コラム

【入門】クラウド移行とは?目的・必要性からメリット、基本的な進め方まで解説

作成者: XIMIX Google Cloud チーム|Apr 22, 2025 8:48:55 AM

はじめに

「最近、社内で『クラウド移行』という言葉をよく聞くけれど、具体的にどういう意味なんだろう?」 「オンプレミスのシステムが古くなってきたけど、なぜ『クラウド移行』が必要と言われるのだろうか?」 「クラウド移行の目的やメリットが、いまいちピンときていない…」

デジタルトランスフォーメーション(DX)が叫ばれる昨今、多くの企業で「クラウド移行」が重要な経営課題として認識されつつあります。しかし、その言葉の意味するところや、自社にとっての具体的な必要性・目的について、まだ十分に理解されていないケースも少なくありません。

特に、長年オンプレミス環境で基幹システムなどを運用してきた企業にとっては、クラウドへの移行は大きな決断となります。その意義やメリットを正しく理解することが、適切な意思決定のための第一歩です。

この記事では、「クラウド移行」とは何か、その基本的な意味から、多くの企業がクラウド移行を進める目的や必要性、具体的なメリット、そして成功のためのポイントまで、入門者向けに分かりやすく解説します。

そもそも「クラウド移行」とは何か?

まず、「クラウド移行」という言葉の基本的な意味を確認しましょう。

クラウド移行の定義:オンプレミスからの移行が中心

クラウド移行とは、企業が自社で保有・管理している物理サーバーやソフトウェア、データなどのITリソース(いわゆる「オンプレミス」環境)を、インターネット経由で利用する「クラウドサービス」上へ移すことを指します。

多くの場合、老朽化したオンプレミスシステムの刷新や、データセンターの運用負荷軽減などを目的に行われます。また、既に別のクラウドサービスを利用している場合に、より最適なサービスへ乗り換えることも広義のクラウド移行に含まれますが、一般的にはオンプレミスからの移行を指すことが多いです。

「移行」の対象:サーバー、データ、アプリケーションなど

移行の対象となるITリソースは多岐にわたります。

  • サーバー: 物理サーバーや仮想サーバー上のシステム環境
  • データ: データベースに格納された情報やファイルサーバー上の各種データ
  • アプリケーション: 業務システムやWebアプリケーションなどのソフトウェア
  • 開発環境: システム開発やテストを行うための環境

これらのうち、何をどのクラウドサービス(IaaS, PaaS, SaaSなど)に移行するかは、企業の目的や戦略によって異なります。

重要:単なる引っ越しではない? ビジネス変革の側面

クラウド移行は、単にITリソースの置き場所を変える「引っ越し」作業ではありません。クラウドが持つ柔軟性、拡張性、コスト効率、最新技術へのアクセスといった特性を活かすことで、ビジネスプロセスそのものを変革し、競争力を高めるための重要な手段となり得ます。このビジネス変革の側面を理解することが、クラウド移行の意義を捉える上で重要です。

なぜ今、多くの企業がクラウド移行を進めるのか?【目的・必要性】

では、なぜこれほど多くの企業がクラウド移行に注目し、実行に移しているのでしょうか。その背景には、従来のオンプレミス環境が抱える課題と、クラウド移行によって達成したい目的があります。

【背景】従来のオンプレミス環境が抱える課題

多くの企業、特に長年ITシステムを運用してきた中堅〜大企業では、以下のようなオンプレミス環境特有の課題に直面しています。

  • ハードウェア老朽化と保守切れ: サーバーなどの物理機器は経年劣化し、メーカーの保守サポートが終了(EOSL: End of Service Life)すると、故障時のリスクが高まります。いわゆる「2025年の崖」で指摘されるレガシーシステムの課題もこれに含まれます。
  • 運用管理コストの増大: ハードウェアの維持管理、OSやミドルウェアのアップデート、セキュリティパッチ適用、監視、障害対応など、運用管理にかかる人件費や作業負荷が増大します。データセンターの電気代高騰なども無視できません。
  • ビジネス変化への追随の難しさ: 市場の変化や事業拡大に合わせてITリソースを迅速に追加・拡張することが、オンプレミスでは物理的な制約から難しい場合があります。
  • 災害対策(BCP)の課題: 自社設備だけでは、大規模災害発生時のシステム停止リスクやデータ消失リスクへの対策が不十分な場合があります。

