コラム

今さら聞けない「クラウド」と「ITインフラ」- DX担当者が押さえるべき基本と関係性

作成者: XIMIX Google Cloud チーム|Apr 22, 2025 7:21:42 AM

はじめに

「DX推進のため、クラウド活用を検討しよう」 「社内のITインフラを見直す必要がある」

ビジネスシーンにおいて、「クラウド」や「インフラ」といった言葉を耳にする機会は増えましたが、その基本的な意味について、自信を持って説明できるでしょうか? 特に、これから本格的にDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組もうとされている担当者様の中には、「言葉は聞くけれど、実は深くはわかっていない…」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。

この記事では、そんな疑問を解消するために、「クラウド」と「ITインフラ」という言葉の基本的な意味、両者の関係性、そしてなぜ今クラウドがビジネスにおいて重要視されているのかについて、入門者向けにわかりやすく解説します。この記事を読めば、クラウドとインフラの基礎知識が身につき、今後のDX推進に向けた議論や情報収集をよりスムーズに進められるようになるでしょう。

まずは基本から:「インフラ」とは何か?

「インフラ」と聞くと、道路、水道、電気、ガスといった社会的な基盤を思い浮かべる方が多いでしょう。これらは「社会インフラ」と呼ばれ、私たちの生活や経済活動に不可欠なものです。

ITの世界における「インフラ」も、これと考え方は同じです。一般的に「ITインフラ」と呼ばれ、企業がコンピューターシステムやインターネットサービスなどを利用するために必要となる基盤全体を指します。具体的には、以下のようなものが含まれます。

ITインフラを構成する要素

  • ハードウェア: サーバー、パソコン、ネットワーク機器(ルーター、スイッチなど)、ストレージ(データを保存する装置)など、物理的な機器。
  • ソフトウェア: オペレーティングシステム(OS)、ミドルウェア(OSとアプリケーションを仲介するソフトウェア)など、ハードウェアを動かすための基本的なソフトウェア。
  • ネットワーク: 社内LANやインターネット接続回線など、コンピューター同士を繋ぐ通信網。
  • データセンター: サーバーなどの機器を設置・運用するための専用施設(自社で保有する場合も、外部サービスを利用する場合もあります)。

これらのITインフラは、メールの送受信、ウェブサイトの閲覧、業務アプリケーションの利用、データの保管といった、企業活動に欠かせないITシステムの土台となっているのです。従来、多くの企業はこれらのITインフラを自社で物理的に保有し、管理・運用してきました。これを「オンプレミス」と呼びます。

「クラウド」とは何か? - ’インターネット越し’のITリソース活用

次に「クラウド」について解説します。「クラウド(Cloud)」は、正式には「クラウドコンピューティング(Cloud Computing)」と呼ばれ、インターネットなどのネットワークを通じて、サーバー、ストレージ、データベース、ソフトウェアといったITリソースを、必要な時に必要な分だけ利用する考え方やサービスの形態を指します。

「雲(Cloud)」という言葉が使われるのは、インターネットの向こう側にあるコンピューターリソースを、利用者がその物理的な場所や複雑な仕組みを意識することなく、まるで雲の向こう側にある巨大なコンピューターを使うかのように利用できるイメージから来ています。

身近なクラウドサービスの例

もう少し具体的に、身近な例で考えてみましょう。

  • 個人向けサービス: Gmail™ のようなWebメールや、Google ドライブ™ のようなオンラインストレージもクラウドサービスの一種です。私たちは、メールソフトやUSBメモリを直接所有・管理しなくても、インターネット経由でこれらの機能を利用できます。
  • 企業向けサービス: Google Workspace™ のようなグループウェアや、各種業務システム(SaaS)などもクラウドサービスとして提供されています。企業は自社でサーバーを立ててソフトウェアをインストール・管理する代わりに、サービス提供事業者のITリソースを利用します。

このように、クラウドは、ITインフラやソフトウェアなどを「所有」するのではなく、インターネットを通じて「利用」する形態である、と理解するとわかりやすいでしょう。

「クラウド」と「インフラ」の関係性

ここまでで、「インフラ」はITシステムの基盤であり、「クラウド」はインターネット経由でITリソースを利用する形態であることがわかりました。では、両者の関係性はどのように整理できるでしょうか?

関係性のポイント

  • クラウドサービスは、そのサービスを提供するために巨大なITインフラを基盤として利用しています。Amazon Web Services (AWS)、Microsoft Azure、そして Google Cloud™ といった大手クラウドサービス事業者は、世界中にデータセンターを持ち、膨大なサーバーやネットワーク機器などのITインフラを構築・運用しています。
  • 利用者は、クラウドサービスを通じて、これらのITインフラを間接的に利用していると言えます。つまり、クラウドはITインフラの提供・利用形態の一つなのです。

「オンプレミス」が自前でITインフラを構築・管理する形態であるのに対し、「クラウド」はサービス事業者が提供するITインフラ(を含むITリソース)を利用する形態、という対比で理解すると、より明確になるでしょう。

なぜ今「クラウド」が注目されるのか? メリットとデメリット

従来型のオンプレミスと比較して、クラウドには多くのメリットがあり、それがDX推進において注目される理由となっています。

クラウドの主なメリット

  • 初期コストの削減: 自社でサーバー等のハードウェアを購入・設置する必要がないため、初期投資を大幅に抑えられます。
  • 導入スピードの速さ: 必要なリソースをすぐに利用開始できるため、新規事業やサービスの立ち上げを迅速に行えます。
  • 柔軟な拡張性・縮小性: ビジネスの状況に合わせて、必要な時に必要な分だけリソースを増減できます(スケーラビリティ)。これにより、無駄なコストを削減できます。
  • 運用負荷の軽減: ハードウェアの保守やOSのアップデートといったインフラ管理の多くをサービス事業者に任せられるため、自社のIT担当者はより戦略的な業務に集中できます。
  • 場所を選ばないアクセス: インターネット環境があれば、どこからでもサービスやデータにアクセスできるため、多様な働き方に対応しやすくなります。
  • 最新技術の利用: クラウド事業者が提供するAI、機械学習、データ分析などの最新技術を容易に利用できます。

