コラム

なぜ必要? データクレンジングの基本を解説|データ分析の質を高める第一歩

作成者: XIMIX Google Cloud チーム|Apr 24, 2025 11:02:16 AM

はじめに:「ゴミを入れれば、ゴミしか出てこない」

「集めたデータを分析して、ビジネスに役立つ知見を得たい!」 多くの企業がデータ活用に期待を寄せ、データ分析基盤の構築やツールの導入を進めています。しかし、いざ分析を始めてみると、「期待したような結果が出ない」「分析結果がどうも信用できない」といった壁にぶつかることは少なくありません。

その原因の一つとして考えられるのが、分析に使う「データの品質」の問題です。データ分析の世界には "Garbage In, Garbage Out" (GIGO) という有名な言葉があります。これは「ゴミ(質の悪いデータ)を入れれば、ゴミ(価値のない分析結果)しか出てこない」という意味です。

どんなに高度な分析手法やツールを使っても、元となるデータが不正確だったり、欠けていたり、矛盾していたりすれば、導き出される分析結果も信頼性の低いものになってしまいます。

そこで重要になるのが「データクレンジング」です。「聞いたことはあるけど、具体的に何をするの?」「なぜそんな作業が必要なの?」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。

この記事は、データ分析の初心者や、これからデータ活用に取り組む方々に向けて、データクレンジングとは何か、なぜ必要なのか、そして具体的にどのようなことをするのか、その基本を分かりやすく解説します。

データクレンジングとは?

データクレンジングとは、簡単に言えば「データの品質を高めるための掃除作業」のことです。データの中には、入力ミス、表記の揺れ、欠けている箇所(欠損値)、重複しているデータなど、分析に適さない「汚れ」が含まれていることがよくあります。

データクレンジングの目的は、これらの「汚れた」データを特定し、修正したり、削除したりすることで、データを正確で、一貫性があり、信頼できる状態に整えることです。

料理に例えるなら、美味しい料理を作るために、泥のついた野菜を洗い、傷んだ部分を取り除き、材料の大きさを揃える「下ごしらえ」のような作業と言えるでしょう。この下ごしらえを丁寧に行うことで、料理(データ分析)の質が格段に向上するのです。

なぜデータクレンジングが必要なのか?「汚れたデータ」が引き起こす問題

データクレンジングを怠り、「汚れたデータ」のまま分析を進めると、具体的にどのような問題が起こるのでしょうか?

  • 分析結果が間違ってしまう: 例えば、売上データに桁違いの入力ミスがあれば、平均売上や合計売上が大きく歪んでしまいます。
  • 分析結果の信頼性が低下する: データに矛盾や欠損が多いと、分析結果そのものが信用できなくなり、意思決定の根拠として使えなくなります。
  • 間違った意思決定につながる: 信頼性の低い分析結果に基づいて判断を下せば、ビジネス戦略を誤るリスクがあります。
  • 分析作業の効率が悪くなる: 分析の途中でデータの不備に気づき、データの修正や再収集といった手戻りが発生し、時間と労力が無駄になります。
  • システムエラーの原因になる: データ形式が統一されていない場合など、分析ツールやシステムが正常に動作せず、エラーを引き起こすことがあります。

このように、データクレンジングは、単にデータを綺麗にするだけでなく、データ分析の質と信頼性を担保し、最終的なビジネス成果につなげるために不可欠なプロセスなのです。

データクレンジングで具体的に何をするの?

では、データクレンジングでは具体的にどのような「掃除」を行うのでしょうか。ここでは代表的な作業をいくつかご紹介します。

①欠損値の処理

データの一部が入力されていない、空白になっている状態(欠損値)への対応です。

  • 削除: 欠損値を含むデータ行(レコード)や列(カラム)自体を削除する。
  • 補完: 平均値、中央値、最頻値などで欠損箇所を埋めたり、他のデータから予測して補ったりする。 (例:アンケートの年齢欄が空白になっている場合に、回答者全体の平均年齢で補う、など)

②重複データの削除

全く同じ内容のデータが複数行にわたって存在する場合、分析結果に影響を与えないように、重複しているデータの一方を削除します。 (例:顧客リストに同じ名前・住所の顧客が二重に登録されている、など)