これらの課題を解決する有効な手段として、クラウド移行が選択されています。

クラウド移行によって実現したいこと【主な目的】

企業がクラウド移行を進める主な目的(期待する効果)は、以下のようなものが挙げられます。

  • コスト削減: ハードウェア購入などの初期投資(CAPEX)を抑制し、利用量に応じた変動費(OPEX)へ移行することで、ITコスト全体を最適化します。
  • 運用負荷の軽減とIT人材の有効活用: サーバー管理などの定型的な運用業務から解放され、IT部門の人材をより戦略的な業務(DX推進、新規サービス開発など)へシフトさせます。
  • ビジネスの俊敏性・柔軟性の向上: 必要なITリソースを必要な時に迅速に調達・拡張できるため、市場の変化や新しいビジネスチャンスに素早く対応できます。
  • セキュリティの強化: クラウド事業者が提供する高度なセキュリティ対策や専門知識を活用し、自社だけでは実現が難しいレベルのセキュリティを確保します。
  • BCP(事業継続計画)対策の強化: 堅牢なデータセンターや冗長化構成、バックアップ/リカバリ機能を利用し、災害や障害発生時の事業継続性を高めます。
  • DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進基盤: AI、機械学習、IoT、ビッグデータ分析といった最新技術を容易に活用できる環境を整え、DXを加速させます。

クラウド移行がもたらす具体的なメリット

クラウド移行の目的を達成することで、企業は具体的に以下のようなメリットを享受できます。

  • コスト面:
    • 高額なサーバー購入費やデータセンター設備投資が不要に。
    • 利用した分だけ支払う従量課金制により、無駄なコストを削減。
    • ハードウェア保守費用や電気代などの運用コストを削減。
  • 運用面:
    • ハードウェアの管理、OS・ミドルウェアのアップデート作業などが不要または軽減。
    • 監視やバックアップなどの運用タスクを自動化・効率化。
    • IT部門の運用管理業務の負荷を大幅に削減。
  • ビジネス面:
    • 数分〜数時間でサーバーなどのリソースを準備可能に(オンプレミスでは数週間〜数ヶ月かかることも)。
    • アクセス増やデータ量増加に合わせて、容易にシステムを拡張(スケーラビリティ)。
    • AI/機械学習、データ分析などの先進的なクラウドサービスをすぐに利用開始可能。
  • セキュリティ面:
    • クラウド事業者の専門家による24時間365日の監視体制。
    • 最新の脅威に対応した高度なセキュリティ機能を利用可能。
    • 各種セキュリティ認証(ISO 27001など)を取得しているサービスが多く、コンプライアンス対応にも寄与。
  • BCP面:
    • 地理的に離れた複数のデータセンター(リージョン/ゾーン)を利用した冗長化構成が可能。
    • 自動バックアップや容易なリストア機能により、データ消失リスクを低減。

クラウド移行の主なパターンと手法(概要)

クラウド移行は、その目的や対象システム、移行先のクラウドサービスの特性に応じて、いくつかのパターンや手法が存在します。ここでは入門として、代表的な考え方の概要に触れておきます。

  • 移行パターン(通称 "6つのR" など):
    • リフト&シフト (Rehost): 既存のシステム構成をほぼそのままクラウド上の仮想サーバー(IaaS)に移す方法。移行の手間は比較的少ないですが、クラウドのメリットを最大限に活かせない場合もあります。
    • リプラットフォーム (Replatform): OSやミドルウェアなどをクラウド向けに最適化しつつ移行する方法。リフト&シフトよりクラウドのメリットを享受しやすくなります。
    • リファクタリング (Refactor) /リアーキテクト (Rearchitect): アプリケーションの設計や構造自体をクラウドネイティブ(クラウド環境に最適化された形)に変更する方法。最もクラウドのメリットを活かせますが、開発コストや時間がかかります。
    • 他にも、再購入 (Repurchase)(SaaSへの置き換え)、維持 (Retain)(移行しない)、廃止 (Retire)(不要なシステムを廃棄)といった選択肢もあります。
  • 移行対象による違い: サーバー全体を移行する場合もあれば、特定のデータベースだけ、あるいは特定のアプリケーションだけを移行・再構築する場合もあります。
  • 簡単ではない移行:計画と準備の重要性: どのパターンを選ぶにせよ、クラウド移行は単純作業ではありません。現状システムの詳細な分析、移行先の選定、綿密な移行計画、十分なテスト、関係部署との連携などが不可欠です。

より具体的な移行手法や計画については、専門家の支援を得ながら進めることが推奨されます。

"6つのR" についてのご参考AWS への移行:ベストプラクティスと戦略

クラウド移行を成功させるための初期検討ポイント

クラウド移行プロジェクトを始めるにあたり、初期段階で特に検討すべきポイントは以下の通りです。

① 移行目的の明確化 (自社の課題は何か?)

