測値を含むテーブルやクエリであれば対象にでき、保存済みのモデルを作成・参照する必要がありません。本機能は Preview(プレビュー)段階です。
データ分析担当者が、外部のツールや他システムで作成された予測結果の精度を BigQuery 上で確かめたい場面で活用できます。予測値と実測値が揃ったテーブルさえあれば評価指標を算出できるため、モデルの作成元を問わず、同じ物差しで精度を比較できます。複数のベンダーやチームが提供する予測結果を横並びで評価したい場面にも適しています。
BigQuery の会話型分析が、ML.CORRELATION 関数をサポートしました。テーブル内の対象列(target column)と、1 つ以上の指標列(metric columns)との間の統計的な相関を計算できます。相関とは、2 つの数値がどの程度連動して動くかを示す指標です。本機能は Preview(プレビュー)段階です。
事業部門の企画担当者が、「解約率と関係が深そうな指標はどれか」「売上と連動している行動指標は何か」といった、当たりを付ける段階の分析を行いたい場面で活用できます。会話型分析の画面から自然言語で問いかけられるため、複数の指標をひとつずつ SQL で確認していく手間を省けます。分析の初期段階で、注目すべき指標を絞り込む用途に向いています。
Google Cloud Managed Service for Apache Kafka(フルマネージドの Apache Kafka サービス)のクラスタを、パブリッククラスタとして構成できるようになりました。これにより、クライアントアプリケーションがパブリックインターネット経由で接続できるようになります。Apache Kafka は、大量のデータをリアルタイムに受け渡しするためのメッセージング基盤です。
データ基盤の担当者が、Google Cloud のネットワーク外にあるシステムから Kafka へデータを送りたい場面で活用できます。オンプレミス環境のシステムや、他のネットワークで稼働するアプリケーションからのデータ取り込みを検討する際、専用線や VPN の構成を前提としない接続の選択肢が加わります。
なお、パブリックインターネット経由の接続を伴う構成のため、導入にあたっては公式ドキュメントに記載された接続方法と、自社のセキュリティポリシーとの整合をご確認ください。
Looker extension for VS Code(コードエディタ Visual Studio Code 向けの Looker 拡張機能)が一般提供(GA)になりました。ローカル環境での LookML(Looker でデータモデルを定義するための言語)開発に加え、Model Context Protocol(MCP)を利用した AI 支援による「vibe coding」が可能になります。MCP は、AI アシスタントが外部のツールやデータへ接続するための共通仕様です。
Looker のデータモデルを開発する担当者が、使い慣れた VS Code 上で LookML の編集からブランチ管理までを一貫して進めたい場面で活用できます。ローカルの Git ブランチと Looker の開発モードが同期されるため、コードの変更とダッシュボード上での確認を行き来する作業がスムーズになります。また、MCP を通じた AI 支援により、LookML の記述を対話的に進める開発スタイルも選べます。
2026年9月7日〜9月13日のデータ分析カテゴリは、BigQuery の分析系 AI 関数が一気に拡充された週でした。なかでも AI.CAUSAL_EFFECT(Preview) は、時系列データに対する施策の影響を定量化できる関数であり、「やってみたが効果が分からない」という状態から一歩踏み出すための手がかりになります。ML.METRICS(Preview) は保存済みモデルなしに評価指標を算出でき、予測結果の品質を共通の物差しで確かめる用途に向いています。さらに会話型分析が AI.PREDICT と ML.CORRELATION に対応したことで、SQL を書かずに予測や相関の確認を進められる範囲が広がりました。
基盤・ガバナンス面では、Knowledge Catalog のデータドメイン(Preview)がリソース整理の新しい手段となり、Managed Service for Apache Kafka のパブリッククラスタ対応がデータ連携のネットワーク構成に選択肢を加えています。開発の現場では Looker の VS Code 拡張機能が GA となり、LookML 開発を標準的なソフトウェア開発のプロセスに寄せやすくなりました。一方で Looker Mobile (Legacy) の廃止期日が2027年1月31日へ延期された点は、猶予が生まれた今のうちに移行計画を整理しておきたい告知です。いずれも自組織の状況に照らしてご判断いただくとよいでしょう。
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