本記事は、Google Workspace Studio(旧Flows)の実践ノウハウを100本紹介する連載「Google Workspace Studio活用方法100本ノック」の一つとなります。
「社内ヘルプデスクのチャットスペースに毎日同じような質問が届き、担当者がそのたびに過去資料を探し回っている」――そんな光景に心当たりはありませんか?
社内 FAQ、運用手順書、規程集、過去の議事録。情報は確かに存在するのに、必要なときに必要な人に届かない。結果として一部のベテラン担当者にナレッジが集中し、属人化が進んでしまう。多くの企業が抱える、典型的な課題のひとつです。
そんな課題に対し、Google が 2026 年 5 月 12 日に発表したアップデートが、新たな選択肢を提示してくれました。業務自動化プラットフォーム Google Workspace Studio に、NotebookLM を直接呼び出せる「NotebookLM に質問」ステップが登場したのです。
本記事では、このアップデートが何をもたらすのかを整理したうえで、「Google Chat の特定スペースに届いた投稿を判定し、問い合わせだった場合のみ NotebookLM が一次回答を生成し、その結果を Chat に通知する」という具体的なデモを通じて、現場でどう活かせるかをご紹介します。
| 難易度 | 初心者向け |
| 実現すること | Google Chat の特定スペースに届いた投稿を判定し、問い合わせだった場合のみ NotebookLM が一次回答を生成し、その結果を Chat に通知する |
| 想定する対象者 | 社内ヘルプデスク |
| 利用サービス | Google Chat, Notebook LM |
Google Workspace Studio は、Gemini を活用した業務自動化プラットフォームです。自然言語(人が日常で使う言葉)で指示することで、AI エージェントを設計・管理・共有でき、これまで「ノーコード/ローコードツールを使いこなせる一部の人にしかできなかった業務自動化」を、現場担当者自身が手がけられるようにする狙いがあります。
Workspace Studio 全体については XIMIX ブログの「Google Workspace Studio とは? Gemini 搭載の次世代自動化ツールを徹底解説」で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
NotebookLM は、ユーザーが指定した資料(PDF、Google ドキュメント、Web ページなど)だけを根拠に回答する、Google の AI ノートブックです。「自分が読み込ませた情報の範囲内で、根拠を示しながら回答してくれる」点が大きな特徴で、社内ナレッジを集約した「社内専用のリサーチアシスタント」として活用しやすいツールです。
Workspace Studio はもともと、Google Chat や Gmail、Google スプレッドシートなど多様な Google Workspace サービスを横断するワークフローを組めるプラットフォームです。そこに今回 NotebookLM が「ステップ」として加わったことで、ノートブックに集約した社内ナレッジを、業務フローの中から直接呼び出して活用できるようになりました。 (Use NotebookLM in your Google Workspace Studio flows)
「散在するナレッジをノートブックに集める」「集めたナレッジを業務フローから引き出す」――この 2 つが一本の線で繋がる、というのが今回のアップデートの本質です。
ここで、今回のアップデートの事実関係を整理します。
| アナウンス日 | 2026 年 5 月 12 日 |
| 公式ソース | Use NotebookLM in your Google Workspace Studio flows |
| 実装形式 | 「NotebookLM に質問」というステップとして Workspace Studio フロー内で利用可能 |
「NotebookLM に質問」ステップは、ノートブック内のインサイト・サマリー・リサーチをもとに、grounded responses(根拠のある回答) を生成します。フローの中で NotebookLM を Q&A エンジンとして呼び出すイメージです。出力はそのフロー内の後続ステップで変数として利用でき、Workspace Studio 標準のステップ間データ連携にそのまま乗せられます。
公式アナウンスで明示されている対象エディションは、以下のとおりです。
Business: Starter / Standard / Plus
Enterprise: Standard / Plus
Education: Fundamentals / Standard / Plus
Education アドオン: Google AI Pro for Education / Teaching and Learning アドオン
AI Expanded Access ユーザー(2026 年 6 月 1 日からより高い利用上限が適用)
Gemini for Google Workspace のステップを許可している場合、NotebookLM に質問 ステップは デフォルトで利用可能 とアナウンスされています("This step is available by default if you allow Gemini for Google Workspace steps")。