③表記ゆれの統一

同じ意味なのに、異なる文字や形式で入力されているデータを統一します。

  • 全角・半角の統一: 例:「データ」→「データ」
  • 大文字・小文字の統一: 例:「google」→「Google」
  • 略称・正式名称の統一: 例:「(株)XYZ」→「株式会社XYZ」
  • 住所表記の統一: 例:「東京都千代田区」と「東京都千代田区」の間のスペース有無、都道府県名の有無など。

④異常値の検出・修正

他のデータと比較して、明らかに値がかけ離れているデータ(異常値)を見つけ出し、原因を調査して修正または削除します。 (例:年齢が「200歳」になっている、商品の販売個数がマイナスになっている、など)

⑤データ型の統一

数値であるべき列に文字列が入っていたり、日付であるべき列が単なる数値になっていたりする場合、正しいデータ型に変換します。これにより、計算や集計が正しく行えるようになります。

⑥不要なデータの削除

今回の分析目的には関係のないデータ列や、分析のノイズになるようなデータ(例:備考欄の自由記述など、そのままでは分析しにくいもの)を削除します。

これらの作業を、データの特性や分析の目的に合わせて適切に行うことが重要です。

データクレンジングを進める上でのポイント

データクレンジングを効果的に進めるためには、いくつか押さえておきたいポイントがあります。

  • 目的を明確にする: 何のためにデータを分析するのか、その目的によってクレンジングの基準や必要な作業が変わってきます。
  • クレンジングのルールを決める: どのようなデータを「異常」とみなすか、欠損値をどう処理するかなど、一貫したルールを事前に決めておくことが重要です。
  • ツールを活用する: 大量のデータを手作業でクレンジングするのは現実的ではありません。Excelの機能や、専門のデータクレンジングツール、プログラミング言語(Pythonなど)を活用することで、効率的に作業を進められます。

Google Cloudが提供するデータクレンジング支援

クラウドプラットフォーム、特にGoogle Cloudには、データクレンジング作業を支援する便利なサービスや機能が用意されています。

  • Cloud Dataprep by Trifacta(Cloud Dataprep): プログラミング不要で、視覚的なインターフェースを使ってデータのクレンジングや加工を行えるサービスです。データの品質を自動で評価し、クレンジングの候補を提案してくれる機能もあります。
  • BigQueryのSQL関数: Google CloudのデータウェアハウスであるBigQueryでは、SQL(データベースを操作するための言語)を使って、データの抽出・変換・読み込み(ETL/ELT)処理の中でデータクレンジングを行うことができます。標準で多くのデータ操作関数が用意されています。

これらのツールを活用することで、データクレンジングのプロセスを効率化し、より高品質なデータを準備することが可能になります。

XIMIXによる支援

データクレンジングは、データ分析プロセスの中でも特に時間と手間がかかる作業の一つです。 「どこから手をつければいいかわからない」 「どのような基準でデータを綺麗にすればいいのか判断が難しい」 「クレンジング作業を効率化するツールを導入したいが、どれが良いかわからない」 といったお悩みを持つ企業様も少なくありません。

私たち XIMIX (サイミクス) はデータ分析においては、分析そのものだけでなく、その前段階である高品質なデータの準備(データ収集、クレンジング、加工)から一貫してサポートしています。

高品質な分析を実現するためには、このデータ準備段階が非常に重要であると、多くのご支援を通じて実感しています。 XIMIXでは、お客様のデータの状況や分析目的に合わせて、最適なデータクレンジングの方法をご提案し、Google Cloudのツール(Cloud Dataprep、BigQueryなど)を活用した効率的なデータ準備プロセスの構築をお手伝いします。

データ分析の精度を高めたい、データ準備のプロセスに課題を感じている、という企業様は、ぜひ一度XIMIXにご相談ください。

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まとめ:データクレンジングは、データ分析成功への第一歩

今回は、データクレンジングの基本的な意味、必要性、そして具体的な作業内容について解説しました。

データクレンジングは、一見地味で手間のかかる作業に思えるかもしれません。しかし、この「データの掃除」こそが、データ分析の精度を高め、信頼できる洞察を得て、最終的にビジネス価値を生み出すための重要な第一歩なのです。

"Garbage In, Garbage Out" を避けるためにも、ぜひデータクレンジングの重要性を理解し、データと向き合うプロセスに取り入れてみてください。もし、データ準備の段階で課題を感じたら、専門家のサポートを検討することも有効な手段です。