ご参考:アプリケーション開発はクラウドが常識? オンプレミスとの違いと移行メリットを徹底比較

クラウドのデメリットと注意点

一方で、クラウドにはデメリットや注意点も存在します。

  • ランニングコストの発生: 利用量に応じた従量課金制が多いため、利用状況によってはオンプレミスよりコストが高くなる可能性もあります。コスト管理が重要になります。
  • カスタマイズ性の制限: オンプレミスほど自由な構成やカスタマイズができない場合があります。
  • セキュリティへの懸念: サービス事業者側のセキュリティ対策は強固ですが、自社のデータやシステムを外部に預けることへの心理的な抵抗や、自社側の設定・運用におけるセキュリティリスク管理が必要です。
  • ネットワーク依存: インターネット接続がなければ利用できないため、安定したネットワーク環境が不可欠です。
  • サービス障害のリスク: 稀にサービス事業者側で障害が発生し、サービスが利用できなくなるリスクがあります。

これらのメリット・デメリットを理解し、自社の状況に合わせてオンプレミスとクラウド、あるいは両者を組み合わせた「ハイブリッドクラウド」といった形態を検討することも重要です。

DX推進におけるクラウドの重要性

多くの中堅・大企業がDXを推進する上で、クラウドは不可欠な要素となりつつあります。その理由は、クラウドが持つ「俊敏性」「柔軟性」「拡張性」といった特性が、変化の激しいビジネス環境への対応や、新しい価値創出を強力に後押しするためです。

クラウドがDXを加速する理由

  • 新規事業の迅速な立ち上げ: アイデアをすぐに形にし、市場の反応を見ながら改善していくアジャイルな開発・展開が可能になります。
  • データ活用の促進: 大量のデータを保管・分析するための基盤(例: Google Cloud の BigQuery™ など)を容易に利用でき、データドリブンな意思決定を支援します。
  • 場所にとらわれない働き方の実現: Google Workspace™ のようなクラウド型グループウェアは、テレワークやハイブリッドワークといった柔軟な働き方を支えます。
  • コスト最適化とIT部門の変革: インフラ管理の負荷を軽減し、IT部門がよりビジネス価値の高い業務(DX戦略の企画・実行など)に注力できるようになります。

このように、クラウドは単なるコスト削減や効率化の手段ではなく、ビジネスモデルの変革や競争力強化を実現するための戦略的な基盤として位置づけられています。

XIMIXによる支援サービス

ここまで、クラウドとインフラの基本的な概念について解説してきました。これらの知識を踏まえ、「自社でも本格的にクラウド活用を進めたい」「オンプレミスからの移行を検討したい」と考え始めた方もいらっしゃるでしょう。

しかし、実際にクラウドを導入・活用する際には、

  • 「どのクラウドサービスが自社に最適なのか?」
  • 「既存システムとの連携はどうすればよいのか?」
  • 「セキュリティ対策は万全か?」
  • 「コストを最適化しながら運用するにはどうすればよいか?」

といった、さらなる疑問や課題が生じることが少なくありません。特に、基幹システムの移行や大規模なデータ基盤の構築など、専門的な知見が求められるケースも多くあります。XIMIXでは、こうした課題を解決するためのノウハウを蓄積しています。

私たちXIMIXは、Google Cloud および Google Workspace の導入・活用を検討されているお客様に対し、豊富な実績と専門知識に基づいた各種支援サービスを提供しています。

お客様のビジネス課題やDX戦略に寄り添いながら、最適なクラウド環境の設計・構築から、移行、運用保守、さらにはデータ分析基盤の構築やAI活用といった高度な領域まで、一貫してサポートいたします。多くのお客様のクラウド移行をご支援する中で培った知見を活かし、お客様に最適なご提案をいたします。

クラウド導入の初期段階におけるコンサルティングから、具体的なシステムインテグレーション、導入後の伴走支援まで、お客様の状況やニーズに合わせた柔軟なサービス提供が可能です。

「クラウドについてもっと詳しく知りたい」「自社の課題について相談したい」とお考えでしたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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まとめ

今回は、「クラウド」と「ITインフラ」という、DX時代に欠かせないキーワードについて、その基本的な意味、そしてクラウドがもたらすメリットを中心に解説しました。

  • ITインフラ: ITシステムの基盤となる物理的・基本的な要素(サーバー、ネットワークなど)。
  • クラウド: インターネット経由でITリソース(インフラ、ソフトウェアなど)をサービスとして利用する形態。
  • 関係性: クラウドサービスは、巨大なITインフラを基盤として提供されている。
  • メリット: クラウドは初期コスト削減、迅速性、柔軟性、運用負荷軽減などの利点があり、DX推進の鍵となる。

クラウドとインフラの基礎を理解することは、今後のIT戦略やDX推進を検討する上での第一歩となります。本記事が、皆様の理解の一助となれば幸いです。クラウド活用は、もはや選択肢の一つではなく、企業の持続的な成長と競争力強化のための重要な戦略基盤です。ぜひ、この機会に自社のクラウド戦略について考えてみてはいかがでしょうか。

※Google Cloud については、こちらのコラム記事もご参照ください。 
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