はじめに
Google Cloud の AI 関連サービスは、2026年7月中旬も新機能の追加と製品整理が続きました。今回は Gemini Enterprise の新データストア追加やモバイルアプリの BYOID 一般提供(GA)、NotebookLM Enterprise の改称、Gemini Enterprise Agent Platform の Memory Bank 機能 GA、コンタクトセンター(CCaaS)の機能追加、そして Document AI の新モデル追加などが中心となりました。
本記事では、2026年7月13日〜7月19日に発表された Google Cloud AI カテゴリの主要トピックを、リリース日順に解説します。Agent Platform Workbench の Secure Boot 対応、Colab Enterprise のセキュリティ速報、Gemini Enterprise のエージェント削除・データストア追加・改称・BYOID、CCaaS の機能追加と不具合修正、Document AI の新モデルまで取り上げます。
経営層の方は「AI 活用の選択肢と統制の両面が着実に広がっている」という視点で、IT 担当者の方は「どの機能が GA になり、どの機能が削除・改称され、何を確認すべきか」という視点で読み進めると、導入・運用判断に役立つはずです。
| 対象期間 |
2026年7月13日〜2026年7月19日 |
| 対象製品 |
Google Cloud |
| 対象カテゴリ |
AI |
| アップデート件数 |
9件(主要トピック) |
今回のアップデート一覧
アップデート詳細
1. Agent Platform Workbench — GPU 付きインスタンスで Secure Boot に対応、イメージ更新
Agent Platform Workbench(クラウド型のノートブック・開発環境)で、GPU を接続したインスタンスでも Secure Boot(セキュアブート)を有効化できるようになりました(2026年7月13日)。あわせて、インスタンス用イメージの更新もリリースされています。Secure Boot は、起動時に署名された正規のソフトウェアだけを読み込ませ、不正な改ざんを防ぐ仕組みです。
🔍 何が変わったのか
- GPU 付きインスタンスで Secure Boot に対応: workbench-instances-2603 の VM イメージと workbench-container-2606 のカスタムコンテナでサポート。Secure Boot 対応の署名済み NVIDIA GPU ドライバーを含むため、Secure Boot 環境下でもドライバーが読み込まれます
- イメージリリース: 20260712-2130-rc0(workbench-instances-2603 / Debian 12)で最新パッケージの取り込みと cupy インストール不具合の修正、M144(workbench-instances / Debian 11)で GPU インスタンスの JupyterLab が到達不能(HTTP 524)になる競合状態の修正などを実施
💼 こんな場面で活用できます(ユースケース)
GPU を使う機械学習・データ分析の開発環境を、セキュリティ要件を満たしつつ運用したいデータサイエンティストや IT 管理者が対象です。これまで Secure Boot と GPU の併用が難しかった場面でも、両立した環境でノートブック開発を進められます。
✨ 導入メリット
- GPU を使う開発環境でも Secure Boot を有効化でき、起動時の改ざん対策とアクセラレーター活用を両立できます
- イメージ更新により、既知の不具合が解消され、環境の安定性が向上します
📚 公式ソース
2. Colab Enterprise — セキュリティ速報 GCP-2026-047 の告知
Colab Enterprise(クラウド型 Jupyter ノートブック)を含む複数サービスに関するセキュリティ速報が告知されました(2026年7月13日)。BigQuery・Dataform・Colab Enterprise のリポジトリで、認可の欠落(Missing Authorization)に関する脆弱性が発見されたという内容です。
✨ 使えるようになる機能
- 本トピックはセキュリティ速報の告知であり、公式にハイライトされた新機能はありません。対応の詳細は速報 GCP-2026-047 に記載されています
⚠️ 使えなくなる機能 / 変更点
- 脆弱性の内容: BigQuery・Dataform・Colab Enterprise のリポジトリで、認証済みの攻撃者が権限昇格を行い、テナントをまたいだリポジトリの乗っ取り(cross-tenant repository takeover)を実行し得る認可欠落の脆弱性が発見されたと告知されています
- 具体的な対応内容・影響範囲・対処手順は、公式のセキュリティ速報 GCP-2026-047 を参照してください
🤔 判断観点
