はじめに
Google Cloud の AI 関連サービスは、2026年7月下旬も企業向け AI アシスタントの機能拡充とデータ基盤の強化が続きました。今回は Gemini Enterprise の思考プロセスの可視化(Transparent thinking)の一般提供(GA)や Microsoft Teams 連携の GA、Cortex Framework の新バージョン v7、コンタクトセンター(CCaaS)の 5.2 リリース、自然言語で gcloud コマンドを実行できる MCP サーバーの提供などが中心となりました。
本記事では、2026年7月27日〜8月2日に発表された Google Cloud AI カテゴリの主要トピックを、リリース日順に解説します。Gemini Enterprise の透明性向上や外部データ連携、SAP データ活用を支える Cortex Framework の刷新、コンタクトセンターの機能追加と多数の不具合修正、開発者向けの MCP サーバーまで取り上げます。
経営層の方は「AI 活用の選択肢が広がりつつ、データ基盤や業務プロセスの整備も進んでいる」という視点で、IT 担当者の方は「どの機能が GA になり、どのバージョンで何が変わり、何を確認すべきか」という視点で読み進めると、導入・運用判断に役立つはずです。
| 対象期間 |
2026年7月27日〜2026年8月2日 |
| 対象製品 |
Google Cloud |
| 対象カテゴリ |
AI |
| アップデート件数 |
5件(主要トピック) |
今回のアップデート一覧
アップデート詳細
1. Gemini Enterprise — 思考プロセスの可視化(Transparent thinking)が GA
Gemini Enterprise(企業向け AI アシスタント・エージェントプラットフォーム)で、AI アシスタントの思考プロセスをリアルタイムに表示する Transparent thinking が一般提供(GA)になりました(2026年7月27日)。チャット中に、アシスタントがツールやデータソースを呼び出す前に、どのように考え・計画しているかが画面に表示されます。
🔍 何が変わったのか
- リアルタイムの推論・計画の表示: アシスタントが回答を組み立てる過程で、どう考えているかを画面上で確認できるようになりました
- ツール活動の展開表示: 思考フェーズと最終回答の間で行われたツールの動作を、展開できるセクションで確認できます
- 体感速度の改善: 最初のトークンが表示されるまでの時間(TTFT)が短縮され、全体の応答時間を増やさずに体感待ち時間の改善が図られています
💼 こんな場面で活用できます(ユースケース)
Gemini Enterprise を業務の調査や社内情報の検索に使う担当者が対象です。AI がどの情報源をどう参照して回答したかを画面で追えるため、回答の根拠を確認しながら業務に取り入れられます。回答が表示され始めるまでの待ち時間の体感が改善され、対話のテンポも保ちやすくなります。
✨ 導入メリット
- AI の推論過程やツールの活動が可視化され、回答の根拠を確認しやすくなります
- 最初のトークン表示までの時間が短縮され、体感待ち時間の改善につながります
- 透明性が高まることで、社内での AI 活用に対する納得感を得やすくなります
📚 公式ソース
2. Gemini Enterprise — Microsoft Teams フェデレーテッドコネクタが GA
Gemini Enterprise で、Microsoft Teams と連携するためのフェデレーテッドデータストアが一般提供(GA)になりました(2026年7月28日)。Microsoft Teams を接続することで、チャネル・チャット・チーム・メッセージを検索・照会でき、対応するアクションをアシスタントから直接実行できます。
🔍 何が変わったのか
- Microsoft Teams のフェデレーテッド接続: Teams のチャネル・チャット・チーム・メッセージを Gemini Enterprise から照会できるようになりました
- アシスタントからのアクション実行: サポートされているアクションを、アシスタント上から直接実行できます
💼 こんな場面で活用できます(ユースケース)
Microsoft Teams を社内コミュニケーションの中心に使っている組織の担当者が対象です。過去のチャネルやチャットの内容を Gemini Enterprise から横断的に検索し、必要な情報を素早く見つけたい場面で活用できます。ツールを切り替えずに、アシスタントから Teams 関連の操作を進められます。
✨ 導入メリット
- Teams 上に蓄積された会話やメッセージを AI から検索でき、情報探索の手間を減らせます
