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[Google Cloud Next '25 Las Vegas] すぐに使えるアプリケーション監視:2025年の可観測性を再考する

作成者: Yudai Imai|2025.04.15

Google Cloud Next '25 Las Vegasとは

Google Cloud Next '25は、2025年4月9日から4月11日の3日間、アメリカ・ラスベガスのMandalay Bayにおいて開催されるGoogleのクラウドサービスに関する世界最大級のイベントです。「今回は、これまでで一番多彩なデベロッパー コンテンツを用意します。デベロッパー専用のエクスペリエンスやコンテンツを充実させ、アプリ開発や AI のほか、スケーラブルで安全なデータ駆動型アプリケーションの学習や開発に役立つ重要なトピックを網羅します。」と銘打っており、AIコンテンツで大いに盛り上がった昨年や一昨年にも勝るとも劣らないイベントとなることが期待されます。

私たち日本情報通信株式会社も、Google Cloudに精通した専門家として、技術イノベーションの最新動向を取り入れ、顧客に対するソリューション提供に活かしていくことを目指して参加しています。

このような貴重な機会ですので、現地からいち早くブログで最新情報や熱量を発信してまいります。

本記事で紹介するセッション概要

  • 講演日時:2025年4月11日 11:00 - 11:45  GMT-7
  • セッションタイトル:Out-of-the-box application monitoring: Reimagine observability in 2025
  • 登壇者
    • Mary Koes
      • グーグルクラウドのプロダクトマネージャー
    • Abhay Mujumdar
      • グーグルクラウドのエンジニアリングマネージャー
    • Bradley Wong
      • グーグルクラウドのグループプロダクトマネージャー
  • セッション内容のサマリ
    • 従来のインフラストラクチャ中心のモニタリングでは、アプリケーションの可視化が限定的でした。このセッションでは、アプリケーション中心のアプローチへの移行によるメリットを探り、パフォーマンスのボトルネックをプロアクティブに特定し、リソース使用率を最適化し、コストを削減する方法を学びます。App Hub、分散トレース、ログや指標などのアプリケーション固有のシグナル、サービスレベル目標(SLO)モニタリングといったGoogle Cloudのアウトオブバンド(OOB)アプリケーション中心のオブザーバビリティツールが、クラウドファースト・アプリケーションの最適なパフォーマンスとコスト効率を実現する方法を学びます。

このセッションで期待できること

このセッションでは、Google Cloudの新しい機能である『Out-of-the-box アプリケーションモニタリング』の詳細を知ることができます。特に注目すべきはアプリケーションをインフラ単位ではなく、サービスやワークロード単位というアプリケーション中心の視点で簡単に監視・管理できる新機能の紹介になります。(今回のセッションの内容は[Google Cloud Next '25 Las Vegas] Google Cloud の Day 2 運用の変革: 新機能でも紹介させていただいた部分と一部重複しておりますが、このブログではより詳細なApp Hubの内容を知ることが可能となります。)

また、アプリケーション定義をApp Hubで行い、それをベースに一貫したラベリングが自動化され、ログやメトリクス、アラートまでさまざまな情報を自動的に統合して表示・分析できる機能が実現される様子を理解できます。

具体的には以下のポイントが期待できます。

  • Google Cloudによるアプリケーション中心の新しい監視方法の概要理解
  • App Hub、Application Monitoringなど新機能の詳細な紹介
  • 多数のサービスを持つ複雑なアプリケーション環境の可観測性と管理を容易にする仕組みの理解

セッション内容

本ブログでは、実際に聴講したセッションの中で特に興味深かったポイントをまとめさせていただきます。

なぜ『アプリケーション』を中心に考えるのか?

