コラム

【入門編】Googleフォームで実現するチームのタスク管理|依頼の抜け漏れを防ぎ業務を効率化

作成者: XIMIX Google Workspace チーム|2025,09,25

はじめに

「あの件、どうなっていますか?」といった確認のやり取りや、口頭・メールでの雑多な依頼によって、本来の業務が中断されてしまうことはありませんか。特に組織が大きくなるほど、誰がどのタスクを抱え、進捗がどうなっているのかを把握するのは困難になり、依頼の抜け漏れや対応遅延といった問題が顕在化します。

多くの企業がタスク管理ツールの導入を検討しますが、「機能が複雑すぎる」「コストが見合わない」「現場に定着しない」といった理由で頓挫するケースも少なくありません。

本記事では、多くの企業がすでに導入しているGoogle Workspaceの標準機能である「Googleフォーム」を活用し、シンプルかつ効果的なチームのタスク管理基盤を構築する方法を解説します。単なる機能紹介に留まらず、中堅・大企業が陥りがちな課題を乗り越え、業務効率化とDXの第一歩を踏み出すための実践的なポイントを、専門家の視点からご紹介します。

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なぜ、シンプルなタスク管理が求められるのか?

高度な機能を持つプロジェクト管理ツールは数多く存在しますが、なぜ多くの組織でタスク管理は依然として大きな課題なのでしょうか。その背景には、中堅・大企業特有の構造的な問題が潜んでいます。

①ツール乱立と情報サイロ化が引き起こす非効率

部門ごとに最適化されたツールを導入した結果、組織全体で見ると情報が分散し、かえって非効率になっているケースは珍しくありません。チャットツール、メール、Excelファイルなど、依頼や報告の経路が複数存在することで、情報はサイロ化し、タスクの全体像を把握することが極めて困難になります。結果として、管理職は進捗確認に多くの時間を割かれ、現場は報告業務に追われるという悪循環に陥ります。

②中堅・大企業が見落としがちな「依頼業務」の管理コスト

プロジェクト化された大規模なタスクは管理されていても、日常的に発生する細かな「依頼業務」は、担当者個人の記憶やローカルのメモに頼りがちです。例えば、情報システム部へのPC設定依頼や、総務部への備品発注依頼などがこれにあたります。これらの管理されていないタスクこそが、抜け漏れや対応遅延の温床であり、組織全体の生産性を静かに蝕んでいくのです。

Googleフォームがタスク管理の入り口として最適な理由

こうした課題に対し、Googleフォームは驚くほど有効な解決策となり得ます。なぜなら、多くの従業員が使い慣れたインターフェースを持ち、特別なスキルを必要とせずに導入できるからです。

誰でも使える手軽さとGoogle Workspaceとの親和性

Googleフォームの最大の利点はそのシンプルさです。直感的な操作で誰でも簡単に依頼用のフォームを作成でき、回答者はWebブラウザから手軽に入力できます。また、Google Workspace の一部であるため、スプレッドシートやGmail、Google Chatといった他のツールとの連携が極めてスムーズです。

依頼内容を標準化し、抜け漏れを根本から防ぐ

Googleフォームを使うことで、「いつ」「誰が」「何を」「いつまでに」といったタスクに必要な情報を、依頼の段階で標準化できます。これにより、依頼内容の曖昧さがなくなり、担当者が後から情報を確認する手間が削減されます。すべての依頼がフォーム経由に統一されることで、口頭やメールでの「言った言わない」問題や、依頼そのものの抜け漏れを構造的に防ぐことが可能です。

低コストで始められるスモールスタートの優位性

新たな専用ツールを導入するには、ライセンス費用や導入コンサルティングなど、相応のコストと時間が必要です。しかし、Googleフォームであれば、多くの場合は既存のGoogle Workspaceライセンスの範囲内で利用でき、追加コストなしで始めることができます。まずは特定の部門やチームでスモールスタートし、効果を検証しながら全社に展開していくといった、柔軟な導入戦略が可能です。

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【3ステップで構築】Googleフォームを活用したタスク管理の基本フロー

ここでは、実際にGoogleフォームとスプレッドシートを連携させたタスク管理の基本的な仕組みを3つのステップで解説します。

Step1: 依頼内容を標準化するフォームの作成

まず、タスク依頼の受付窓口となるGoogleフォームを作成します。以下の項目を参考に、管理したい内容に合わせてフォームを設計しましょう。

  • 依頼日: (自動収集)

  • 依頼者: (自動収集、または記述式)

  • 件名: (記述式)

  • 依頼内容詳細: (段落)

  • 希望納期: (日付)

  • 優先度: (選択式:高・中・低)

  • カテゴリ: (選択式:問い合わせ、修正依頼、新規作成など)

ポイント: 誰が入力しても必要な情報が揃うように、できるだけ選択式の項目を活用し、自由記述を減らすことが依頼内容を標準化するコツです。

Step2: 回答をリアルタイムに集約するスプレッドシート連携

次に、フォームの「回答」タブから、回答データをリアルタイムに出力するGoogleスプレッドシートを新規作成します。この操作は数クリックで完了し、以降、フォームに新しい回答が送信されるたびに、スプレッドシートの新しい行にデータが自動で追加されていきます。このスプレッドシートが、チームの共有タスクリスト(台帳)となります。

Step3: ステータス管理と担当者割り振りのルール設計

作成されたスプレッドシートに、手動で管理用の列を追加します。

  • ステータス: (例:未着手、対応中、完了、保留)

  • 担当者: (例:チームメンバーの氏名)

  • 完了日:

  • 備考:

チームメンバーはこのスプレッドシートを共有し、自分が担当するタスクのステータスを更新していきます。これにより、誰がどのタスクを、どのような状況で進めているのかが一覧で可視化され、マネージャーはチーム全体の進捗をリアルタイムに把握できます。

さらに高度な自動化へ:Google Workspace連携で実現するタスク管理の拡張

基本的なフローだけでも業務は効率化されますが、Google Workspaceの他のサービスと連携させることで、その効果を飛躍的に高めることができます。

Google Apps Script (GAS)で通知を自動化する

Google Apps Script (GAS) というプログラミング言語を使えば、定型的な作業を自動化できます。例えば、以下のような処理が可能です。

  • フォームが送信されたら、担当部署のメーリングリストやGoogle Chatのスペースに自動で通知する。

  • スプレッドシート上で「担当者」が割り振られたら、その担当者にメールで通知する。

  • 納期が近づいている未完了のタスクを、毎日定時にリストアップして管理者に通知する。

これらの自動化により、担当者の割り当て漏れや対応遅延を防ぎ、管理コストを大幅に削減できます。

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Google Chatへの通知連携でコミュニケーションを迅速化

メールでの通知は他のメールに埋もれてしまいがちですが、Google Chatと連携すれば、より迅速なコミュニケーションが可能です。新しいタスクが追加された際に、関連するチームのスペースに通知が飛ぶように設定すれば、チームメンバーは即座に依頼を認知し、必要に応じてチャット上でディスカッションを始めることができます。

Looker Studio (旧データポータル) で進捗状況を可視化・分析

タスク管理用のスプレッドシートにデータが蓄積されてきたら、BIツールであるLooker Studioと連携させることをお勧めします。Looker Studioを使えば、スプレッドシートのデータを基に、以下のようなダッシュボードを簡単に作成できます。

  • 担当者ごとのタスク件数と進捗状況

  • 依頼カテゴリ別の件数推移

  • タスク完了までにかかる平均日数

これらのデータを可視化・分析することで、特定の担当者への業務集中や、頻発している依頼の種類などを客観的に把握でき、リソース配分の最適化や業務プロセスの改善に繋げることができます。

成功の鍵は「形骸化させない」運用設計にあり

便利な仕組みを構築しても、それが使われなければ意味がありません。特に、組織全体で運用を定着させるには、ツール導入以上の工夫が求められます。

よくある失敗事例:ルールが浸透せず、Excel管理に逆戻り

多くの企業で聞かれるのが、「最初は使われたが、次第に誰もフォームを使わなくなり、結局元のメールや口頭での依頼に戻ってしまった」というケースです。原因は、運用ルールが複雑すぎたり、導入の目的が現場に共有されていなかったりすることにあります。ツールの導入そのものが目的化し、現場の負担を増やすだけの結果になっては本末転倒です。

組織で運用するための3つのポイント

この仕組みを形骸化させず、組織に定着させるためには、以下の3つのポイントが不可欠です。

  1. 目的の共有: なぜこの仕組みを導入するのか、それによって誰のどのような課題が解決されるのかを、経営層から現場の担当者まで全員で共有することが最も重要です。

  2. シンプルなルール: 最初から完璧を目指さず、まずは「すべての依頼はこのフォームから」という一点に絞るなど、誰でも守れるシンプルなルールから始めましょう。

  3. 継続的な改善: 運用を開始してから見えてくる課題(フォームの項目が分かりにくい、ステータスの定義が曖昧など)を定期的に吸い上げ、フォームや運用ルールを改善していくサイクルを回すことが定着の鍵です。

セキュリティと権限設定:企業利用で最低限押さえるべきこと

手軽に始められる一方、企業の機密情報や個人情報を取り扱う可能性がある場合は、セキュリティへの配慮が不可欠です。フォームのアクセス権限を組織内ユーザーに限定したり、回答結果が保存されるスプレッドシートの共有設定を適切に管理したりするなど、Google Workspaceが提供する管理機能を正しく理解し、設定することが重要になります。

XIMIXによる支援案内:確実な定着と高度な活用に向けて

ここまでご紹介したように、Googleフォームはタスク管理の強力なツールとなり得ます。しかし、自社だけでGASによる高度な自動化を構築したり、全社的な運用ルールを設計・浸透させたりするには、専門的な知識とノウハウが必要となる場面も少なくありません。

特に、既存の業務フローをどのように新しい仕組みに落とし込むか、といった上流工程の設計は、プロジェクトの成否を分ける重要なポイントです。

私たち『XIMIX』は、Google Cloudの専門家として、これまで多くの中堅・大企業の課題解決を支援してまいりました。その豊富な経験に基づき、お客様の業務内容を深く理解した上で、最適なタスク管理フローの設計から、GASやAppSheetを活用した高度なアプリケーション開発、そして最も重要な「組織への定着化」までをワンストップでご支援します。

「まずはどこから手をつければ良いか分からない」「より高度な自動化を実現したい」といったお悩みをお持ちでしたら、ぜひ一度、私たちにご相談ください。

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まとめ

本記事では、Googleフォームとスプレッドシートを起点とした、チームのタスク管理術について解説しました。この手法の最大の価値は、特別なツールを追加導入することなく、既存の環境で「依頼の受付」と「タスクリスト」を連動させ、業務の標準化と可視化を実現できる点にあります。

まずは小さなチーム、特定の業務からでも構いません。このスモールな成功体験を積み重ねることが、組織全体の生産性を向上させ、DXを推進する大きな原動力となります。この記事が、皆様の業務改善の第一歩となれば幸いです。