- 影響範囲: BigQuery・Dataform・Colab Enterprise のリポジトリ機能を利用している組織が確認対象です
- 緊急性: セキュリティ速報の深刻度や推奨される対応の要否は、GCP-2026-047 の記載内容を一次情報として確認することが検討対象となります
- 検証推奨事項: 該当機能の利用状況とアクセス権限の設定を棚卸しし、速報に示される対応方針との整合を確認する運用が考えられます
📚 公式ソース
3. Gemini Enterprise — Idea Generation エージェントの削除
Gemini Enterprise(企業向け AI アシスタント・エージェントプラットフォーム)で、パブリックプレビュー中だった Idea Generation(アイデア生成)エージェントが、2026年7月14日の週から削除されました。今後、アイデア出しはアシスタントで直接行う形になります。
✨ 使えるようになる機能
- 本トピックはエージェントの削除に関する告知であり、公式にハイライトされた新機能はありません。代替として、次の機能が案内されています
- 一般的なブレインストーミングや発想には、Gemini Enterprise アプリのアシスタントを利用
- 深い探索や仮説生成には、Deep Research または Co-Scientist エージェントを利用
⚠️ 使えなくなる機能 / 変更点
- Idea Generation エージェントの削除: 2026年7月14日の週から、パブリックプレビュー中だった Idea Generation エージェントが削除されました。従来このエージェントで行っていたアイデア出しは、アシスタントや Deep Research・Co-Scientist へ切り替える必要があります
🤔 判断観点
- 影響範囲: Idea Generation エージェントを利用していたユーザー・部門が対象です。利用していない場合、直接の影響はありません
- 検証推奨事項: 従来の用途に応じて、アシスタント・Deep Research・Co-Scientist のいずれへ移すのが適切かを整理し、社内の利用ガイドを更新する運用が考えられます
📚 公式ソース
4. Google Cloud CCaaS — Manual wrap-up・チャット向け DAP・Agent Assist hub の追加と多数の不具合修正
Google Cloud Contact Center as a Service(CCaaS)で、通話後処理を柔軟に扱う Manual wrap-up、チャットを外部 API 起点でルーティングする Direct Access Point(DAP)、ナレッジ支援とコーチングを統合する Agent Assist hub が追加されました。あわせて、次バージョンのプレリリースノートの告知と、Agent Desktop まわりの多数の不具合修正が行われました(2026年7月14日)。
✨ 使えるようになる機能
- Manual wrap-up: エージェントが、過去の対応に対して通話後処理(wrap-up)時間・処理コード(disposition code)・メモを後から割り当てられるように設定できます。完了済みセッションの処理コードやメモの修正も許可できます。設定すると、エージェントの操作画面に「Previous Sessions」の一覧が表示されます
- チャット向け Direct Access Point(DAP): 設定した外部 API のレスポンスに基づき、着信チャットを特定のキューへ自動的にルーティングできます。エンドユーザーがキューのメニューから選ぶ手間がなくなります
- Agent Assist hub: 生成 AI によるナレッジ支援とエージェントコーチングを 1 つの統合パネルにまとめた新機能です。既存のナレッジアシストパネルと同等の機能をナレッジアシストモジュールとして提供します
- 次バージョンのプレリリースノート告知: 次バージョンで想定される新機能が事前に公開されました
⚠️ 使えなくなる機能 / 変更点
- Agent Assist hub 適用時の注意: 更新の瞬間にサインイン中だったエージェントは、新しいナレッジアシストモジュールが一時的に動作しなくなります。いったんサインアウトして再度サインインすると復旧します。更新は自動で行われ、設定変更は不要です
- 多数の不具合修正: キュー間移動時にメールが「Transferring」状態のまま止まる問題、キューに入った通話・チャットが待機中のエージェントへ提供されない問題、通話終了後に処理パネルが表示されない問題、CSV 一括インポート時のチーム・スキルの誤割り当て、Salesforce 連携での同時リクエストによる情報欠落、Zendesk への通話録音リンク重複、wrap-up 時間の集計誤りなど、多数の問題を修正しました
- デフォルト動作の破壊的変更や機能廃止は、今回の公開情報には含まれていません
🤔 判断観点
- 影響範囲: CCaaS でチャットチャネル、通話後処理、ナレッジアシスト、Salesforce・Zendesk 連携を利用しているコンタクトセンターが主な確認対象です