多くのどの企業でも、さまざまなクラウドサービスやインフラ環境でアプリケーションを管理しています。しかし実務上、利用者が本当にケアしたいのは個々のインフラストラクチャではなく、実際に動いているアプリケーションの状態やユーザー視点での体験です。

セッションではまず、『App』を一つの抽象単位としてプラットフォームに定義し、その単位に沿ってログ・メトリクス・アラートなどを簡単に集約・分析することの重要性が説明されました。

App Hubを用いた『アプリケーション定義』の簡単化

Google Cloudでは、App Hubという機能を使ってアプリケーションの構成要素を設定できます。

App Hubでは以下のように定義されています。

  • サービス(Service) :APIやロードバランサなど、トラフィックを受け取る要素
  • ワークロード(Workload) :具体的に処理を実行する要素(Cloud Run、GKEノードなど)

このサービスとワークロードを組み合わせて『アプリケーション』を定義します。さらに、このアプリケーション単位で環境(ステージング、本番)、重要度、担当者といった属性情報も同時に付与できる仕組みになっています。

自動ラベリングによるメトリクスとログの一元化

アプリケーションが定義されると、Google Cloudはすべての関連テレメトリ(メトリクス、ログ、トレースイベントなど)に対して自動でラベル付けを行います。ユーザーがマニュアルでラベルを管理する必要はなく、アプリケーションが自動で認識され、関連性の高いログ・メトリクスが統合的に表示することが可能になります。

これまでラベリングは管理コストが高かったですが、Google Cloudがこれを自動化することにより劇的に簡素化されるとのことです。

専用のアプリケーションモニタリング機能

今回特に注目したのが「アプリケーションモニタリング」という新機能です。

この機能を使うと以下のようなことが簡単にできるようになると紹介されました。

  • ゴールデンシグナル(トラフィック、エラー率、レイテンシ、利用状況)の自動表示
  • 統合されたアラートおよび可用性(Uptime)チェック表示
  • アプリケーション単位でのログ探索・フィルタリング
  • ベストプラクティスに基づいた標準ダッシュボードをすぐ表示可能
  • 開発者のニーズに合わせてカスタム指標やプロメテウスメトリクスも簡単に追加可能

その他

Gemini Cloud Assistによるトラブルシューティングサポートやコストの可視化や最適化の機能についてもセッションでは触れられていました。

こちらの二つの内容についてはデモを交えての実施となっておりましたので、実際にどのような内容がセッションで行われたかについては、セッションの録画が公開されましたらご確認いただければと思います。基本的には、[Google Cloud Next '25 Las Vegas] Google Cloud の Day 2 運用の変革: 新機能にて紹介した「アプリケーション中心の管理(App-centric Management)」と「Cloud Hubによる統合的な運用体験」の内容について実際のコンソール画面を使ってデモが行われたとお考え下さい。

会場の様子

会場は3日目の最終日ということもあり落ち着いた雰囲気で空席も目立つように感じました。ただし、セッションの参加者はこのテーマが気になって参加しているということの裏返しにもなっていて、セッションが終わった後には登壇者の周りに多くの参加者が集まっていました。App HubがGoogle Cloudの世界観の中でどれくらいの存在感を出してくれるかに多くの期待を寄せているため、他の参加者もそのような考えのもと前のめりでセッションを聞いているものと考えていました。

まとめ・感想

今回のセッションを通じ、従来の個々のインフラに着目した管理・運用方法から、利用者が本当に気になる「アプリケーションの中心」の視点への転換を強く印象づけられました。

Google Cloudが提供するApp Hubやアプリケーションモニタリング機能により、複数プロジェクト、多数サービスで構築された複雑な環境での運用課題を劇的に改善できる可能性があります。

また、Gemini Cloud AssistをはじめAIを駆使したトラブルシューティングデモも非常に魅力的で、将来的にはこのような高度なAI分析が運用業務の中で当たり前に利用されるようになるだろうと感じました。

私個人としては、ラベル管理の自動化やアプリ単位でのコスト管理機能、そして高度なAI支援機能に特に惹かれました。日本企業においても、このようなサービスを活用し、運用に伴うエンジニアの負荷を下げられるように働きかけていきたいと思いました。

このブログを通じて、日本でも「インフラからアプリケーションへ」という視点の転換が進むきっかけになればと願っています。

参考

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