「なぜクラウド移行を行うのか?」という目的を明確にし、関係者間で共有することが最も重要です。コスト削減なのか、運用負荷軽減なのか、ビジネス俊敏性向上なのか、DX推進なのか。目的によって、移行戦略や優先順位、評価指標が変わってきます。

② 移行対象システムの評価・選定

全てのシステムを一度に移行する必要はありません。まずは、移行による効果が大きいシステム、あるいは移行しやすいシステムから着手するなど、優先順位をつけることが現実的です。各システムの重要度、複雑さ、依存関係、現在の課題などを評価し、移行対象を選定します。

③ クラウドサービス(IaaS/PaaS/SaaS)とベンダーの選定

移行対象システムの特性や移行目的に合わせて、最適なクラウドサービスの形態(IaaS, PaaS, SaaS)を選びます。(各サービスの違いについては、こちらの記事『【入門編】IaaS・PaaS・SaaSの違いとは?クラウドサービスの基本と選び方をわかりやすく解説』もご参照ください)。また、Google Cloud, AWS, Azureなど、どのクラウドベンダーのサービスを利用するかも重要な選定ポイントです。機能、コスト、信頼性、サポート体制などを比較検討します。

ご参考:【初心者向け】Google Cloud・AWS・Azureの違いとは? 主要3大クラウドの特徴と選び方

④ 体制構築とパートナー選定

クラウド移行には、IT部門だけでなく、関連する事業部門との連携も不可欠です。社内にプロジェクト推進体制を構築しましょう。また、自社だけでは知見やリソースが不足する場合、経験豊富な外部パートナーを選定し、協力を得ることも成功の鍵となります。

XIMIXによる支援サービス

クラウド移行の目的やメリットをご理解いただけたでしょうか。しかし、「自社の場合はどこから手をつけるべきか」「具体的な移行計画やリスクをどう評価すればいいのか」「技術的に実現できるのか不安だ」といった、実行段階における課題や疑問も多く出てくることと思います。

特に中堅〜大企業のクラウド移行では、既存システムとの複雑な連携、厳しいセキュリティ要件、全社的なガバナンスの確保など、考慮すべき点が多く、専門的な知見と計画性が不可欠です。

そのような場合は、ぜひ XIMIXにご相談ください。

XIMIXは、Google Cloudのプレミアパートナーとして、これまで多くのお客様のクラウド移行をご支援してまいりました。その豊富な実績と技術力に基づき、お客様のビジネス課題や目的に最適なクラウド移行戦略の策定から、実行、そして移行後の運用まで、トータルでサポートいたします。

  • クラウド移行アセスメント: 現状のIT環境を詳細に分析・評価し、移行の目的設定、対象システムの選定、最適なGoogle Cloudサービスの選定、移行ロードマップ策定、費用対効果の試算などを行います。
  • クラウド移行 設計・構築・実行: お客様の要件に基づき、安全かつ効率的な移行プランを設計し、確実な移行作業を実施します。オンプレミスからの移行はもちろん、他クラウドからの移行にも対応します。
  • 運用・保守サポート: 移行後のGoogle Cloud環境の安定稼働に向けた監視、保守、最適化をご支援します。

クラウド移行は、単なるコスト削減や運用負荷軽減に留まらず、お客様のビジネス成長を加速させる大きなチャンスです。クラウド移行の第一歩として、まずはお気軽にご相談ください。

XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。

※Google Cloud については、こちらのコラム記事もご参照ください。 
【基本編】Google Cloudとは? DX推進の基盤となる基本をわかりやすく解説
【基本編】Google Cloud導入のメリット・注意点とは? 初心者向けにわかりやすく解説

まとめ

今回は、「クラウド移行」とは何か、その基本的な意味、目的と必要性、具体的なメリット、そして成功のための初期検討ポイントについて解説しました。

  • クラウド移行とは: オンプレミスなどの既存ITリソースをクラウドサービスへ移すこと。
  • 主な目的・必要性: コスト削減、運用負荷軽減、ビジネス俊敏性向上、セキュリティ強化、BCP対策、DX推進など、従来のオンプレミス環境の課題解決とビジネス変革のため。
  • メリット: コスト最適化、運用効率化、スケーラビリティ、最新技術活用、セキュリティ向上など多岐にわたる。

クラウド移行は、もはや単なるITインフラの選択肢の一つではなく、変化の激しい時代において企業が競争力を維持・強化し、持続的に成長していくための重要な経営戦略となっています。

この記事が、皆様にとってクラウド移行の意義を理解し、自社での検討を進めるための一助となれば幸いです。