Rapid Release / Scheduled Release のいずれのリリーストラックでも、2026 年 5 月 12 日から完全展開(Full rollout)。各テナントで機能が表示されるまで 1〜3 日程度かかると案内されています。
ここからは、実際に Workspace Studio で組んでみたいフローのイメージをご紹介します。
シナリオは「社内ヘルプデスク用の Google Chat スペースに届いた投稿を AI が判定し、問い合わせと判断された場合のみ NotebookLM が一次回答を生成し、その結果をフロー実行者の Chat に通知する」というものです。
ポイントは 2 つあります。
1 つ目は、「投稿がすべて自動化対象になるわけではない」点です。雑談やお知らせなど、問い合わせ以外の投稿には反応しないよう、AI による判定ステップを挟みます。
2 つ目は、NotebookLM が生成した回答は「最終回答」ではなく「一次回答」として扱う点です。フロー実行者(運用担当者)が内容を確認したうえで、最終的な回答品質を担保する設計にしています。
「My Workspace」スペースにチャットメッセージが届いたときに起動するよう設定します。
この設定により、指定スペースへの投稿が発生したタイミングで自動的にフローが走り出します。
スペースには問い合わせだけでなく、雑談・連絡・お知らせなどさまざまな投稿が流れてきます。NotebookLM を起動するのは「明確な質問・問い合わせ」の場合だけに絞りたいので、ここで AI による判定ステップを挟みます。
「決定」ステップは、Gemini が文脈を理解したうえで条件分岐を行えるのが特徴で、固定キーワードの一致では拾いきれない柔軟な判定が可能です。「偽」と判定された投稿に対してはフローを終了させ、NotebookLM を呼び出さないことで、不要な処理や誤回答のリスクを減らせます。
問い合わせと判定された場合のみ、後続の処理を実行します。
Google Cloud 認定資格に関する知識を持つ NotebookLM を選択します。
ポイントは「ノートブックに登録した範囲の情報を根拠に回答が生成される」という点です。社外の一般情報ではなく、自社のナレッジを土台にした一次回答が得られます。
どのスペースからどのようなメッセージが届いたのかを、NotebookLM の回答とともに自分宛てへ通知するよう設定します。AI の回答は誤りを含む可能性があるため、送信前に自分で確認できるようにします。
「Cloud Digital Leaderについて教えてください」というメッセージを送信した場合の動作を確認します。
処理が最後まで正常に実行され、NotebookLM からの回答が出力されることを確認しました。
チャットにメッセージが正常に送信されることを確認しました。
この通知により、運用担当者は自分の Chat 上で「質問の内容」と「NotebookLM の一次回答」をワンセットで確認でき、必要に応じて加筆・修正したうえで、元のスペースに本回答を投稿する流れに繋げられます。
チャットスペースに送信されたメッセージが問い合わせではない場合、「決定」ステップで問い合わせ以外と判定されることを確認しました。
このフローを社内に導入すると、どんな価値が生まれるでしょうか。代表的な観点を 4 つご紹介します。
質問が投稿されてから数秒〜数十秒のうちに、社内ナレッジに基づいた一次回答が運用担当者の Chat に届きます。担当者は「ゼロから資料を探す」段階を飛ばし、「一次回答をチェックし、必要なら補足する」段階からスタートできるため、回答までのリードタイムが大きく短縮されます。
判定ステップによって「問い合わせではない投稿」が事前に弾かれるため、運用担当者の Chat に届く通知は「本当に対応すべき質問」だけになります。「通知が多すぎて結局スルーされる」という、業務通知の典型的な失敗を避けやすくなります。
「同じ質問への毎回ゼロからの回答」がなくなり、担当者は一次回答のレビューと、本当に難しい問い合わせへの集中対応に時間を使えるようになります。問い合わせ対応の質を保ちながら、本来の業務にかける時間を増やせます。
「ノートブックに集約した社内ナレッジが、毎日の業務フローの中で実際に使われる」状態を作れます。ナレッジは「整備して終わり」になりがちですが、Workspace Studio のフローに組み込んでおくことで、ナレッジ更新のモチベーションも自然と高まります。
Workspace Studio と NotebookLM の連携は、「散在するナレッジを集約する場所」と「集約したナレッジを業務に呼び出す場所」を、自然な形で繋いでくれるアップデートです。
社内 Q&A、新人オンボーディング、規程に関する確認――日々繰り返し発生する問い合わせの多くは、「正しい情報源を、正しいタイミングで取り出す」ことができれば、もっとスムーズに進むはずです。NotebookLM に質問 ステップは、その「正しい取り出し方」を、業務フローに組み込めるようにしてくれます。
まずはひとつ、自社の身近な業務で小さなフローを組んでみる。そこから業務全体への波及を考えていく。今回のアップデートは、そんな第一歩を後押ししてくれるニュースだと言えるでしょう。