- アシスタントから直接アクションを実行でき、ツール間の行き来を減らせます
- 既存の Microsoft 環境を活かしながら、AI 活用の対象範囲を広げられます
📚 公式ソース
3. Cortex Framework — バージョン 7 が GA、モジュール型アーキテクチャと AI 対応データ製品
Google Cloud Cortex Framework(SAP などの業務データを BigQuery で分析・活用するためのソリューション基盤)の バージョン 7 が一般提供(GA)になりました(2026年7月30日)。v7 では、モジュール型のデプロイアーキテクチャ、Dataform を使ったデータ連携の簡素化、BigQuery と Knowledge Catalog 連携による AI 対応データ製品が導入されています。
✨ 使えるようになる機能
- エージェント型のデータ製品ビルダースキル: 自然言語でデータ製品の作成・カスタマイズを自動化できます
- Knowledge Catalog 連携: デプロイした Cortex Framework のデータ製品と付随メタデータを、Knowledge Catalog に自動同期し、発見とガバナンスに活用できます
- SAP ERP 向けデータ製品の拡充: SAP ECC・SAP S/4HANA 向けに提供されるデータ製品が拡充されました
- SAP Business Data Cloud(SAP BDC)データ製品への対応: SAP BDC のデータ製品を Cortex Framework に登録して活用できます
- ソリューションサンプルの拡充: SAP ERP・SAP BDC 向けの消費用データ製品サンプルを、Cortex 管理のデータ製品上に簡単に展開できます
- v6 互換(SAP レポート): v7 アーキテクチャ上で v6 提供の SAP BigQuery データモデルを利用でき、v6 の Looker レポートを使い続けながら移行を進める選択肢が用意されています
- 可観測性(observability)の強化: エラーレポートとパイプライン監視が強化されました
⚠️ 使えなくなる機能 / 変更点
- v6 からのアップグレード: v7 は新しいメジャーバージョンのため、自動移行の経路がない破壊的変更を含むと告知されています。v6 の利用者向けには、SAP レポートの v6 互換コンテンツが提供されています
- v7 プレビューからのアップグレード: 構成モデルの改善に伴い、構成ファイルの再作成と再デプロイが必要と案内されています
- テレメトリの既定有効化: v7 には匿名化されたデプロイ統計を収集するテレメトリが含まれ、既定で有効です。いつでもオプトアウト(無効化)できると案内されています
🤔 判断観点
- 影響範囲: SAP データを Cortex Framework で BigQuery に取り込み、分析・レポートに活用している組織が主な確認対象です
- 検証推奨事項: v6 からの移行では自動移行経路がないため、v6 互換コンテンツの適用範囲や既存 Looker レポートへの影響を、公式ドキュメントと照らして確認する運用が考えられます
- ガバナンス: テレメトリが既定で有効なため、社内のデータ取り扱い方針に照らしてオプトアウトの要否を検討する余地があります
📚 公式ソース
4. Google Cloud MCP servers — 自然言語で gcloud を実行できる Cloud CLI リモート MCP サーバー
Google Cloud MCP servers で、Cloud CLI リモート MCP サーバーが提供されました(2026年7月30日)。自然言語のプロンプトを AI アプリケーションに送ることで、コマンドラインインターフェース(CLI)のコマンドを代わりに実行できる安全な環境を提供します。実行できるのは gcloud コマンドに限られます。
🔍 何が変わったのか
- Cloud CLI リモート MCP サーバーの提供: 自然言語のプロンプトから gcloud コマンドを実行できる、安全な環境が用意されました
- 対象コマンド: 実行できるのは gcloud コマンドに限られます
💼 こんな場面で活用できます(ユースケース)
AI アプリケーションや対話型ツールから Google Cloud の操作を行いたい開発者・IT 担当者が対象です。コマンドの構文を逐一調べなくても、自然言語で指示を出して gcloud コマンドの実行を進める、といった使い方ができます。
✨ 導入メリット
- 自然言語から gcloud コマンドを実行でき、CLI 操作の入り口をシンプルにできます
- 実行対象が gcloud コマンドに限定された安全な環境として提供されます
- AI アプリケーションと Google Cloud 操作を組み合わせる選択肢が広がります
📚 公式ソース
