本記事は、Google Workspace Studio(旧Flows)の実践ノウハウを100本紹介する連載「Google Workspace Studio活用方法100本ノック」の一つとなります。
本記事では、Workspace Studioを活用し、「チャットで質問を受けた瞬間に、AIが自動で社内ナレッジ(過去事例・マニュアル)を検索し、回答案を作成する」仕組みの構築方法を解説します。
「人がAIに聞きに行く」のではなく、「チャットの受信をトリガーに、AIが自律的に一次回答を準備する」ことで、社内ルールに基づいた回答案作成のアシストを実現します。
| 難易度 | 初心者向け |
| 実現すること | Google Chatからの質問に対して、過去の対応事例(スプレッドシート)やGoogle Drive内の指定ファイルからのみ回答を生成します。社内に限定したルールの範囲で適切な回答をすることで、AIによる「知ったかぶり」や「社内に存在しない情報」の回答を防ぎます。 |
| 想定する対象者 | 社内の問い合わせ対応を削減したい方 |
| 利用サービス | Google Chat, Google Drive, Google Sheets |
今回作成するエージェントの代表的なユースケースとしては以下のようなことが考えられると思います。
エージェントの全体図です。
本エージェントは、Google Chatでユーザーから寄せられた問い合わせ(メッセージ)をトリガーに、過去事例(スプレッドシート)やマニュアル(Google Drive)を自動で検索し、AIが回答案を生成する仕組みです。
また、過去事例に回答が無い場合は、Google Drive内で指定したファイルを深掘りすると同時に、質問内容をスプレッドシートへ自動で記録します。
これにより、回答の自動化だけでなく、不足しているナレッジの可視化も同時に行える仕組みとなっています。
AIが「正解」として引用するナレッジのシートです。
シート構成:「日時」「質問」「回答」の3列を作成します。
準備のコツ:運用を開始すればナレッジは蓄積されていきますが、今回は動作検証のため、予め情報システム部門でありそうな「よくある質問と回答」を入力しておきます。
ユーザーからの質問内容や、AIが生成した回答の履歴をリアルタイムで記録する場所です。
シートの構成:「日時」「質問」「AIの回答(想定)」の3列を作成します。
シートを分割した理由としては、正しい回答がまだ存在しない「新しい質問」が過去事例シートに混在するのを防ぐためです。過去事例シートで不足しているナレッジを人が確認し、AIの回答案を元に人が回答を整えてから移すことで、ナレッジの質を安全に高めることができます。
過去事例が見つからなかった場合に参照するマニュアルです。
今回の検証ではサンプルで3ファイル準備します。
Google Workspace Studio にアクセスします。
まず、どのスペースを対象にするかを指定します。
By Conversation Typeを指定し、Conversation Typeは「Spaces & named groups DMs」を選択します。
Ask Geminiで指示と参照先を指定します。
ここでSources Gemini can useを「Specific sources」、Drive filesで今回対象となるスプレッドシートを指定します。
Geminiへの指示は下記です。
役割:あなたは情報システム部に所属する担当者です。
入力データ: [Step1: Message text]
入力データを元に過去事例リストの中から、ユーザーの質問と実質的に同じ解決策が適用できる事例があるか探してください。
合致する事例がある場合:
その解決策を簡潔にまとめ、回答案を作成してください。
回答の最後に「過去事例より引用」と添えてください。
合致する事例が無い、または判断に迷う場合:
必ず「ANSWER_WAS_NOT_FOUND」とだけ出力してください。他の余計な説明は一切不要です。
制約:
嘘をついてはいけません。少しでも不明確なら「ANSWER_WAS_NOT_FOUND」を優先して出力してください
Step2の回答で「ANSWER_WAS_NOT_FOUND」を含まない場合、回答があると判断させます。
※notではなくdoes not containを使った理由としては、AIが余分な回答を生成しても判定可能にするためです。
Step2の回答で「ANSWER_WAS_NOT_FOUND」を含まない場合、回答をChatで返信させます。
Step2の回答で「ANSWER_WAS_NOT_FOUND」を含む場合、それ以降のフローに進むようにします。
Ask Geminiで指示と参照先を指定します。
ここでSources Gemini can useを「Specific sources」、Drive filesで今回対象となるマニュアルを指定します
なお、Geminiの指示では回答がある場合は、マニュアルから回答し、ない場合は見つからないことを回答するよう指示します。
Geminiへの指示は下記です。
役割:あなたは情報システム部に所属する担当者です。
入力データ: [Step1:Message text]
入力データを元にマニュアルの中から、ユーザーの質問と実質的に同じ解決策が適用できる事例があるか探してください。
合致する事例がある場合:
その解決策を簡潔にまとめ、回答案を作成してください。
回答は手順(1,2,3)等を用いて分かりやすく説明してください。
回答の最後に「マニュアルより引用」と添えてください。
合致する事例が無い、または判断に迷う場合:
必ず「過去事例、マニュアルを参照しましたが、該当する回答は見つかりませんでした」と回答してください。
制約:
嘘をついてはいけません。少しでも不明確なら「過去事例、マニュアルを参照しましたが、該当する回答は見つかりませんでした」を優先して出力してください。
また、回答は400文字程度としてください。
Step6の内容をChatで返信させます。
事前準備で作成したスプレッドシートの②を指定します。
Add Rowでは「After last data row」を選択して、常に最終行に追加されるように設定します。
Add data by columnでは「日時」列にStep1 : Post time、「質問」列にStep1:Message Text、「AIの回答(想定)」列にStep6の出力内容が記録されるように項目を割り当てます。
Save Changesをクリックし保存します。Spaceに投稿してテストしたいと思います。
下記質問でテストします。
その後、Google Chatに回答案が届きます。
過去事例の下記から参照されたことが分かりました。
③でアップロードしたマニュアルを元に近しい質問をChatでします。
マニュアルを参照したメッセージとシートに質問内容と回答案が追加されました。
スプレッドシートへも新規事例として追加されました。
過去事例、マニュアルいずれにも存在しない内容で質問をします。
※検証のため、想定外の質問をします
回答がないことのメッセージとシートに質問内容と回答案が追加されました。
スプレッドシートへも新規事例として追加されました。
今回は、Workspace Studioで自分専用の「Driveナレッジを活用した問い合わせ対応アシスタント」を構築しました。
AIに調査や下書きを委ねて、回答やナレッジ蓄積部分は人が最終的な品質を担保する「Human-in-the-Loop」の体制にすることで、対応の迅速化と正確性の両立が可能となり、担当者が本来の業務に集中しやすい環境が整います。
その有効な手段として、本エージェント活用を検討してみてください。