Google Workspace は、場所を選ばない柔軟な働き方と、効率的なコラボレーションを実現する強力なツールです。多くの企業がその導入を進めていますが、特に支社や営業所など複数の拠点を持つ企業の場合、その管理・運用には特有の難しさが伴います。
「拠点ごとに利用できる機能を制限したい」「本社と支社で管理権限を分けたい」「全社的なセキュリティポリシーをどう適用すればいいのか」といった課題を感じている情報システム部門のご担当者様や、これから複数拠点での導入を検討されている決裁者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、複数拠点を持つ中堅〜大企業がGoogle Workspaceを効果的かつ安全に運用するために、管理者として押さえておくべき基本的なポイント、特に「組織部門」の設定と「権限管理」に焦点を当てて、入門レベルで分かりやすく解説します。
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単一拠点での運用と比較して、複数拠点でのGoogle Workspace運用には、以下のような特有の課題が生じやすくなります。
各拠点の業務内容や役割によって、必要とするGoogle Workspaceの機能や設定は異なる場合があります。例えば、特定の支社のみでGoogle Meetの録画機能を有効にしたい、営業部門では外部とのファイル共有を許可したいが、開発部門では制限したい、といったケースです。拠点ごとのニーズに応えつつ、全社としての一貫したポリシーやセキュリティレベルを維持するには、適切な管理設定が不可欠です。
ユーザー数や管理対象が増えることで、設定ミスや管理漏れが発生しやすくなります。各拠点に管理担当者を置く場合でも、権限設定が不適切だと、意図しない設定変更や情報漏洩のリスクが高まります。拠点が増えるほど、ガバナンスを効かせた運用体制の構築が重要になります。
これらの課題に対応し、Google Workspaceのメリットを最大限に引き出すためには、管理コンソールにおける基本的な設定、特に「組織部門」と「権限管理」を正しく理解し、活用することが第一歩となります。
複数拠点でのGoogle Workspace運用において、最も基本かつ重要なのが「組織部門」の設定です。
組織部門とは、Google Workspaceの管理コンソール内で、会社の組織構造(部署、支社、チームなど)に合わせてユーザーをグループ化するための仕組みです。通常、最上位に会社全体の組織部門があり、その下に事業部、部、課、拠点といった形で階層的に作成できます。
(簡単な階層構造のイメージ例)
[会社全体] (最上位)
├─ [本社]
│ ├─ [営業本部]
│ │ ├─ [第一営業部]
│ │ └─ [第二営業部]
│ └─ [管理本部]
│ ├─ [人事部]
│ └─ [経理部]
└─ [支社]
├─ [大阪支社]
└─ [福岡支社]
組織部門を設定する主な目的は以下の2点です。
組織部門の設計に唯一の正解はありませんが、一般的には会社の実際の組織図に基づいて設計します。考慮すべき点としては、
重要なのは、「どのような単位で設定やポリシーを変えたいか」を明確にし、管理しやすい階層構造を設計することです。最初はシンプルに始め、必要に応じて後から変更することも可能です。
組織部門でユーザーをグループ化したら、次に重要なのが「誰が」「何を」管理できるのかを定義する「権限管理」です。
Google Workspaceには、様々な管理権限(管理者ロール)が用意されています。
セキュリティの基本原則として「最小権限の原則」があります。これは、ユーザーや管理者には、その役割を遂行するために必要最小限の権限のみを付与するという考え方です。これにより、誤操作や不正アクセスによる影響範囲を限定できます。
Google Workspaceでは、事前に定義された役割別の管理者ロールに加え、「カスタムロール」を作成する機能があります。これにより、「大阪支社のユーザーパスワードリセット権限だけを持つ管理者」といった、より細かなニーズに合わせた権限設定が可能です。
複数拠点を持つ企業では、各拠点に情報システム担当者や管理者を配置し、日常的な管理業務(アカウント作成、パスワードリセットなど)を委任することが効率的です。この際、特権管理者の権限を与えるのではなく、必要な業務に応じた役割別の管理者ロールやカスタムロールを付与することが重要です。全社的なポリシーに関わる設定(セキュリティ設定など)は本社で一元管理し、拠点での管理範囲を明確に線引きすることで、ガバナンスと効率性のバランスを取ることができます。
組織部門と権限管理の基盤ができたら、次は具体的なサービスやアプリケーションの設定を組織部門ごとに最適化していきます。
Google Workspaceには多くのサービス(Gmail, Googleドライブ, Googleカレンダー, Google Meet, Google Chatなど)が含まれていますが、すべての組織部門で全てのサービスが必要とは限りません。管理コンソールでは、組織部門ごとに各サービスの有効/無効を切り替えることができます。例えば、「特定の拠点ではGoogle Vault(アーカイブ・電子情報開示ツール)を有効にする」「インターン生が所属する組織部門では一部サービスを無効にする」といった制御が可能です。
サービスの有効/無効だけでなく、各サービスの詳細な設定も組織部門ごとに調整できます。
これらの設定を組織部門の特性に合わせて最適化することで、利便性を損なわずにセキュリティレベルを高めることができます。
組織部門、権限管理、サービス設定以外にも、複数拠点での運用を円滑にするために考慮すべき点がいくつかあります。
これらの詳細については、別の記事で解説する機会があればと思いますが、まずは基本的な管理項目として意識しておくと良いでしょう。
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ここまで、複数拠点でのGoogle Workspace運用における基本的な管理ポイントを解説してきました。しかし、実際の運用では、
といった、より高度な課題やニーズが出てくることも少なくありません。特に、数百、数千ユーザー規模の組織では、初期設定の巧拙が将来的な運用効率やセキュリティレベルに大きく影響します。
私たちXIMIXは、Google Workspaceの認定パートナーとして、多くの中堅・大企業様のGoogle Workspace導入・移行・運用をご支援してきた豊富な実績があります。その経験に基づき、お客様の状況に合わせた最適なソリューションを提供します。
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今回は、複数の拠点を持つ企業がGoogle Workspaceを運用する上で基本となる、「組織部門」の設定と「権限管理」について解説しました。
これらを適切に設定・管理することが、複数拠点でのGoogle Workspace運用を成功させる鍵となります。導入時だけでなく、組織変更や運用状況に合わせて定期的に設定を見直し、最適化していくことが重要です。
計画的な管理設定により、Google Workspaceのポテンシャルを最大限に引き出し、全社的な生産性向上とセキュアなコラボレーション環境を実現しましょう。