- 検証推奨事項: DAP を導入する場合は API レスポンスに基づくキュー振り分けが想定どおり動作するか、Agent Assist hub 適用後にエージェントの再サインインが必要になる旨を運用手順に反映できるか、の確認が考えられます
- ロールアウト戦略: プレリリースノートで告知された機能は将来バージョンの想定内容であり、実際の適用時期・仕様は正式リリース時に確認する運用が考えられます
📚 公式ソース
5. Gemini Enterprise — 新しいデータストアと新アクションのサポート(Preview)
Gemini Enterprise で、外部データソースと連携するための新しいデータストアが多数追加され、一部データストアでは新しいアクションのサポートも加わりました(2026年7月15日、いずれもパブリックプレビュー)。データストアは、社内外のデータを Gemini Enterprise の検索・回答の対象として取り込む仕組みです。
🔍 何が変わったのか
- 新しいデータストア(Public Preview): Aiwyn Tax、AllTrails、Autodesk Product Help、AWS Marketplace、Courtroom5、pg-aiguide、Taskrabbit、Twilio Docs、Viator、ZoomInfo が利用可能に
- 新しいアクションのサポート(Public Preview): Freshservice(チケットの更新)、Zoho Desk(チケットコメントの更新)、ZoomInfo(フィードバックの送信)に対応
- Jira Data Center データストアのアクションフィルタ対応(Preview): フェデレーション型 Jira Data Center データストアに設定したフィルタが、検索クエリとアクション実行の両方に適用されます。対象外データへの更新・取得は失敗するか結果を返しません
💼 こんな場面で活用できます(ユースケース)
社内で利用している外部 SaaS やナレッジソースを Gemini Enterprise に接続し、横断的に検索・回答させたい業務担当者・IT 担当者が対象です。たとえば ITSM ツール(Freshservice・Zoho Desk)と連携すれば、チケットの検索だけでなく更新といった操作もアシスタント経由で行えます。Jira Data Center のフィルタ対応により、アクセスできるプロジェクトの範囲を絞った運用も可能になります。
✨ 導入メリット
- 連携できる外部データソースが増え、社内の情報を横断的に活用できる範囲が広がります
- 検索だけでなくアクション(チケット更新など)にも対応し、アシスタント経由で業務操作まで進められます
- Jira のフィルタ適用により、アクセス範囲を統制しながらデータ活用を進められます
📚 公式ソース
6. Gemini Enterprise Agent Platform — Memory Bank のメモリプロファイルが GA
Gemini Enterprise Agent Platform(ML/生成 AI の統合プラットフォーム)の Memory Bank で、メモリプロファイル(memory profiles)が一般提供(GA)になりました(2026年7月15日)。メモリプロファイルは、固定のスキーマを持つ構造化データを LLM で生成・更新する仕組みです。
🔍 何が変わったのか
- メモリプロファイルが GA: 静的なスキーマを持つデータ構造を、LLM を使って生成・更新できます
- 固定スキーマを定義することで、エージェントが変化する情報へ低レイテンシで即座にアクセスできます。セッション中に高コストな検索処理を実行する必要がありません
💼 こんな場面で活用できます(ユースケース)
ユーザーの属性や状況といった「変化する情報」を踏まえて応答する AI エージェントを構築・運用する開発者が対象です。プロファイルとして構造化しておくことで、会話のたびに検索をかけずとも、エージェントが必要な情報へ素早くアクセスできます。
✨ 導入メリット
- 固定スキーマの構造化プロファイルにより、エージェントが最新情報へ低レイテンシでアクセスでき、応答の速さと一貫性の向上に寄与します
- セッション中の高コストな検索処理を避けられ、運用コストや応答遅延の抑制につながります
📚 公式ソース
7. Gemini Enterprise — NotebookLM Enterprise が「Gemini Notebook Enterprise」へ改称
Gemini Enterprise で、NotebookLM Enterprise が Gemini Notebook Enterprise へ改称されました(2026年7月16日)。名称は変わりますが、製品の機能は同じで、API も同じエンドポイントを使い続けます。
✨ 使えるようになる機能
- 本トピックは名称変更(リブランド)であり、公式にハイライトされた新機能はありません。製品機能は従来どおりで、API のエンドポイントにも変更はありません