5. Google Cloud CCaaS — バージョン 5.2 リリース、スマート処理コードやメール転送・不在検知の追加と多数の不具合修正
Google Cloud Contact Center as a Service(CCaaS)で、バージョン 5.2 がリリースされました(2026年7月30日)。あわせて、対応終了時に処理コードを AI が自動提案する Smart disposition(スマート処理コード)、添付ファイル付きのメール転送、発信キャンペーン向けの留守番電話・不在検知(AMD)、メールセッション取得用の新エンドポイントの追加と、多数の不具合修正が行われました。
✨ 使えるようになる機能
- Smart disposition(スマート処理コード): セッション終了時に処理コードを AI が自動提案する新機能です。エージェントの手作業を減らし、データの一貫性向上を図ります。有効化すると、エージェント画面の「Disposition」欄に提案が表示されます。管理者は Wrap-up 設定内の各所に新設された「Smart Disposition」トグルから設定します
- 添付ファイル付きメール転送: エージェントがメールアダプターから外部宛先へメールを転送でき、元メールの添付ファイルが自動的に含まれます(送信前に個別に外すことも可能)。元メールは割り当て先のキューに、状態を変えずに残ります。メールアダプターに新しい「Forward」ボタンが追加されました
- 進行型キャンペーン向けの留守番電話・不在検知(AMD): 進行型(progressive)の発信キャンペーンで AMD がサポートされました。通話音声を背後で分析して、生身の相手か留守番電話・ボイスメールかを判定し、留守番電話等を検知した場合は通話を終了して次の連絡先へ進みます
- メールセッション・メッセージ取得用の新エンドポイント: 外部システムがメール対応の解析済み内容(送信者・宛先・件名・本文・添付メタデータ)を取得できる、読み取り専用の 2 つのエンドポイントが追加されました
⚠️ 使えなくなる機能 / 変更点
- 多数の不具合修正: セッション異常終了後に音声通話が仮想エージェント状態のまま止まる問題、過負荷キューへの転送キャンセル時に発信者が自動メニューのループに取り残される問題、通話アダプターとエージェントデスクトップで発信通話の通話時間が一致しない問題、感情分析を無効にしても感情スコアが表示される問題、大量データ取得時の接続タイムアウトなど、多数の問題を修正しました
- セキュリティ関連の修正: メールリクエストの CC・BCC 欄の機微情報がシステムログに表示される問題や、一括ユーザーアップロードで権限のないロール割り当てが許可される問題が修正されています
- デフォルト動作の破壊的変更や機能廃止は、今回の公開情報には含まれていません。バージョン 5.2 の適用タイミングは、選択しているデプロイスケジュールにより異なります
🤔 判断観点
- 影響範囲: CCaaS でメールチャネル、通話後処理、発信キャンペーン、Salesforce・ServiceNow・Kustomer などの外部連携を利用しているコンタクトセンターが主な確認対象です
- ロールアウト戦略: バージョン 5.2 の適用時期は選択中のデプロイスケジュールに依存するため、公式のデプロイスケジュール情報を確認する運用が考えられます
- 検証推奨事項: Smart disposition や AMD を有効化する場合は、提案される処理コードや不在検知の判定が現場の運用に合うかを確認することが検討対象となります
📚 公式ソース
まとめ
2026年7月27日〜8月2日の AI カテゴリでは、Gemini Enterprise の思考プロセス可視化(Transparent thinking)GA や Microsoft Teams 連携 GA など、企業向け AI アシスタントの透明性と連携範囲を広げるアップデートが充実しました。あわせて、SAP データ活用を支える Cortex Framework v7 や コンタクトセンター(CCaaS)5.2 の機能追加も進み、業務現場での AI・データ活用の幅が広がっています。
IT 担当者の視点では、Cortex Framework v7 の破壊的変更と移行方針、テレメトリの既定有効化、CCaaS 5.2 の適用スケジュールと新機能の検証が、社内周知や設定・移行の確認ポイントです。経営の視点では、思考プロセスの可視化や Teams 連携が AI 活用への納得感と裾野を広げる材料となります。自組織の AI 活用方針・利用中の機能・データガバナンス要件に照らし、これらの評価や対応の検討を進めていただくとよいでしょう。
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