⚠️ 使えなくなる機能 / 変更点
- 名称の変更: Gemini Enterprise の Web アプリと管理コンソール上の表示名が「Gemini Notebook Enterprise」に変わります。ただし、サブスクリプションのページでは引き続き「NotebookLM Enterprise」と表示されます
- 機能・API エンドポイントの変更や機能廃止は、今回の公開情報には含まれていません
🤔 判断観点
- 影響範囲: NotebookLM Enterprise を利用している組織のユーザー・管理者が対象です。UI 上の表示名が変わるため、社内マニュアルや案内の表記更新が検討対象となります
- 検証推奨事項: API を利用している場合、エンドポイントは変更されないため実装変更は不要ですが、社内ドキュメントや周知資料の名称を揃える運用が考えられます
📚 公式ソース
8. Gemini Enterprise — モバイルアプリの BYOID(第三者 ID 連携)が GA
Gemini Enterprise のモバイルアプリで、Bring Your Own Identity(BYOID)が一般提供(GA)になりました(2026年7月16日)。第三者の ID プロバイダー(社内で使う認証基盤)を利用している組織が、モバイルアプリを allowlist なしで接続できるようになります。
🔍 何が変わったのか
- モバイルアプリの BYOID が GA: 第三者 ID プロバイダーを利用する組織向けに、Gemini Enterprise のモバイルアプリが一般提供されました
- サポート対象の第三者 ID プロバイダーへ、allowlist に登録されることなくモバイルアプリを接続できます
💼 こんな場面で活用できます(ユースケース)
社内で第三者の ID プロバイダー(シングルサインオン基盤など)を運用している企業の IT 管理者・従業員が対象です。既存の認証基盤を使ったまま、モバイル端末から Gemini Enterprise を利用でき、外出先やモバイルワーク環境でも AI アシスタントを活用できます。
✨ 導入メリット
- 既存の第三者 ID 基盤を使ってモバイルアプリを利用でき、認証まわりの追加運用を抑えられます
- allowlist の登録を待たずに接続でき、モバイルでの AI 活用を素早く展開できます
📚 公式ソース
9. Document AI — Gemini 3.5 Flash 搭載の Custom extractor 新モデルが Preview
Document AI(非構造化文書の解析・構造化サービス)で、Gemini 3.5 Flash を基盤とする Custom extractor(カスタム抽出)の新しい事前学習済み基盤モデルが、プレビューで利用できるようになりました(2026年7月17日)。Custom extractor は、独自の文書から必要な項目を抽出するための機能です。
🔍 何が変わったのか
- Custom extractor の新モデルが Preview: Gemini 3.5 Flash LLM を基盤とする事前学習済み基盤モデル(pretrained-foundation-model-v3.5-2026-05-26)が追加されました
- このプロセッサバージョンは、米国(US)と欧州(EU)で ML 処理に対応します
💼 こんな場面で活用できます(ユースケース)
請求書・契約書・申込書などの独自フォーマットの文書から、必要な項目を自動抽出したい業務担当者・開発者が対象です。経理部門が多様な様式の請求書から金額や日付を抽出する、といった文書処理の自動化に活用できます。
✨ 導入メリット
- Gemini 3.5 Flash を基盤とする新しいモデルを、カスタム抽出の選択肢として利用できます
- US・EU での ML 処理に対応し、処理地域の要件に配慮しながら文書処理を進められます
📚 公式ソース
まとめ
2026年7月13日〜7月19日の AI カテゴリでは、Gemini Enterprise の新データストア追加やモバイル BYOID の GA、Gemini Enterprise Agent Platform の Memory Bank メモリプロファイル GA など、AI 活用の選択肢を広げるアップデートが充実しました。あわせて Document AI の新モデル追加や CCaaS の機能追加も進み、業務現場での活用の幅が広がっています。
IT 担当者の視点では、Idea Generation エージェントの削除や NotebookLM Enterprise の改称、Colab Enterprise を含むセキュリティ速報(GCP-2026-047)が、社内周知や設定・運用の確認ポイントです。経営の視点では、モバイル対応やデータストア拡充が AI 活用の裾野を広げる材料となります。自組織の AI 活用方針・利用中の機能・データガバナンス要件に照らし、これらの評価や対応の検討を進めていただくとよいでしょう。
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